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*15*
「「「ユウキ君!」」」
隊長たちの声が聞こえる。
でも僕にはそんなの聞こえない。いくら隊長が挑んだって、ジェイソンには勝てない。僕は足手まといになるし、絶対に勝てっこない。だから、逃げるんだ。ジェイソンも、大樹もいないところまで。13層から脱出するんだ。転移ポートで。
「ふっ、はっ、へ・・・・、ふっ、はっ」
僕は必死で森の中めがけて駆け出した。
後ろから、隊長たちの声が聞こえてくる。だけど、僕には聞こえない。
そんなの聞く必要もない。僕は悪くない。僕は何も悪くない。
悪いのは、あんなに強いエネミーに挑ませようとする隊長たちだ。
森の中に入ると、薄暗い道が、ずーっと続いた。後ろから、ガギン!ガギン!という音や、ジェイソンの笑い声が聞こえるが、僕にはなにも聞こえない。
僕は悪くない。だって、僕はアイさんのために戦うといったんだ。でも、アイさんは隊員の一人を守るために死んでしまった。HPがゼロ。あれじゃ助からない。この世界に、蘇生術は存在しない。HPがゼロになったものに、ポーションを使っても意味がない。
そうだ。僕が頑張る必要なんてないんだ。なんで、こんな危険な目に合わなきゃいけないんだ。
前回は首を掻っ切られて死んだ。なんで、また同じような目に合わなきゃいけないんだ。
はやくはやく、転移ポートに戻ろう。戻って、帝都に戻って、自分の家に帰って、静かに過ごそう。99層攻略なんて、するべきじゃなかったんだ。しかもまだ13層。99層全部踏破するなんて、無理に決まっている。
辞めよう。このレジスタンスを。もうアイさんが死ぬところを僕は見たくない。
必死に僕は逃げた。後ろに、大勢の仲間を残して。
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どれくらい逃げただろう。幸いローグ職だったこともあって、逃げ足は尋常じゃなく速かった。急いで転移ポートまで向かえば、20分程度だったはずだったが。一目散に逃げたせいで、転移ポートの場所もあやふやなまま逃げてしまった。
ここは、どこだ。
僕が今どこにいるのかわからない。転移ポートはどっちなんだろう。
そして、レジスタンスのみんなはどうなったんだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・だめだ。そんなこと気にしてたら。
僕は、ただ、薄暗くて湿っぽいこの道をただひたすらに歩いた。途中、大樹の根っこが僕に向かって攻撃をしてくるが、自慢のローグ職の足の速さのおかげで、なんとか毎度のこと逃げることができた。
こうして、逃げてばっかりだ。
タクムを前にした時も。
アイさんが死んでしまった二回目の攻略も。
僕は逃げてばっかりだ。何事からも。僕が本当にしたいことをおろそかにしたまま、逃げ続けている。
(でも、僕にはできっこない。そんなできないことを、させるレジスタンスの人たちが悪いんだ)
こうやって、人はなんか悪いことがあると、他人のせいにしたくなるところも、自分の悪いところだ。
何時間歩いたろう。もう、戦闘は終わっていてもおかしくはない頃だ。
みんなどこだろう。無事かな。生きているかな。
そんなことを思案しながら歩き続けていると、
「?」
僕の目の前に、なにやら大きな扉が現れた。
その扉は、大きな木に取り付けられているようだった。荘厳な作りで、誰かの術式ということではなさそうだ。
「なんだ・・・・これは」
よくよくその大樹に取り付けられた扉に近づいて、調べてみると、扉の上についている立て札に、別の国の言葉でこう書いてあった。
CONGRATULATION. WELLCOME TO FINAL LAYERS.
「おめでとうございます。ようこそ、最後の層へ」
(最後の層・・・・・、最終層ってことか・・・・・・・・・・・・?って、なんのことだ)
ここは99層迷宮のはず。13層の次が最終層って、どういうことなんだ。
13層の次は、14層のはず。そして、そこから15、16,17ときて・・・・、最終的には99層に到達するということじゃないのか。
「どういうことだ・・・・・・・・・」
アイさんの説明では、99層が最終層だったはず。しかし、この扉には最終層へようこそという文言が記されている。
もしやこの扉を使えば、最終層までエレベーター形式で行けるってことなのか。
いや、しかし、アイさんの説明だと今までそんなエレベーターのようなものはなかったと、言っていたはず・・・・。
しかし、そんな考えるいとまもありはせず、一瞬にして、僕の身の毛がよだつ出来事が起きた。
「みーーーーーーーつけた💛I got チュー!」
後ろから、不気味に笑うよく耳にした声が聞こえてきた。
(びくっ!)
