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THE SECOND TAKE ーAIでも英雄にー
作者: 多寡ユウ  (総ページ数: 20ページ)
関連タグ: 異世界、リープ、AI 
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10~

*13*

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ガギン!ガギン!という音を立てながら、リュウと、ジェイソンが戦っている。しかし、リュウにはジェイソンのチェーンソーは分が悪いらしく、リュウの大手裏剣はみるみるうちに傷ついていった。これを見るのも二回目だ。


「ふぅーう。そのチェーンソー、いつ見てもぶっ壊れ性能だな」

「YEAHHH,am,お前知っているぞ。何か月か前に、俺からrun awayしたガキone of them.素敵な顔だち、殺す」

「うるせぇえ、黙って駆逐されろ、ジェイソン」

「それは、impossible。誰もこの森から出さない。’ll be death.ABSOLUTELY・・・・・・・・uう、gaggaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?!?!?!?」

「セイントボール」

リュウが話している間、後方にいたサユリがジェイソンに向かって聖魔法を放たれた。淡い光の光球はゆっくりとジェイソンに近づき、彼の肌に触れると、聖属性の小爆発を生み、ジェイソンにダメージを与えた。

「そこおお、ブツブツ話してないで、ちゃんとお姉さんもいるんだよぉ」

サユリが皮肉っぽく、さも寂しそうな顔をして言う。
前回のレジスタンスとジェイソンとの戦いでは、ジェイソンの攻撃を前に、離散した。そして、大樹の枝に一番被害を受けたのは、魔術師隊、サユリさんの隊だった。サユリの隊は、他のどんな隊よりも大きな隊であったが、その損害により半分以下まで隊員の数を減らした。この戦いで、最も責任を果たしたいのは、彼女なのだろう。

「うsが、saint 聖属性、I hate it, 遠くから打ちやがっててめえ。でも君のこと、ジェイソン覚えてるよぉ、last time 大樹の根っこがたくさん食べた、job.君みたいな人is was so many lol.かわいそうに,かわいそうにpoor youニヒ」

「・・・・・はーい、テメェ。ぶっころしまーす。神聖気炎砲弾。」


サユリさんは先ほどの寂しそうな顔から、怒りに満ちた表情に一変する。長い詠唱寺間を伴う大魔法を唱えるために、サユリさんはジェイソンに向けて両手のひらを向けて、詠唱を開始する。

「二ひ、ニヒにヒヒヒヒヒヒいいいいい!」

しかし、その隙を逃さんとばかりに、ジェイソンがサユリさんの前方にいるリュウを大ジャンプで飛び越えて、チェーンソーで切りかかった。4mはあろう大男とは思えない身のこなしに、リュウは反応が遅れる。


「しまった!サユリ!」

リュウの頭上を飛び越え、ジェイソンがサユリの目の前に向かおうとしている。アイさんは、空中に放り投げられた魔術師たちの援護にあたっている。ゴウさんも、地中から伸びてきた大樹の根っこから他の隊員を守っている最中で、サユリさんのところまで行くのには間に合いそうではなかった。

リュウは、サユリのもとに、その自慢の神速を活かして、駆け寄ろうとする。
しかし、その瞬間に、地中から伸びてきた大樹に足を絡められ、身動きが取れなくなる。


「っ、くそっ!」


リュウが叫んだ時にはもうすでにジェイソンはサユリさんの目の前にたち、チェーンソーを右から左に向かって一閃した。全員が万事休すと思われた次の瞬間、

大楯をもったゴウが、サユリさんの前に立ちはだかった。

よし!作戦成功だ!未来の最悪のケースを招く一番の要因は、僕がサユリさんを守りに入ること。だとすれば、最も守備力が高い人間が、サユリさんの詠唱を守れば、勝機はあるとアイさんと考えたのだ。

盾とチェーンソーが互いにガキーーーン!という音を立てて、ぶつかり合う。その耳に残る音とともに、そのチェーンソーが弾かれ、ジェイソンでさえも後ろに後退した。
よし、前回起きたことが変わった。あらかじめゴウを、奇襲されるであろう場所に配置して正解だ。サユリさんが襲われ、僕が庇う未来を変えられた。


「大丈夫だ。サユリ。詠唱を続けろ」


大楯を持ったゴウが、ジェイソンのチェーンソーに向かってシールドを構えていた。先ほどジェイソンが後ろに後退したのは、ゴウさんによるカウンター攻撃のようだ。ゴウさんも2はあろうかという巨漢なのにも関わらず、移動速度が尋常じゃなく速い。


