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*9*
運悪くジェイソンの真下にいた魔術師隊が10名吹っ飛ばされ、空中を舞う。そのすきにジェイソンは、両手にもつチェーンソーで、空中の10人を一閃しようとする。
「させるか!」
一瞬の判断で、リュウがローグ特有のものすごい速さで、ジェイソンのチェーンソーに向かって、自慢の大手裏剣で立ち向かった。
ガギガギガぎンッ!!!という爆音を鳴らして、ジェイソンのチェーンソーと、リュウの大手裏剣がぶつかり合う。しかし、チェーンソーの攻撃力の方が勝っているのか、徐々に大手裏剣を切断されていくのが分かる。
「げっ、コイツ!」
とっさに大手裏剣をチェーンソーとの鍔迫り合いをやめ、リュウはジェイソンから離れた。目的である、空中に浮遊している魔術師10人は助けられた。彼らはすでに落下のダメージは受けているが、HPが全損になるほどの致命傷ではなかったらしく、みな立ち上がって
ポーションを飲み、戦闘態勢に入りなおす。
同タイミングで、
「メキメキメキメキメキメキメキメキ」
そんなジェイソンが先ほど出てきた地面の穴から、大樹の根っこが数えきれない本数生えてきた。その根っこがレジスタンスの隊員を一人ずつ狙って、地面に引きずり込もうと、ものすごい勢いで隊員に突進してくる。
「シールドアタック!」
それをすかさずゴウが、自慢の盾で防ぎ、なんとか、ジェイソンと大樹の根っこの急襲作戦を回避することに成功した。
ついに、13層最初の戦いの火ぶたが切って落とされた。
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ガギン!ガギン!という音を立てながら、リュウと、ジェイソンが戦っている。しかし、リュウにはジェイソンのチェーンソーは分が悪いらしく、リュウの大手裏剣はみるみるうちに傷ついていった。
「ふぅーう。そのチェーンソー、いつ見てもぶっ壊れ性能だな」
「YEAHHH,am,お前知っているぞ。何か月か前に、俺からrun awayしたガキone of them.素敵な顔だち、殺す」
「うるせぇえ、黙って駆逐されろ、ジェイソン」
「それは、impossible。誰もこの森から出さない。’ll be death.ABSOLUTELY・・・・・・・・uう、gaggaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?!?!?!?」
「セイントボール」
リュウが話している間、後方にいたサユリがジェイソンに向かって聖魔法を放たれた。淡い光の光球はゆっくりとジェイソンに近づき、彼の肌に触れると、制属性の小爆発を生み、ジェイソンにダメージを与えた。
「そこおお、ブツブツ話してないで、ちゃんとお姉さんもいるんだよぉ」
サユリが皮肉っぽく、さも寂しそうな顔をして言う。
前回のレジスタンスとジェイソンとの戦いでは、ジェイソンの攻撃を前に、離散した。そして、大樹の枝に一番被害を受けたのは、魔術師隊、サユリさんの隊だった。サユリの隊は、他のどんな隊よりも大きな隊であったが、その損害により半分以下まで隊員の数を減らした。この戦いで、最も責任を果たしたいのは、彼女なのだろう。
「うsが、saint 聖属性、I hate it, 遠くから打ちやがっててめえ。でも君のこと、ジェイソン覚えてるよぉ、last time 大樹の根っこがたくさん食べた、job.君みたいな人is was so many lol.かわいそうに,かわいそうにpoor youニヒ」
「・・・・・はーい、テメェ。ぶっころしまーす。神聖気炎砲弾。」
サユリさんは先ほどの寂しそうな顔から、怒りに満ちた表情に一変する。長い詠唱寺間を伴う大魔法を唱えるために、サユリさんはジェイソンに向けて両手のひらを向けて、詠唱を開始する。
「二ひ、ニヒにヒヒヒヒヒヒいいいいい!」
しかし、その隙を逃さんとばかりに、ジェイソンがサユリさんの前方にいるリュウを大ジャンプで飛び越えて、チェーンソーで切りかかった。4mはあろう大男とは思えない身のこなしに、リュウは反応が遅れる。
「しまった!サユリ!」
リュウの頭上を飛び越え、ジェイソンがサユリの目の前に向かおうとしている。アイさんは、空中に放り投げられた魔術師たちの援護にあたっている。ゴウさんも、地中から伸びてきた大樹の根っこから他の隊員を守っている最中で、サユリさんのところまで行くのには間に合いそうではなかった。
リュウは、サユリのもとに、その自慢の神速を活かして、駆け寄ろうとする。
しかし、その瞬間に、地中から伸びてきた大樹に足を絡められ、身動きが取れなくなる。
「っ、くそっ!」
リュウが叫んだ時にはもうすでにジェイソンはサユリさんの目の前にたち、チェーンソーを右から左に向かって一閃した。全員が万事休すと思われた次の瞬間、
僕が盾を使って、ジェイソンの攻撃を受け止めた。
「!!!!」
運よくサユリさんの近くにいたおかげで、盾職で足が遅いといえども、サユリさんの近くにいたからこそ、サユリさんを守れた。しかし、ジェイソンのチェーンソーの力を前に、力負けしそうになる。
「サユリさん・・・!詠唱を続けて下さい!!!」
「ゆ、ユウキ君!」
僕がチェーンソーの攻撃を受け止めている間に、なんとか聖属性の大魔法を!そう思っていた時。
「チェーンソーは、僕チンの本当の武器じゃないんだ」
