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プロローグ「街外れのスタンド」パート1
はるか彼方にあるとされている広大な荒野が続く世界、オーレ地方と呼ばれる場所である。厳しい環境のためか生息するポケモンは少ないがトレーナーはいた。そして彼等はポケモンを使ってバトルをしてある者は戦いのために、またある者はポケモンと絆を深めるために・・・。
ここ、荒野の一角にある基地、そこで爆発音が響いた。エーフィとブラッキーを連れた青年は研究所にあった不思議なマシーンを手にすると、ジェットエンジン式のマシンに乗ってそこを脱出。基地のボスらしき人物が激昂した頃には全てが終わっていたのだった・・・。
<街外れのスタンド>
荒野の砂漠、ここに一つだけあるオーレ地方の人々に憩いの場がある。スクラップになった蒸気機関車で出来た食堂、そのスタンドにマシンから一人の青年が降りた。
「ふう、上手くいった・・・」
その青年、ヌーンは一息吐くと肩に装着させたマシーンを見て側にいたエーフィとブラッキーに声をかけた。
「ありがとう、お陰で成功したよ。これで不幸なポケモン達を助けることが・・・」
ヌーンが言っていると、エーフィがある物に目をやった。ヌーンが見るとそこには一回り大きな走行車があり、その上に何かが置かれていた。スタンドからサングラスをかけた二人組の男が満足そうに出て来た。
「ふう、やったなヘボイ、これであの方に褒められるぜ」
「ああ、お陰にいい獲物を捕まえたせいか今日の飯も上手いぜ」
その二人、トロイとヘボイは走行車に乗ろうとした。その時、置かれていた大きな袋が暴れだして落ちてしまった。
「おい、落っこちたぞ!」
二人組が運ぼうとすると、
「もごもがーっ、出してよ、人さらいーっ!」
袋の中から少女の声が聞こえて来た。トロイとヘボイは何とか抑えて運ぼうとする。
「これ、暴れるなって!うん?」
「く!」
するとそこにいたヌーンと顔を合わせてしまう。
「おいお前、見たな!」
「見たなら、どうするのかな?」
「決まってら、勝負で黙らせてやるぜ!」
トロイとヘボイはボールを投げてゴニョニョとイトマルを繰り出して来た。
「行くよ・・・」
ヌーンは近くにいたエーフィとブラッキーを出した。
「ゴニョニョ、ちょうおんぱだ!」
「イトマル、どくばりだ!」
トロイとヘボイの指示でイトマルとゴニョニョはどくばりとちょうおんぱを飛ばして来た。
「エーフィ、リフレクター!」
ヌーンの指示でエーフィはリフレクターを張ってその攻撃を防いだ。そこへブラッキーがあくのはどうを放ってゴニョニョとイトマルを一掃した。
「うわわ、こいつ強いぞ・・・!」
「さあて、まだやるかな?」
「ひ、ひえええ、逃げろーーーっ!」
鋭い視線にある強い気迫にトロイとヘボイはその声のする袋を置いて走行車に乗り逃げ去っていった。
「さあて、君、聞こえる?」
「あ、あの、助けてくれたのですか・・・?」
「うん・・・」
「あ、ありがとうございます!あの、ここから出してくれますか・・・?」
ヌーンは受け入れてその袋の紐をほどいた。
「きゃん!」
中から一人の少女が仰向けに倒れて出て来た。彼女を見てヌーンは頬を赤くする。
(何て、可愛い子なんだ・・・)
その少女はとても愛らしかった。オレンジのツインテールに白い肌、青いガウンに胸部までの紫のへそ出しのシャツ、そのため小さく可愛いへそが露出して純白のミニスカートにピンクのブーツを履いた少女。
(この人が、私を?見た目は怖そうだけど・・・、けどいい人よ。だって私を助けてくれたんだから、凄く素敵な人に違いないわ・・・)
少女も彼、ヌーンに頬を赤くしてしまった。
「大丈夫かな?」
「あ、はい・・・」
差し出された手を少女は握って起き上がった。
「あの、助けてくれてありがとうございます!ここは・・・?」
少女は廻りを見て、見慣れない光景に戸惑っていた。
「ここは街外れのスタンド、君はあいつらに捕まっていたんだ」
「そうだったわね、本当にありがとう。あの、お名前は・・・?」
「僕は、ヌーン」
ヌーンはここで少女に自分の名前を名乗った。
「凄く、素敵でかっこいい名前・・・、私はムンって言います。あの、ヌーンさん・・・」
「何かな?」
その少女、ムンは恥ずかしそうにこう言った。
「お願いがあるの、私を連れてってくれませんか!あいつらにまた襲われると思うと怖くて・・・」
少女の瞳は不安に満ちて潤んでいた。小動物のようなか弱さを感じさせる彼女にヌーンも放っておけない気持ちになる。
「解った、僕に任せて、何があっても、僕が君を守るよ」
「あ、ありがとうございます!私、足でまといにならないよう頑張りますね!」
受け入れてもらえてムンは眩しい笑顔で感謝した。
「あの、ヌーンさん・・・」
「うん、どうしたの?」
「最初に見た時、恐そうな顔をしてたからどんな人かと思ってたけど・・・」
「よく言われるよ、この顔のことは・・・目つきが悪いとか色々ね」
「でも、貴方はそんなに悪い人には見えない、だって私をあの悪どい人達から助けてくれた。何だか私の王子様みたいだなって・・・」
照れて本音を伝える彼女にヌーンは愛情の念が湧いてしまう。
「ありがとう、君とは仲良くなれそうだね・・・」
「そうだね、うふふ・・・」
嬉しそうに笑う二人、するとスタンドから拍手の音が聞こえて来た。
「いいねえ、あんた。最高のバトルだったよ」
スタンドの入口でピンクの髪に長袖長ズボンの青年が拍手をしてヌーンのことを褒めていた。
「可愛い女の子を助けるなんて中々枠のいい奴じゃないか。気に入ったぜ、おっと自己紹介がまだだったな。俺はウィリー、このオーレ地方を相棒のマッスグマとジグザグマと共に駆けるさすらいのライダーさ」
「その貴方が僕に何のようで・・・」
「決まってるだろう、あんたもトレーナー、俺もトレーナー、となれば答えは決まっているぜ!」
ウィリーはヌーンの前に出てボールを構えた。
「さあ、勝負と行こうぜ、あんたがどんなトレーナーでどんな勝負をするのか、とことんやり合おうぜ、エンジン全開、ゴーっ!」
ウィリーはボールを投げるとマッスグマとジグザグマを繰り出して来た。
「ヌーンさん、大丈夫?」
「心配ないよ、君にカッコ悪い所は見せられないからね。必ず勝ってみせるよ」
ヌーンの言葉にムンはきっとやってくれるかもしれないと思った。ピンクのブーツを弾ませて応援する。
「頑張ってヌーンさん、私、目一杯応援するよ!」
「ああ、行くよ!」
エーフィとブラッキーを前に出してバトルが始まった・・・。
続く・・・。