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壁部屋
作者: ryuka  (総ページ数: 22ページ)
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10~ 20~

*5*

最近、殺人事件が続いている。
一日目は一人やられ、二日目は二人、三日目は三人……そして今日は七日目であり七人が殺されるはずだ。
被害者たちは、年齢も、身分も性別も、住んでいる場所まで、何と言って共通点はない。共通点がなく、怨みによるものでも無さそうであるから、何かと巷では話題となっていた。
6回も事件が続くとだいたいの人々は次は我が身と、七人で居ることを避けた。その一方で、勇ましい若人たちは名誉欲しさや好奇心から、わざと力のある者同士で集まり、7人の集団を作って日が沈むのを待っていた。


やがて日は落ちて、
真っ暗な夜となった。

土我は人影の少なくなった外市を急いでいた。
刻々と闇が深まるにつれて理性のタガが外れてくるのが身に染みて分かる。
全身が痺れるような昂揚感に押されて、呼吸も苦しいくらいだ。

日を追うごとに増えていく人数はそのまま、犯人自身のハンデへと繋がる。いつまで続けていられるのだろうか。いつまで、人々は恐れ続けなければいけないのだろうか。

走り続けること一刻半。やっと目的の地に着いた。



月明りの下、土我は怪しく白銀に輝く鋼の太刀をそっと抜いた。土我自身の身分と技量では到底手に入ることはなく、到底扱えそうにもない美しい太刀だ。


          ◇

それからしばらくすると、太刀を右手に、一人の男が、ある遊郭の裏地にひっそりと立ち尽くしていた。
店の表側は華やかに着飾った若者たちで賑わっているが、一旦店の裏側の世界に踏み込んでしまえばそこは別世界だった。

確かに賑わっていた。少し前までは生きていた人たちで。


思わず土我は鼻を覆った。血の、匂いがあまりにも強すぎる。7人分の死体を目の前にして土我は現れるであろう“何か”を物陰にそっと隠れて、待っていた。
大分、切りつけたようで、狭い裏地は足の踏み場も無いくらいに血で染まっていた。その証拠に、靴越しにも染みてきたらしく、足先に嫌な液体の感触がした。




しばらくして、ソイツは来た。
大きな満月の下、カランコロン、と大下駄の音を楽しげに響かせながら。

長い銀色の髪に、禍々しい深紅の面。
表情は見えない。ただ、面に描かれた歪んだ笑みが土我を嘲り笑っているようだった。

カランコロン、という大下駄の音は、ちょうど土我の隠れている物陰までくると、ぴたりと止まった。……どうやら、鬼相手に物理的な壁は敵わないものらしい。
奇襲を諦めて、次にどうするかを素早く思考していると、面の向こう側からヒトのものとは思えない低く、ガラガラとした声がした。




「……………久しゅうなぁ」



間髪入れず、土我は太刀を右手に弾けるように走り出した。

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