「待たせたな。ジェイソン・ボーヒーズ。お前のご自慢のチェーンソーでは、私の盾は砕けないぞ」


「ニヒ!ムサイおっさん。Appear.一旦態勢を整えよう。Alright,」


ジェイソンは、ゴウの出現に一度森の中へ退避。ひとまず、ジェイソンの奇襲作戦は切り抜けたとみていいだろう状況だった。
よし、前回が役に立った。


「3人とも無事か!」


空中に放り投げられ、落下した魔術師隊員たちの救助を行っていたアイさんが、3人の隊長たちと合流した。

「ふー、ひとまずは、無事っすね。それよりも、ジェイソンはまた森の中に入りやがったんで、また奇襲しかけてきますよアイツ」

リュウさんが警戒心を促すと、アイさんが周りに号令をかけた。

「うむ、リュウの言うとおりだ。ここからは不確定なことが発生する!気を緩めるな!」


そう。ここからなんだ。ここからは僕が体験していないこと。ここまでのことを作戦にして、まとめて、全員に共有することができたが、このあとジェイソンと根っこが何をするかは皆目見当がつかない。
メキメキと暗闇から大樹の根っこの蠢く音が聞こえてくる。
この音のせいで、ジェイソンの居場所はわからなくなってしまう。


と僕らが困惑の表情を浮かべていると、チェーンソーの音がひときわ大きくなった。
(どこだ。どこにいるんだ)
僕らがジェイソンの居場所を探していると、隊員の一人が頭上を見上げながら叫ぶ。
アイさんの透明化スキルが使えたら、どんなに楽だろうと思うが、あのスキルは詠唱時間が極端に長く、あんなに長く詠唱していれば、枝やジェイソンの攻撃をもらうリスクが高まるため、使えない。
全員が目視で音の根源を探していると、

「ま、真上だ!」

「「「「!!!!!!!」」」

その声につられて、全員で上を見る。

「バ・レ・タ💛」

その時にはすでにジェイソンはものすごい勢いで、レジスタンスに向かって落下してくる途中だった。どうやら大樹の幹を登って行って、そこから落下し、もう一度奇襲を仕掛けようとしていたのだろう。地上まで残り3秒もない。そこに、


「任せろ」


ついにアイさんがジェイソンに向かって真上にとびかかった。
アイさんは自慢の二つの黒刀を構えながら、高く飛翔し、技名を叫ぶ。


「睡蓮華」


ケルベロスの三つ首をすべて同時に切断した大技で、ジェイソンに向かった。

「ニヒニヒ!」

対するジェイソンも右手にチェーンソー、左手に大ナタを構え、
両者の武器が轟音を立てながらぶつかり合った。
がギギギ!という音を立てて、拮抗しているようにもみえるが、重力分の力が加わっているジェイソンのほうがやや優勢のようで、アイさんは苦しい表情を浮かべながら、鍔迫り合いをしている。

「ニヒニヒィイ!!」

しかし、ジェイソンが力を込めて、大鉈をもう一度アイさんの刀にたたきつけると、その重量に耐えきれなくなったアイさんが真下に向かって一直線に落下してくる。

「っ、かはっ!」

アイさんは地面に垂直に落下すると、その落下ダメージからか、吐血し、地面で3回程度バウンドをした。同時に、彼女が持っていた日本の黒刀も吹き飛ばされ、ズカン!ズカン!という音を立てながら、地面に突き刺さった。

「「「アイさん!」」」


僕や隊員たちが、武器のないアイさんの元に近寄ろうとする。今アイさんがジェイソンにやられたら、アイさんを守るものがない。だが、

「これしきのこと、大丈夫だ!全員ジェイソンが落下してくるぞ!」

(そうだ、ジェイソン!)
ジェイソンは、アイさんの言った通り、先ほどの重力を活かして着地。周りに爆風を生み出しながら、ジェイソンは満面の笑みを浮かべる。

「うわ!く、くるな!」

しかし、アイさんの下に駆け寄ろうとした一人の男性の魔術師の隊員が、たまたまジェイソンの目の前に立ってしまう。
(だめだ。あそこじゃもし間に合っても、攻撃をいなしきれない!)
せっかくローグ隊として、特訓したのに、ローグ隊は守る力も持っていない。

「first of allまずはお前から、いただきます💛」

そういうと、ジェイソンは大鉈とチェーンソーを大きく振りかぶり、その男性魔術師隊員に向かって、大鉈を振りかぶる。
万事休すかと思われたその時。

「誰も、死なせない!」

先ほど大きくバウンドしてダメージを受けたアイさんが、その一人の隊員の前に立ちはだかり、
隊員を庇うようにして、大鉈と、チェーンソーをもろに受けた。

「「「!!!!!!」」」


全員がその場で立ち尽くす。アイさんが守った魔術師の隊員もその場で起きたことを理解できていないようだった。アイさんの両腕は、きれいに避け、両腕が、ボト、ボトと地面に落下する。


「アイさん!!!!!!!!」


僕がアイさんに向かって呼びかけると、アイさんはうっすらとこちらを向き、口パクで何かを伝えようとしていた。


「感動の別れって、breakしたくなる病気なの、私💛」


しかし、アイさんの口パクが終わるよりも前に、ジェイソンがアイさんの背中に向かってチェーンソーと大鉈を突き立て、アイさんが自分の血液と肉で真っ赤に染めあがった。
アイさんはその場でうつぶせに倒れ、僕に何も伝えることができないまま、
HPがゼロになった。
アイさんの体はそのままで、うつろな目をしながら、その場でピクリとも動かない。


