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作者: 雪歌 (総ページ数: 8ページ)
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*3*
「先生、これ分かんない」
1時間くらいして分からない問題がある程度溜まったところで、高瀬先生が授業もないようで暇そうにしていたので質問しにいった。すると先生は私が座っていた席にきて、私に座るように促し隣に座った。たくさん質問があったし、席に来てくれるのはありがたかった。
「あと、これとこれも。それから…」
気が遠くなるくらい大量の問題を解説しても、眉一つひそめずに快くしてくれる先生は珍しい。自分でも、もしこんなに質問をしてくる人がいたら面倒くさくなりそうなものだ。すべて解説し終わって、はーっという長いため息が先生とシンクロした。
「こんなに質問されるとか大変だね」
「…お前が言うのか」
「だって私だったら絶対イラついてるもん」
「よく分かってらっしゃる」
「でしょ」
質問のあとの、こんな雑談が私はとても楽しかった。そのためにわざわざ塾で自習しているのかもしれないと言えるくらいに。だから私は分からない問題があってもしばらく溜めておいて、先生が空いているところを見計らって一気に聞きに行く。彼が一番分かりやすいというのもあるのだが。
「しかし高見。もっと1つ1つ聞きに来いよ」
「いちいち立つのめんどくさいし」
「どんだけ面倒くさがりなんだ」
本当の理由なんて言えない。きっと言っても、何も変わらないことは分かっている。雑談が楽しみだからだという理由なんて、少し言うのが照れくさいだけで何の意味もない。ただ私にとっては違った。そんなことを言ってしまえば、先生の授業を受けながら普通にしていられないことは目に見ている。今まで色々ごまかしていたこの気持ちは、ついに無視できないほどまで大きくなりつつあった。
「そういえば今日学校で、国語の時間の先生が入ってくる前に全員で机後ろ向きにしたよ」
「え、それでその先生は?」
「ノリよくって後ろから入って普通に授業し始めた」
「…最近の学校ってそういうの感じなのか」
先生が苦笑しながら席を立った。そんなこんなで結構時間がたっていたようだ。次の時間は授業があるらしい。私は先生が座っていた隣をちらっとみて、自分で自分を少し気持ち悪いなーとか思いながら、先生の声が頭のなかで何度も反復していた。