ジェイソンは両手もちから、左手のみでチェーンソーで切りかかるのに切り替えていた。その代わり、背中に背負う大鉈を右手で引き抜き、僕に向かって振りかぶった。
「ニヒ」
(死ぬ。)
とっさにそう思った。後ろのサユリさんの詠唱はまだ終わらない。しかも、武器の両手もち、2つの武器をいなせるほど、僕の盾スキルは上がっていない。しかし、サユリさんを死なせないためには、この大鉈を僕が受けきるしかない。しかし、受けきる道具は剣だけ。剣の腕をこの1か月では磨けなかった。自分の怠惰を今なら呪いたい。
(死ぬんだ、僕)
サユリさんを助けるためには、この剣で受けるしかない。しかし剣スキルがない僕にとってそれは、受けきれずに、僕が大鉈に切断されることを意味していた。
(ごめんね、アイさん・・・)
と心の中で、死期を悟っていたその時、
アイさんが、文字通り神速の速さで僕の目の前に立ちはだかった。
「死なせない」
その小さな声を聴いた後、僕の目の前には、
アイさんの噴水のような大量の血しぶきが綺麗に舞っていた。
「ア・・・・・イ・・・さ、ん?」
僕は声にならない声をあげていた。アイさんは、ジェイソンの大鉈に背中を向けて、僕を抱きかかえるようにして僕を庇っていた。アイさんの黒色の背中側の鎧は、もろに大鉈を受けた分、粉々に砕けていて、アイさんの背中さえも切り裂いた。
その背中から大鉈で引き裂かれたであろう、血と肉がほとばしって飛ぶ。筋肉の筋が宙を舞い、赤黒い血液が大鉈の軌道をなぞるように流れたのだ。
「あ、ああああああアイさん!!」
アイさんはその場で吐血し、僕を抱きかかえるようにしていた態勢から、僕に寄りかかる態勢に変わる。その苦しそうな息遣いから、先ほどのジェイソンの攻撃が重傷を負わせるものだということが分かった。
「アイさん、アイさん、アイさん・・、アイさん!」
僕はただアイさんを呼ぶことしかできなかった。アイさんを僕は抱きかかえると、僕の両手のひらにべったりと黒っぽい血が付く。内臓まで浸食しているのか、アイさんの背中はもはや筋肉が直にでていた。それでも、アイさんのHPは残り1割残っていて、まだ助かる余地があることを感じさせた。
「アイ!」
サユリさんが、詠唱を一時中断し、その場へ駆けつける。
「アイ!」
リュウも、自分の足に絡まっていた大樹の根っこを切り刻み終わり、僕とアイさんのほうに駆けつけ、
「アイ!」
ゴウも、根っこの攻撃を受けきり、こちらに近づいてくる。
今アイさんを治療すれば、助かるかもしれない。
しかし、ジェイソンがその隙に2つ目の太刀筋を大鉈で繰り出す。ジェイソンは、アイさんと僕もろとも、その大鉈で切り刻もうとしていた。リュウやサユリさん、ゴウの今の間合いではアイさんを助けることはできない。
「!」
アイさんを守らなければ。
まだアイさんに、息はある。あの大鉈を防ぐことができれば、隊長たちがここに来ればなんとかアイさんは助かるはず!
「オオオオオオオオオオオオオ!!シールド、アタッーク!!」
僕の雄たけびと同時に盾を前に突き出す。
「ユウキ君・・・・、やめろ!」
アイさんの声が聞こえた気がするが、今の僕の耳には何も入って来なかった。
大鉈と僕の盾が、ガギン!という音を立ててぶつかり合い、次の瞬間。
「ニヒ(笑)」
盾をジェイソンの大鉈が貫通し、僕の首を掻っ切った。
首を掻っ切られた瞬間は今でも覚えている。先ほどまで目の前で僕に寄りかかっていたアイさんの顔が、一瞬にして見えなくなった。首が吹き飛ばされたのだと気が付いたのは、僕の首が空中を浮遊しているときだった。
僕のHPゲージが6割・・、3割・・・、1割・・とものすごい速さで減っていく。ついには僕のHPはゼロになり、僕の頭も地面に落ちた。
「っっaaゆ・・、sき!やだ。dddやだ!・・・・・」
アイさんの悲痛な顔が僕の目に映った。今にも泣きだしそうな顔をしながら、僕の体を抱く。そして、血まみれになってしまった腕を僕の頭のほうに近づけてくる。しかし、その後ろには満面の笑みを仮面の奥にのぞかせたジェイソンが、アイさんに大鉈を再度振りかぶった。
「・・・・・・・・・!」
やめろ!ということも、アイさんを盾で再び守ることもできないまま、アイさんの首が大鉈で掻っ切られるその瞬間。
意識はなくなり、世界は真っ黒に染まった。
・・・・・・・・・。
(くそ、クソクソクソ!)
守れなかった。アイさんを守り切れなかった。それどころか、アイさんに庇われてしまった。アイさんは・・、死んだのかは、わからない。あのあと、隊長たちが間に合っていて、助かったかもしれない。でも、隊長たちが間に合わなくて、助からなかったかもしれない。)
(くそ、くそ、クソ、弱い弱い。僕は、なんて弱いんだ)
心の中で暗闇に向かって叫んだ。
結局、何も守れなかった。ただのお荷物だった。アイさんを助けるとかほざいておいて、ふたを開けてみれば、僕が助けられていた。アイさんを守る騎士になろうと思って、盾を握ったのに、その盾をいとも簡単に切断された。アイさんを守る人間になりたかったのに、最後にジェイソンに着られるアイさんをただ無意識の中で見ている事しかできなかった。
(くそ、くそ・・・、僕にもっと力があれば・・・、なにかできれば・・・アイさんを・・・・)
そんな後悔にさいなまれながら、絶命した。
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