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THE SECOND TAKE ーAIでも英雄にー
作者: 多寡ユウ  (総ページ数: 20ページ)
関連タグ: 異世界、リープ、AI 
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10~

*2*

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「おせぇよ。お前。ふざけてんの?ポーション10個しかねーじゃねぇか」

そういって、タクムは僕のほほを思いっきり殴ってきた。
転移ポートから転移して、タクムの住む石畳の町の広場に僕とクランメンバーはいた。

薬局のおばさんとお母さんと話をしてたら、2分だけ遅刻した。でも、この怒りようだ。理不尽。このクランのリーダーであるタクムは、僕以外のメンツが遅れても何とも言わない。でも、ぼくだけにはめっぽう厳しい。タクムのクランメンバーは、リーダーであるイケメンだけど性悪なタクム。副リーダーであるアモンとコウタ、そして僕の4人チームだ。なぜ僕がここにいるのかは、想像してほしい。

僕はお父さんみたいに家族を支えられるくらいに強くなりたくて、クエストをやっている同年代のクランに片っ端から応募した。結果的には弱すぎてどこからも、いい返事がもらえず、結果的にこのクランで貢ぐ係をやりながら、経験値のおこぼれをもらっている。


「売り切れで・・」

そんななか僕をいじるメンツの一人、アモンが口を開く。彼は、タラコ唇。

「おいおい。お前おつかいすら、できないの?」

毎回心の中で、このタラコ唇が、って心で幾千回も唱えている。
続いて、コウタ。特徴のない顔。だけど、どこかむかつく。

「いいかい、へたっぴ。明日も狩りに行くから、明日はポーション30個。忘れたらマジでモンスターの中に置いてきぼりの刑だからな」

「気を付ける・・」

「んな、びくびくすんなよ。俺ら“トモダチ”だろ?」

「・・・・・」


実際かれらには逆らえない。
僕はまだ一次職の職業である戦士。
一方で、タクムとアモンとコウタは、戦士などといった一次職の1個上の二次職である、盾戦士だ。
実力差は歴然。逆らえるなんて思っていない。

そして、お母さんやお父さん、そしてこのクランメンバーしか居場所がない僕にとっては、このクランも居場所のひとつなんだ。

このクランを出ても、他のクランで僕を欲しがってくれる人がいるとは限らない。多少このクランがブラックでもやっていくしかない。経験値のおこぼれをもらいながら、いつかお父さんみたいに、99層迷宮にチャレンジして金持ちになって、お父さんとお母さんを楽させたり、可愛い女の子と一緒にいたり、そんな生活をいつかしたい。というかそれ以外に、生きる意味がないんだ。

なんてったってこの世界の“成功”は、自分自らの強さをどれだけ高められるかだから。

だから、このクランで泥水すすって、生きていくしかない。我慢して雀の涙の経験値を吸い取って、いつか大きくなってやる。そして、タクムやアモンや、コウタを見返してやる。

叱られ終わって、ようやく森に向かおうと転移ポートに入るさなか。

「・・・なにが、置いてきぼりの刑だ、バーカ。いつかお前らを置いてきぼりにしてやる・・・」

自分にだけ聞こえる声で、そうつぶやいた。
そんなこといつか言えたらなあって、思いながら。

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「おい、タクム。なんかこの森のモンスター、少し強くないか?」

「そうか?そうはおもわないけど」

「って言ってもさあ、俺もまだレベル30になったばっかで、アモンも31だし。タクムだけだぜ40にレベルいってるの」

「そうだよ。この森の推奨レベル35だし、俺らにはまだ荷が重いって」

僕はまだレベル7なんですけどね。

「大丈夫だって、いざとなったら・・、お前らこっちこい」

「なになに?ふんふんふん、ふんふんふん。ああなるほどね。その手があったか」

「タクムやるぅ。すごいね」

「だろっ。ヒヒ」

どうせ僕をおとりに置いていくとか、よからぬことを企んでいるんだろう。見え透いているんだよ、バーカ。もう少しましなひそひそ話をしろ。バーカ。バーカ。

そんなこんなで、森に入ってから、エネミーを前衛の3人がばったばったと倒していく。
エネミーは、ぼくでは絶対に倒せない、虫だとかイノシシだとか鹿のエネミーばかり。スライムでさえ手を焼く僕には、到底太刀打ちできない。
一方僕は、HPが少なくなったクランメンバーの3人を僕がポーションで回復していく。
そこで得た経験値を微量ながらもらい受けつつ、旅を進めていた。

残りのポーションは全部で5つ。そろそろ旅も終盤で、小ボスが出てくるころ合いだろう。

タクムもHPがゼロになりたくないからか、推奨レベル40スタートの99層迷宮には行きたがらない。あそこのボスは、中ボス、大ボスばかり。一方で、森にでてくるのは小ボスばかりで比較的倒しやすいのが特徴だ。

そうこう話していると、アモンが口を開く。

「あ、あれ、小ボスじゃないかな?」

確かに森の奥の開けた場所になにやら、大きめな影が見える。
タクムが大きな声で剣を上にかざしながら、声高らかに向かっていく。

「よしいくぞ二人とも!」

僕もいるけどね。
ようやく森が開けた。そこにいたのは、あきらかに小ボス。
ではなく。

「gururururururururuhaahahhaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaァぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁあああああああ!!!!!!!!!!」


明らかに中ボスサイズの敵だった。

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