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*4*
窓際から射す西日を自分の背中側で受けながら図書室へと入った彼は、ぼんやりと頭に浮かんだ図書をカテゴリ別に実際に一目し、粗方全てが見終わった後に一冊の小説モノを棚から取り出し、適当に空いている席に音も無く座る。
「まぁ、誰もいないんだがな」
中学校の放課後には似つかわしくない誰一人としていない図書室には埃とカビの微妙な匂いが漂っていて、いかにも利用者が少ないことを物語っているようだった。
彼、北村 幸助は抜き出した手元の古い小説の表紙をぼんやりと眺めながら、ここに描かれている表紙について少し考えてみる。
「沢山の狐が一匹の兎を狩る絵、か」
そこには4・5匹の狐が輪の中に居るたった一匹の兎に噛み付いたり、威嚇したりする絵が描かれていた。兎の赤い瞳の周囲には兎自身の血が多量に付着していて、それは赤い澄んだ兎の眼球とは異なった臙脂色に近いドスの効いた色をしている。
「ぐっ、グロイ・・」
物語としての関係性はなんなのだろう?彼はそんなことを思いながらゆっくりと小説の1ページ目を捲った。
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