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沙界集/砂漠の彼女
作者: ryuka ◆wtjNtxaTX2  (総ページ数: 12ページ)
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10~

*10*


「菌糸の教室」





 「なんだよ、これ……」


 今日は朝から大雨だった。ザアザアと、窓を叩き割ってしまいそうな雨音。静かになった朝の教室に、殊更、よく響いている。

 どうしてこんなに静かになったのか、





             ―――――― きのこだ。






 真っ白なきのこが、教室の壁という壁に、びっちりと生えているのだ。
 少し、白に淡い青色がかった色をしている。きのこは、壁だけじゃない、よく見れば床にも机にも椅子にも、さらには黒板消しなんかにもびっちりと、まんべんなく生えている。

 それはまるで、遠い国の、真っ白な河原のようで。
 どこかこの世のものならぬ、不思議な美しさを漂わせていた。 


 「……これ、きのこだよね?」




 ザアザアザア。
 梅雨の雨粒が、窓ガラスを叩きつける。やがてやって来るであろう、懐かしい台風の足音。あの日と同じ、あたたかい雨に。

 ザアザアザア。
 静かになった教室で、雨音だけが響いていた。

 


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 
    □招待状□

 〜菌糸の教室へご招待〜
        

 それでは準備はよろしいですか?
 これから警告を申し上げます。くれぐれもお聴き逃しの無いように。
           

 一度ここに踏み込んだら、
 当然ですが、あなたの靴裏にはきのこの胞子がびっしりと詰まってしまいます。

 勿論、靴裏だけではございません。
 肺の中にも、耳の奥にも、さらには心の底にまで。
 胞子はとても微細なものですから、どうかお気を付けて。




 おや、先程から随分時間が経ってしまいました。
 誠に申し訳ございません、どうやら警告が遅れてしまったようです。
    



 ―――― もう既に、あなたの奥深く、菌糸が喰いこんでしまった後でした。


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