完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

すばらしきこのせかい アナザーエピソード 完結
作者: しろお  (総ページ数: 29ページ)
関連タグ: 南師 イナズマイレブン 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~

*18*

パートナーを信頼しろ、と彼は言った。私は、ショウを信じきれていなかった。
「たしかに、少年がさっきやったことは悪い。だがな、黒帽子、お前がちゃんと言わなかったのも悪い。で、なんでわざわざこんなのに参加してんだ? わけを聞かせてくれねえか」
 そういえば、それを訊いていなかった。私も知りたい。
「俺は……俺には、佑って名前の弟がいた」
 弟がいたのか。
「病気でな。俺より若いのに、他界したんだ。悪いなラジアン俺は嘘をついていた。俺がこの世界の存在を知ったの……はつい最近のことだ。渋谷に買い物にきたとき佑が……デパートの中で佑の姿を、俺ははっきりと見た。だが、ドアの外にでると消えていた」
「ああ、ステッカーだな」
 羽狛さんに、「ステッカー?」と訪ねる。
「ステッカーが張ってある店には、参加者は実体化できる。ただサイキックは使えない。この狭い空間での娯楽を、との死神界の配慮だ。感謝しろよお? よし、黒帽子、それでどうなったって?」
「そういうことが何度もあったんだ。佑が息を引き取った後、渋谷で佑を見るようになってからおれは、解を求めて計算しつづけた。だがどれもここに至るまでの解ではなかった。来る日も来る日も計算し続けた結果、ついにたどり着いたんだ。この『死神のゲーム』にな。お前の話を聞いたかぎり俺が1人でノイズを倒せるのは、俺が生きているから。俺は逆後列してんだ。RGでも存在してる、つまり生きてる。ノイズを倒すには、2つの平行世界から倒す必要があると言ったな。俺はRGとUGでそれができるんだ。RGではノイズと闘えないから、RGの俺から送られてくるイマジネーションの分も使って、こっちでの力に加算している」
 そんなことが可能なのだろうか。天才数学者ならば、死後の世界にもこれるもの、なのかもしれない。
 羽狛はあごひげを指でなぞりながら、ふーんと相槌を打つだけだ。それだけなのか! やはり案外難しいことではないのかもしれない。
「常識はずれだなー」と羽狛さんは言う。
「常識なんてゴミだ! クラッシュ! 俺は佑を生き返らせてやりたい。だからここにいる! ここに俺は、佑を連れ戻しにきたんだ」
「なるほどねえ。でもよ、もしその佑ってやつがこの世界に参加したとして、今も参加してるとは限らないぜ? 死神のゲームは、クリアできなきゃ終わりだ。そう何回も参加できるもんじゃない。もう死んでるかもな」 
 それを聞いたとき、南師の表情は、信じがたいが悲しみに満ちていた。
「冗談だ。実はゲームは今、二週連続でやってる。珍しいことだぜ? クリアとは行かなかったが再挑戦の資格を手に入れたやつがいるってことかなあ……」
 おそらく詳しいことは聞いても、答えてはくれないだろう。
「……羽狛、っつったか。この世界で死んだら、どうなるんだ? 存在が消えるときいたが」
「そのことか。えっとだな、今のお前らを形成してるのは、肉体ではなく意志や記憶などの精神集合体、ソウル。ソウルが死ねば、そいつが存在した事実は人々の記憶からやがて消えていき、海のもくずとなったソウルは他のソウルとくっついて、ノイズっつー化けもんに姿を変えるんだ。ノイズはからっぽになったソウルの破片の集まりだから、感情や、思考は無い」
「死んだとき、ゲームに参加せずにそのまま死を受け入れれば、ノイズになり、またゲームに参加しても消滅するとノイズになるわけか」
「ご名答。痛みいるぜ。さすがに察しがいいな、死神のゲームはノイズを生産しつつ、参加者にノイズを減らさせて循環させる」
 やばい、2人とも頭がいいのか会話のスピードが速い。
「ちょ、ちょっと待ってください。つまりノイズは、もともと人間だったってことですか?」
「元は人間だけじゃない、物や動物それに植物もだ。ま、容赦はしないこったな」
「消滅したノイズはどうなる?」
「ただのエナジーになる。そのエナジーを使って死神はこの世界で生きていけるし、ノイズも生産できる。また、神様みたいな存在がRGでの新しい命とソウルを創る。これ以上の仕組みについては俺もいえないが、悪いこたいわねえ、ミッションはクリアしとけ。ノイズに倒されて消滅しても、死神評価が高ければ、その場でソウルを再構築されて、直前からやり直すこともできる。ただミッション失敗したら終わりだからな。これをゲームではセーブと呼ぶんだが……」

17 < 18 > 19