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*4*
七月。
「あつーい……」
僕の隣で四肢を投げ出し、彼女は呟く。暑さのためか、頬が薄く染まっていた。
「まあ、夏だからね」
空を見上げれば、春のそれより薄くなった水色を、白が浸食していくように雲が広がっている。
白。世界を漂白させたような、穴が開いたような、暴力的な白。
同じ白でも、攻撃的でも暴力的ではない冬とは、全く違う。
「……早く雪ふらないかなぁ」
彼女の呟きに、一瞬、心を読まれたかと思った。しかし、横を見ても彼女は、目を閉じ、僕の存在を認識してるかも怪しい程、ぐったりしている。
子供なのに、外に慣れていないのかと思ったが、肌の白さを見ると、そんなに外が好きではないのかもしれない。そもそも、子供だから外が好きという考え方も、先入観でしかないのだけれど。
しかしそれなら、屋外に出る事が好きでもないのに、何故わざわざ、僕とこうして話しているのか疑問だ。
訊けるほど、親しく思えている訳でもないのだけれど。
「……お兄さんは」
風の音に紛れて、鼓膜が彼女の声を捉えた。
「お兄さんは、冬好き?」
「……まあ、好き、かな」
こたつでぬくぬくする事が、最大にして唯一の理由だったけれど。そして、それすらもう出来ないから、正直消去法で決めただけだけれど。
僕の答えに、彼女は汗ばんだ頬を緩めて
「そっか。いっしょだね」
と、満足そうに呟いた。
途轍もなく複雑な心境だったけれど、表に出せる筈も、出すわけも無く
「そうだね。一緒だね」
と返した。
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