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*22*
「ショウ」
チッ、とショウは舌打ちする。最近わかってきたが、これはOKを意味する。
「今日から俺たちは仲間だ。よろしく。ショウはあんな奴だけど、そんなに悪い奴でもないんだ」
「うん! いい返事がきけて嬉しいよ」ひかりちゃんの笑顔は、同性の私から見ても可愛い。
「それじゃ、説明するわよ。まずここ、渋谷駅前、進んでハチ公前、スクランブル交差点。ここから道が分かれて、今日はセンター街入り口が閉鎖されてるから行ける道は2つ。カドイへ行く道と、104を通って道玄坂へ行く道。渋急本店前とA−EASTはだめみたい。何人か壁死神もいたから、憶測に過ぎないってことを忘れないで」
一日ごとに、解放されるルートが変わる。壁死神がいなくても通れない壁もあるということだ。佳澄さんはケータイで、渋谷のマップも見せてくれた。
治安の悪いのがセンター街、大な百貨店がカドイ、商店街でにぎわう坂が道玄坂。A-EASTはライブハウスだったか。
ショウは相変わらずそっぽを向いたままでいる。昨日私に足手まといがどうたらとか言ってたけど、やっぱり人と馴れ合うのが嫌なだけなんじゃ、と思う。ひかりちゃんが小声で、
「あの人、怒ってるの?」と訊いてきた。
「い、いや。大丈夫だ」姿勢をかがめて、「女の子が苦手なんだ、ショウ」と本人に聞こえないよう嘯いた。聞こえてたら、海の藻屑にされるだろう。ひかりちゃんはなるほどね、と言って笑った。
「じゃ、連絡できるようアドレス交換だね。佳澄お姉ちゃんのも渡しておくね!」
「あ、ああ。俺たちはカドイ方面へ向かうよ。佳澄さん達は道玄坂の方をお願いします」
「頼んだよ、えっと……みく、だっけ」
それはボーカロイドだろ。
「……ネクです」
「あ、ああハイハイ!」
「間違えちゃだめだよ、お姉ちゃん」
「鏡の情報を手に入れ次第、互いに連絡を取ろうね、ネク!」
「わかりました」