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沙界集/砂漠の彼女
作者: ryuka ◆wtjNtxaTX2  (総ページ数: 12ページ)
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10~

*8*



「昨日の消しゴム」



 「―――― かかる異様の者、人に見ゆべきにあらず」





 遥か記憶の彼方。
 あの時、はじめて人を好きになった。


 初めて彼女に逢った日は、とても風の優しい日で。
 ただただ、やわらかな陽ざしが澄んだ空からふりそそいでいたと思う。


 そんな記憶も、今となっては他人のもののよう。
 幸せだった遠い日々は、思い出すたびに薄れていくばかり。
 いっそのことなら、はじめから出会わなければ良かったのだろう。


 今はただ、何も感じぬ孤独の中で、
 人外と成り果て、血の匂いを求めて彷徨うだけ。







 ……今は昔、忘却の物語。

7 < 8 > 9