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*7*
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次の日。
登校途中ーーーー
私はある言葉を脳内で再生していた。
「明日から、少し休んでいいよ」
という、プロデューサーの言葉だ。
まぁ、私には良く分からない。私は、葵だし。
「おはよう!」
遠くから、可愛らしいクラスメートに挨拶する爽やかな担任の声が聞こえる。赤坂だ。
赤坂は、嫌いな担任一位を取りつづけるぶりっ男担任である。
可愛らしいクラスメートを狙っているとしか、見えない。
「今日は、一限目は、体育だぞー」
赤坂……は、言う。
はぁ、体育か。嫌だな。朝から、嫌続きかよ。
そう思いながら、葵は女子更衣室に行った。
「カタン」
ドアを開けて、中に入る。
そこは、シーンとしていて、誰も居ない。
「ガサガサ」
葵は、着替え終わると、校庭へ走った。
校庭には、すでに皆が集まっていた。
ただ、一人居ないようだが。まぁ、私には関係ないな。
「お前は、ディフェンス、きみはーーーー」
と、赤坂が皆に役を付けていく。
「で……白咲は、ゴールキーパーだ!」
その場がザワザワし始める。
皆は、とても嫌そうだ。
まぁ、仕方ない。私は、運動神経が悪いから。
でも、やはりイラッとしてしまう。
冷たい世間なのは、分かっているのにな。
やっぱり、悲しくなるのは、何故だろう。
ゆっくり考えている暇などはない。
まず、ボールから避けなければ。
当たると、痛いから。
「ピー!」
私の思考を遮るかの様に、試合開始の笛が鳴る。
順調に、試合は進む。
だが、此方にはボールが来ない。
皆、私の方へボールを飛ばさないよう、注意しながら、やっているのだ。
私は、世間に信用されていないのは、確かだ。
それに、母親が自殺した事も……。
だが、避ける事なんて、無いのに。まぁ、今は私から避けているが。
そう考えていた時だ。
試合開始から、15分後。
始めて此方にボールが飛んできた。
私は、守備などしていない。
まぁ、ボールくらいなら、大丈夫だろう。
私は、守備せずに、手で受けようとした。
……!私の視界の右側ギリギリに、走ってくる少年が映る。
(ヤバイ!彼奴に当たる!)
私は、ボールへと飛び出した。
私の胴にボールはあたり、下へ落ちた。
少年は、目を見開き、驚いている。
安心したのもつかの間。
私は、少年の方へダイブしてしまった。
「ドシーン」
大きな音だ。皆、此方を見ている。
「やだ、恥ずかしい」……なんて言えるようなウケ狙いができる女子ではない。そして、女子力も高くない。私は、青い腰近くまでにある髪の砂を払う。
私は、のそっと立ち上がると、少年に小さく頭を下げた。(これが私なりの謝りである。)
そして、立ち上がりまたコートへ戻ろうとした時だ。
「待って」
と、少年は言った。
……謝ったのに。
「何か?」
私は、小さく呟くと、少年の方へ歩いていった。
「来て!」
彼は、短く言葉を切り、私を引っ張って行く。
私……授業中なのに。
此方に向いた少年に、よそ行きの偽善の笑顔を見せる。
「君、名前は?」
彼は、私に問う。
「私は、白咲葵よ」
私は、出切るだけ冷静に応えた。
「良い名前だね!僕は、光!」
彼は、言う。苗字が気になるが、あえて言わないでおこう。
面倒臭いから。
あぁ、なんなのよ。
「はぁ、早引きしたいな……」
私は、そう呟く。理由は、これから撮影があるらしい。私は霞なわけだから、撮影がある。霞と同い年だから、学校はあるし。
すると、彼から驚きの言葉が返って来た。
「賛成〜!一緒にしよ!」
楽しそうに言う。なんだ、こいつは?馬鹿なのか……?
まぁ、いいや。
「うん」
小さく微笑む。すると、彼は私の腕をつかむと、走りだした。
「ちょ!ちょっと!」
私は、彼を止めて、彼が着けていた腕時計を見た。
8:00!撮影の会議が始まるじゃないか!
私は、彼をおいたまま、セットの方へ走った。
「ちょっと、待って……」
彼は追いかけるが、私は気にしない。
とにかく、いかなければ!
私は、霞なんだから。
《END》