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THE SECOND TAKE ーAIでも英雄にー
作者: 多寡ユウ  (総ページ数: 20ページ)
関連タグ: 異世界、リープ、AI 
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10~

*12*


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一か月間

僕は、ゴウさんの騎士としての盾戦士ではなく、
リュウさんに、ローグ職の訓練を受けていた。

中型の手裏剣を扱う練習がメインだった。

リュウさんのモテエピソードを聞きながら、毎晩なにかしらの色恋沙汰の話をされ、
それを苦笑いで聞くという日々が続いた。

アイさんとの作戦会議の中で、ローグ隊の方が移動速度や攻撃力も高く、根っこの除去やジェイソンへの急襲などにも即座に対応できる。

というわけで、僕は一か月間の間、リュウさんにみっちりしごかれて、前回と同様にレベル50に到達した。

というか、そもそも、13層でこんなにも強大な敵と戦って、隊長クラスや、アイさんじゃなければ鍔迫り合いすらもできないとなると、99層まで行くのは可能なのかいささか不安になって来る。

でも、アイさんを守るという目的がある以上、彼女が進む道の火の粉は僕が払いたい。


もう同じ過ちは犯さない、二度と。
アイさんを助けて、13層を突破してやる。

そうして、一か月の時が怒涛の如く過ぎ、
そんなこんなで、レベル50になったというこのタイミング。
ついにアイさんが、99層迷宮の13層の攻略を明日行うというアナウンスを告げた。

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13層攻略の前夜、僕は本拠地近くのレストランで、四人掛けの机で一人食事をしていた。次の日に迫る決戦を前にして、どうにも気持ちが落ち着かなかった。これまでの特訓の成果は十分だったろうか、ちゃんと明日の攻略ではアイさんの役に立つことができるのかとナイーブになっていたからだ。

「不安だ・・・・」

今度こそ、アイさんを守ることできるのか。アイさんの役に立つことができるのか。
そんな不安が頭からずっと離れないでいた。過去にも同じような思考をした気がする。


「僕は、アイさんを守る、そのためのローグだ・・・」


そんなフルオブナイーブな状況な中、茶色の革装備を装備した1m80cmのイケメンが、僕の前方からやってきた。そのイケメン茶髪の見知った人は、軽装奈な茶色の革装備に身を包み、背中には大手裏剣を持っていた。

リュウだ。


「どうしたんー、ユウキ?こんなところで、みんな明日に備えて武器の手入れしているンゴよ〜」


軽いデジャブを感じながら、リュウは僕が座っている四人掛けのテーブルの目の前の席に座ると、店員を呼び、僕と同じくサンドウィッチを頼む。
戦闘前日や前夜はあまり酒は飲まず、こうしてサンドウィッチなどの軽食で済ませて、おなかの調子を良くしておくことが望ましいと、そういえばリュウの特訓で教わった。


「そうですよね・・・スミマセン。なんか。一人になりたくて」

「・・・不安、かぁ?お前さん、開口一番、アイの服を脱がせたやつなのに、」

「いやいや、あれは事故ですって!」

「本当かねぇ?まあ、俺っち不安ってのはわかるだけどね」

「えっ」

「いや、今のユウキと同じような顔を、よく戦の前にしていた人間が、昔にいたもんでさ。ソイツも内心の不安が、顔に出やすいタイプの人間だったんだよ。こまったやろーだよな」

「そんな人・・、リュウさんの知り合いでもいたんですね」

「ははは。そうだな。そいつは今レジスタンスで、隊をまとめる隊長をやっているよ」

「え・・・、それって誰なんですか?」

「ふえー、それを聞くぅ?」

「あ、スミマセン。失礼でしたよね」

「いやいいよいいよ。昔は隠してたけど、今はもう隠していないしね。だから言うけども、その隊長ってのは、俺っちのことよん」

(えっ・・・)

「俺は、前に盗人やったんよ」

「確かに、ぽいっですね」

「いや、ぽいとか言うな!(笑)」

リュウさんが盗人?この世界では盗人は罪人扱いだ。小規模の罪を働くのは、大貧困家庭出身の子たちが多くそういった犯罪を繰り返す。凶悪殺人等は、家庭環境などから帝都に住んでいる人間の方が起こしやすいが、窃盗などの警備な犯罪をするのは、超絶貧困家庭に住んでいたという証拠にさえなることもある。

「俺んちは、裕福じゃなくてな。毎日金もなくて、だべるものさえなかったんだ。そんなときにさ、こう、盗んじまいたくなるわけよ。親父とかお袋とかはもうとっくに闇金に殺されちまって、俺に残されてたのは妹だけだった。だから、その妹のために、ずーっと盗みをしていたってわけ」

