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*6*
バケモノの腹へと目がけて太刀を振るったが、ひらりと右へとかわされた。そのまま勢いに任せて右へと体ごとスライドさせて攻撃するが、それより早く、バケモノは土我の背後に飛び移っていた。
……やばい。
とっさに身を翻して交戦姿勢を保とうとしたが、バケモノの爪が肩に食い込んでいた。仕方がないので奴の手首ごとぶった切ってやったが、腕から離れても手首は自分の肩にがっしりと食い込んだままだ。
ギリギリ、と自分の肩がバケモノの爪に浸食されていく。痛みのあまり、喉の奥から意気地ない声が漏れる。
バケモノは俺の目の前に悠然として立っている。手首から先の無い腕からは、血の一滴も出ていない。
「煮て食おうか……焼いて食おうか……迷う迷う……」バケモノはさも楽しそうに、それでいて子守唄でも歌うように穏やかな口調で土我の周りをぐるぐると歩き出した。
「………っ!」
「この素晴らしい月夜に、お前のような愚者が私の相手をしようなどとは……その蛮勇だけは褒めてやってもいいがな」ギギッと更に手首に力が籠る。「どれ、顔を見せろ小僧。」
バケモノは残っている左の方の手で強引に土我の顎をクイッと持ち上げた。並ではない殺意を放つ土我の両眼を眺めながら、ほぅ、とため息をつく。
瞬間、土我の下腹に鋭い一撃が落ちた。
あまりにも強すぎる一撃は、そのまま土我の意識を一瞬で奪ったようだった。
「呆れたわ。飯にもならん。」
泥水と鮮血の混じる汚れた水たまりへと土我を蹴り上げると、バケモノは醜悪な嗤い声を残してどこかへ消えていってしまった。
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