完結小説図書館
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*10*
なつやすみ終わった…
明日から学校か…
早かったな。とても早かった。
ハチ公前。昼の渋谷は常にざわついている。
「ショウ」
「なんだ?」
「普通の人たちに俺らは見えてない。どうやって物々交換なんかすればいいんだ?」
「ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ……。参加者に与えられてる能力を使ってなら、クリアできるんだろ。こんなもんただのゲームだ。俺がわざわざ計算するまでもねえ4」
「与えられた能力……? サイキックと……わかった! インプリントを使うんだなきっと」
「インプリント……俺の知らない能力だな」
「そう。あ、ちょうどいい。あの男の人を見てて」
私は目を閉じて集中する。参加者バッジを握り、男の人に意識を持っていく。彼の考えていることが分かる。
(うーん、服買いたいけどゲームもほしいし……うーん……)
服を買え。と私は強くイメージし、刷り込むように男の人の中にインプリント(刷り込み)する。
「よし、服を買おう!」
男の人は明るい表情で、104の方へ向かって行った。
「……訳が分からねえ。72をしたんだ?」
「これがインプリント。この参加者バッジは参加者の見分けと、参加者と死神以外の心を読む力と、非参加者の心に言葉を投げかけるインプリントがあるんだ」
「なるほど。おそらくそれを使って今回はクリアするみてえだ7」
「今日はミッションを達成できそうだな。ミッションをクリアした後は、ショウの好きにしていい」
「44(よし)。ここにはもう用はねえ。スクランブル交差点に行9ぞ」
ハチ公前を過ぎて目的地に向かおうとしたが、またも見えない壁が立ちはだかっている。
「また壁か! 死神どこだオラあ!」
「お、落ち着け! 今度はちゃんと正攻法でやるぞ。死神に目をつけられたらお前だって困る、そうだろ?」
「ちっ……一理あるな、ラジアンのくせに」
死神に話しかける。壁の解除条件は、このエリアのノイズを四体撃破することだそうだ。
さっそくノイズとのバトルモードになる。二つの平行世界から倒す必要があるから私と南師はそれぞれ違う世界へ飛ばされ、両方から攻撃をしないといけない。
ノイズの登場だ。カエルのモンスターだ。
どこからか南師の声が聞こえる。
『光の速さで終わらせてやるぜ!』
私も負けじとサイキックを発動しようとする。実は、よく考えると戦闘は初めてだ。手始めに発火のサイキックを使ってみる。火の模様のあるバッジを手にとり、燃える感覚をイメージする。
マッチのような火が、ボッと燃えて消えた。
「えええええええ!!!」
カエルにはダメージをまったく与えられていない。瞬時に理解した。私は、サイキックの才能がまったく無い。イマジネーションが大事とグラサンが言っていたから、私にはやっぱりそういうものはないんだ。
サイキックで自由に空も飛べちゃうとか期待してたらこれだよ……!って落ち込んでる場合じゃない! カエルがジャンプして、爪をこちらに向けてきた。私はとっさに身を後ろへ退く。避けきれない! そう思った私はダメージを覚悟して、腕で防御をとり、目をつむった。
「ヘクトパスカルがあ!」
南師の声が聞こえたかと思うと、いつのまにか元のUGに私も南師も戻っていた。怖い顔で、南師が私をにらんでいる。
「てめえサイキックの才能ゼロだな!」
「み、見てたの?」
「たまに光の球みてえのが飛んでこなかったか? あれを介しておめーの様子が見えんだ。なんだあのカスは!」
「す、すまない……」
「ったく……」