「ああああああああああああ。あああああああああああああ」


(アイさん。アイさん)
アイさんが死んだ?そんな馬鹿な。あの人は強いんだ。僕よりもずっと強くて、賢くて、優しくて、仲間のピンチに駆けつける、そんな人なんだ。なのに、なぜ、なんでアイさんがしななくちゃいけないんだ。

「ああああああああああああああ」

声にならない声をあげて、アイさんのことを見る。しかしアイさんは動く様子もなく、目を開けたまま絶命していた。アイさんの血の海がその場に流れ、先ほどの背中の攻撃が致命傷だったことを物語っていた。

アイさん、なんで。アイさん。

僕がただ、アイさんの死を受け止めきれず、茫然としていると、リュウ隊長が僕に向かって怒鳴り声をあげた。

「おい!目覚ませ!馬鹿!」

僕が茫然としていると、気づけば僕の目の前には先ほどアイさんを殺したジェイソンが立っていた。

「あらあら、悲しいの?still sad」

「・・・・・・・あ・・・・」

「いいよん。僕がthat is me楽にしてあげるからね💛heaven」


僕には武器を構えることができなかった。手元にある中型の手裏剣は、がたがたと震えていた。いや、手裏剣が震えているのではない。僕が震えているのだ。
勝てない。そう自分でも思わされる。絶対にコイツ、ジェイソンには勝てない。そんな感覚に陥ってしまった。
(無理だ。僕じゃコイツには勝てない)
アイさんだって、負けた。死んでしまった。僕じゃコイツを倒せない。アイさんも死んでしまった。僕が戦う意味がない。やっぱり、僕には何もできないんだ。前回からこうやって時間を巻き戻して、すべてをリセットしても、僕はどうせ勝てないんだ。ずっとタクムやアモン、コータに入れられていた鳥かごの中にいた方がマシだったんだ。こんな役立たず、レジスタンスにいなければよかったんだ。

「ああああああ、もうおまえ、ダメっぽいいdesu.つまんない、殺―そ」

そういって、ジェイソンがチェーンソーと、大鉈を僕に向かって振り下ろした。ああ、また僕は死ぬんだ。また、あの画面になるんだろうか。また、あの画面に戻ったら、どうすればいいんだろうか。
そんなことを考えながら、僕は死にゆく運命を悟っていた。
いやだ。嫌だ。嫌だ。とっさにそう思った。
死にたくない。もう、あの首が撮れるくらいの怖い思いはまっぴらごめんだ。
しかし、僕の想いには反して、振り下ろされる大鉈とチェーンソーを僕は止めることができない。
もう死ぬしかないのか。僕は、ここで。
また、やり直しになるのか。でも、またやり直しても、アイさんを殺す運命は変わらないんじゃないのか。また、一か月訓練して特訓しても、アイさんを救うことなんて僕にはできないんじゃないのか。

もう、何をしたって無駄なんじゃないのか。


「しぃーーーーーーーーーーーーーーーね!」

ジェイソンが僕の首に両方の武器を突き立てたその時、

「「「ガギン!!!!!!!!!」」」

三つの武器が僕に迫りくる刃から僕を守った。

「ユウキ!しっかりしろ!「ユウキ君、目を覚ませ!「起きて!ユウキ君!」」」

隊長の大手裏剣、大楯、ロッドが、僕に迫るジェイソンから僕を守っていたのだった。

「ユウキ!こんなところでしょげてんじゃねえ!!お前、仇とれよ!アイさんの分も、必死にコイツ倒して、14層に行くぞ!」

「そうだ!ユウキ君!負けるな!膝をつくな!君はまだ戦える!俺たちと同じように!」

「そうよ!負けないで!私たちがコイツを押さえておくから、ユウキ君は頭を中手裏剣で狙って!!」

後方職のサユリさんまでも前線に立って、僕を守ってくれている。そして、三人の隊長たちが僕を励ましている。ほかの隊員のみんなも、迫りくる大樹の根っこの攻撃を、なんとか抑えてくれている。僕が、僕が今、ジェイソンに攻撃しなきゃ。僕が、僕がやらなきゃ。僕は、僕は、僕は。

「僕は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

怖い。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。勝てっこない。アイさんが負けたのに、いくら隊長がいても勝てないよ。僕は知っているんだ。僕の攻撃や防御が、ジェイソンには歯が立たないことくらい。僕は知っている。だって、二回目なんだ。コイツと戦うのは。みんなも二回目かもしれないけど、なんで僕に戦わせようとするんだ。僕はコイツには勝てない。勝てないんだ。だから、





「うううううううううわあああああああああああああああああああ!!!」

逃げるという選択をとった。一目散に、森の奥めがけて、駆け出した。

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