完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*4*
渋谷で行われる『死神のゲーム』。それは渋谷で命を落とした者達が、生き返るために実体のないソウルとして死神の出すミッションをクリアしていくというもの。七日間、つまり一週間、襲いかかるミッションとノイズに耐え抜けば、神の判断で生き返ることができるのだという。
参加者はソウルとしてゲームに参加するため、非参加者である生きている渋谷の人達からは死神のゲーム参加者の姿を見ることはできない。
ノイズとミッションを乗り越えるために必要となるのがパートナーとサイキックである。サイキックとはいわば超能力のことである。説明会で配られたいくつかのバッジにはそのサイキックの力が備わっており、バッジを持っているだけで超能力が使えるようになるのだという。具体的にはサイコキネシス、テレキネシス、パイロキネシス。物体を動かしたり、何も無いところに火を起こしたり、衝撃波を生み出したりできるそうだ。
しかしバッジにも色々あり、一人だけでは使えないサイキックもある。むしろ一人で使えるサイキックは少なく、しかも貧弱なものばかりらしい。強いサイキックを使うためには、同ゲームに参加している自分以外の参加者とパートナー契約しないといけない。ソウルの持つイマジネーションによって得意なサイキック、またその強さと大きさが変わってくる。
ノイズとは何か、それについては詳しく説明されておらず、説明会にてサングラスをかけた死神の代表らしき男が取り仕切っていたのだが、ノイズには二種類おり、人の負の感情から芽生える野生のノイズと、死神によって生成されるペットノイズがあるということしか知らされていない。
死神。やつらはノイズを使って参加者を消すのが仕事らしい。ゲームの仕組みついてグラサンは言及していなかったが、なかなか複雑みたいだ。
ノイズに対して、一人で使えるバッジのサイキックは貧弱すぎて通用しない。しかも、ノイズは二つの平行世界にまたがって存在しているため、通常二人で倒さなければならない。パートナーと一緒にいれば、ノイズから攻撃をしてくることはない。つまり、パートナーがいなければ参加者は消える運命であり、逆に言ってしまえばパートナーがいれば、ゲームに勝利する確率はぐんと上がるのだ。
一日に一回、死神からミッションが出される。たくさんいる参加者のうち誰かがミッションをクリアすればその日のミッションは終わり。ミッションは過酷なものであり、挑む途中なんらかの妨害によって消滅してしまう可能性が高くなる。一週間生き残っていればいいのだから、そんなミッションを誰もやりたがることはない。だが、全ての参加者がミッションを他人任せにしてしまえば、誰もミッションに挑むものがいなくなってしまうのでミッション未達成となり参加者全員消滅となる。
死神のゲームにおける消滅とはなにか。命はもとからないわけだから、ソウルが消えることになる。ソウルとは生前の関係性の中で培った記憶とエネルギーからできているもので、それが消えるということは生きていたとき存在していた事実が消えることと同じだそうだ。ソウルの仕組みについてサングラスの男は熱心に説明していたが、難しくてちんぷんかんぷんだった。簡単にいえば、そういうことらしい。
「なるほどねえ……! つまりなんでもアリってことな」
南師は拳をポキポキと鳴らす。何をしでかすつもりだろうか。
説明したとおりノイズは二人でしか倒せないはずなんだけど、この人はどうやってノイズをやっつけたんだろう。
それにしても何故自分はネクの姿になっているのだろう。○死威ってどこなんだろう。これから七日間、生き残れるのかな。さっきの死神達は何をするつもりなんだろう。
考えてもだめだ、わからないことが多すぎる。
でも、とりあえず強力なパートナーと契約できたんだ。これからやることは一つしかない。
「南師さん、これからよろしくお願いします」
「ショウでいい。それに、敬語も使わなくていい。敬語なんてゴミだ! クラッシュ!」
よく見ればこの人……。テレビのニュースで出てた、超若手の天才数学者じゃないか? 名前が思い出せないけれど、南師なんて名前じゃあなかった気がする。ふだんそんなニュース気にしないから思い出せないのも無理はないか。
「ショウ、もしかして、テレビ出たことある?」
「さあな。俺は数字にしか興味ねえんだよ」
今までの理系っぽい意味不明な言葉の数々。もしかしたらこの人、強いだけじゃなくて頭もかなりいいんじゃないか? 実は性格もいい人だったり……
「いつまで惚けてやがる。さっさとミッションいくんだよボケナスがぁ!」
したらいいのになあ。
でも頼れるパートナーと契約させられて、よかった。させられてっていうところがなんか変なんだけど、とにかくよかった。きっと七日間生き残れる。頑張ろう。