「ご両親はもう、この世にはいないんですか」

「そーいうことになるねー。いやーまったく人騒がせな親だよなあまったく。自分の子供おいて、一銭も残さずあっちに行っちゃうなんてさぁ。薄情だとは思わねーか?」

「いや、それは・・」

「わりわり、答えにくかったな。今の質問。やめだやめやめ。でもまあ俺はだから、盗人出身なんですねぇ。で、俺がたまたま盗人としても足が速くて、俺の足の速さを買ってくれたのが、アイってわけよ」

「足の速さで、隊長まで上り詰めたんですね・・」

「どへ!そんなわけないじゃん!少年、意外と馬鹿だなぁ!俺はコツコツ出たくもない戦場に出て、経験値を摘んだわけよ。それで今の隊長の地位になれてんの。足の速さで隊長になれたら、おまえどっかのランナーつれてくればいいっしょ」

「はははは、そうですよね(さっきまで神妙な面持ちで話していたのに、急に変な話題にするから、調子狂うなあ)」

へへへといたずらにリュウが笑っていると、注文したサンドイッチが届く。そのサンドイッチをリュウは頬張りながら、話の続きを始めた。

「だからさ、俺っちは、基本的に戦闘は好きじゃないのよ。血を見るのも嫌だしさ。盗人の方が100倍いいってわけ。でも、俺っちには妹がいる。あいつに腹いっぱい飯を食べさせてやりたい。そして、俺と妹をどん底から救い上げてくれたアイに、恩返しがしたい。それが、俺が今ローグ隊の隊長をやっている理由ってわけ」

「・・・・ゴウさんも、リュウさんも、それぞれの想いがあるんですね」

「え、お前。ゴウの隊長になった理由も知ってんの?」

「そうですね。知ってます」

「あいつ、俺には話したことねーのに。ほんっとにソリがあわねーんだよなあ。あいつの特訓受けなくて正解だぜ、ユウキ!」

(もう、一度受けたんですけどね・・・)
でも、リュウさんにもリュウさんの想いがあって、この戦いに臨んでいる。愛する妹さんのため、アイさんのため、持ちたくもない武器を持って、リュウは闘っているんだ。

リュウさんのためにも明日、頑張らなきゃ。

絶対に13層を攻略しよう。そう心に誓ったのだった。

そして、夜は更け、日はのぼり、僕にとっては二度目の、13層の攻略の当日の朝がやってきた。

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時は流れ、僕たちは前回と同じように、13層の森が開けている前回休んだ休憩地点にいた。


僕は途中の大樹の根っこを切ることに専念し、自分ができることを全うしていた。
ローグとして、中型の手裏剣を持っているからこそ、根っこの処理の役に立つことができた。

今回の作戦では、前回攻略ともし同じというならば、どこからジェイソンが顔を出してくるか、把握している。そのジェイソン出現予測位置をもとにして、全体の編成を組んだ。この作戦に、狂いはない。
僕が中型の手裏剣を構えて、戦闘態勢に入っていると、地中から見知った声が聞こえてきた。
よし、前回通りだ。


「まーしった、dayo💛」


ジェイソンが真下からまるで巨大モグラのように出現した。

しかし、今回違うことは、だれもその餌食にならなかったことだった。前回は、運悪くジェイソンの真下にいた魔術師隊が10名吹っ飛ばされ、空中を舞った。しかし、今回はジェイソンが出現しそうな場所の上に隊員を配置しないことで、各隊員が吹き飛ばされるのを防いだ。

「よし!」

そこから、リュウがローグ特有のものすごい速さで、ジェイソンのチェーンソーに向かって、自慢の大手裏剣で立ち向かった。


「ぐぬぬぬぬぬぬnunununununu」


先制打は成功だ。

ガギガギガぎンッ!!!という爆音を鳴らして、ジェイソンのチェーンソーと、リュウの大手裏剣がぶつかり合う。しかし、チェーンソーの攻撃力の方が勝っているのか、徐々に大手裏剣を切断されていくのが分かる。


「げっ、コイツ!」


とっさに大手裏剣をチェーンソーとの鍔迫り合いをやめ、リュウはジェイソンから離れた。


「メキメキメキメキメキメキメキメキ」

そんなジェイソンが先ほど出てきた地面の穴から、大樹の根っこが数えきれない本数生えてきた。その根っこがレジスタンスの隊員を一人ずつ狙って、地面に引きずり込もうと、ものすごい勢いで隊員に突進してくる。


「シールドアタック!」


それをすかさずゴウが、自慢の盾で防ぎ、なんとか、ジェイソンと大樹の根っこの急襲作戦を回避することに成功した。
ついに、13層最初の戦いの火ぶたが切って落とされた。


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