僕が恐る恐る、後ろを振り返ると、そこには、白いマスクに、4mはありそうな巨体、そして、右手には大鉈。そして、左手には、
「!!!!!!!」
リュウ、ゴウ、サユリさんの、三人の髪を引っ張りながら、三人の首だけを持っていた。
「・・・・・・・・・・う、うげぇぇぇぇええええええええええええええええ」
僕はその場で嘔吐する。いやそれよりも、
隊長の首をジェイソンが持っている。ということは、三人とも負けた、のか。
「あらぁ。ぼくちゃんには少し対象年齢がオーバーだったかしら💛このでかい図体のやつ、髪の毛が短くて持ちづらい、ワン。だからーーー、いーらない!」
そういって、三人の首のうち、ゴウ隊長の首だけをその場に落とし、自分の足で踏んづける。同時に、グジャ!という音を立てて、ジェイソンの足元が血で黒と赤に染まった。
「‥・・・ガクガク・・・・・・」
「あれぇ、ぼくちゃん?ちびってんのぉ?もーやだなあ。根っこにお前の居場所を教えてもらってこっちにcome hereしたけど、雑魚じゃん。やる気なくすぅ💛」
はあとジェイソンはため息をつく。しかし、当の僕は、何もできず、ただただ目の前の恐怖に対して、ちびることしかできなかった。
「まあいいや。お前、その扉。見ちゃったみたいだし。殺さないとねぇー。」
「な、なななん、なんで。この扉を見ただけでころされるんだ・・・・。ぼぼぼぼぼ、僕はおまえに、なにもして、、ななな、ないだろ!」
「あああああ、ウぜえなあ。Fucking bitch. そのとびらをくぐらせるわけにはいかねーのよ。それが“ゲーム”だからさ」
「!!!」
コイツ今、ゲームって言ったか。確か、アイさんも同じようなことを言ってた。コイツは何を知ってるんだ。
「お、おまえ、この世界は、なんなんだ。おまえは、なんなんだ!」
「なーーーーんで、それ言わなきゃいけないわけぇ?・・・・・・・まあいいか。お前ここで殺すしなああ」
「いいか。よーく死ぬ前に聞いておくんでちゅよ?わかりまちたか?honey?この世界はなあ、“人口的に作られた仮想空間なんだよん”!」
「!」
(アイさんが言ってたことは本当だったんだ。ということは、本当の世界は別にあるということか!)
「でも、なんで、お前が、それを知っているんだ」
「えええええええええええ、なんで、それも言わなきゃいけないのぉおお。あ、だったら、言う代わりに、お前の腕、二本とももらうわ」
「えっ」
僕が気づくよりも早く、ジェイソンは右手の大鉈で僕の両腕を綺麗に切り裂いていた。
「だいでゃえdy0あふえwrfpくぇfれ9pふえrpf8うえr!!!!!!」
声にならない声が、森中に響き渡る。
「はーい。これが逃げたものの、罪ってことやね」
「うあっがgだgだぐがgg8いうがっぎたいいうだいいい」
「うるせえぇーな。まあ両腕切ったから、教えてやるよ。俺氏優しーからな。実は、わたすぃ、ジェイソンは、このゲームに存在するAIなのでーす!きゃぴるーん!」
「!!??!?????あdfへdhdhっぃd」
「ああだめだ。コイツ、もう死にそうだな」
ジェイソンがAI?・・・どういう、いや、それよりも、痛い。全身がいたい。もう、これ以上、コイツにいたぶられたくない。いやだ。怖い。
「じゃあ、お前の両足を切断する代わりに、もう一個教えてあげる💛メイドの土産・ダ・ゾ!💛」
そういって、ジェイソンは僕がかろうじて残した両足までも、大鉈で秒速で切断する。
「だでぇ9位d9うf0和えryフ9るふぁえsry9f89絵wsrdぁぁぁぁぁl!!!!!!!!!!!!」
あまりの痛みに、何も考えられず、僕はただ叫ぶのみだった。感覚を切ってほしい。リンパを切って、この痛みの感覚を切断してほしい。脳と足の感覚を切ってほしい。いや、それ以上に、殺してほしかった。
「あああ、いいねぇ💛いい叫び💛だから、今から死ぬ君にもう一個教えてあげる💛」
「ジェイソンは、大鉈を僕の首に構えて、大きく振りかぶった。
「僕にはぜーったいに勝てない💛システムでそうなってるんだお💛」
バイバイとジェイソンが言って、大鉈が振り下ろされた。
またしても、僕の頭は、胴体と切り離され、絶命した。
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