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桜と君と雪の匂い 【完結しますた】
作者: 唯柚 ◆0Tihdxj/C6  (総ページ数: 8ページ)
関連タグ:  少女 ロリ 複雑・ファジー 
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*4*

 七月。

「あつーい……」

 僕の隣で四肢を投げ出し、彼女は呟く。暑さのためか、頬が薄く染まっていた。

「まあ、夏だからね」

 空を見上げれば、春のそれより薄くなった水色を、白が浸食していくように雲が広がっている。
 白。世界を漂白させたような、穴が開いたような、暴力的な白。
 同じ白でも、攻撃的でも暴力的ではない冬とは、全く違う。

「……早く雪ふらないかなぁ」

 彼女の呟きに、一瞬、心を読まれたかと思った。しかし、横を見ても彼女は、目を閉じ、僕の存在を認識してるかも怪しい程、ぐったりしている。
 子供なのに、外に慣れていないのかと思ったが、肌の白さを見ると、そんなに外が好きではないのかもしれない。そもそも、子供だから外が好きという考え方も、先入観でしかないのだけれど。
 しかしそれなら、屋外に出る事が好きでもないのに、何故わざわざ、僕とこうして話しているのか疑問だ。
 訊けるほど、親しく思えている訳でもないのだけれど。

「……お兄さんは」

 風の音に紛れて、鼓膜が彼女の声を捉えた。

「お兄さんは、冬好き?」
「……まあ、好き、かな」

 こたつでぬくぬくする事が、最大にして唯一の理由だったけれど。そして、それすらもう出来ないから、正直消去法で決めただけだけれど。
 僕の答えに、彼女は汗ばんだ頬を緩めて

「そっか。いっしょだね」

 と、満足そうに呟いた。
 途轍もなく複雑な心境だったけれど、表に出せる筈も、出すわけも無く

「そうだね。一緒だね」

 と返した。

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