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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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*15*
「氷栗無!大変!!あ、クリスちゃんと鬼柳君も入ってて!」
バタン!と、博は勢いよく美術室の中に入って行った。
氷栗無と呼ばれた男は動じることなく博を見つめた。
「君は何かあればいつも騒々しいね。どうしたんだい?」
「この子!クリスちゃんって言うんだけど」
博はものすごい勢いで誘拐するようにクリスを氷栗無の前に連れ出した。
「フム…。君が噂の新入生だね。初めまして。私は氷栗無。今は目的の物を取りに美術室に来ているが、これでも漫研の代表でね。よかったら漫研の見学にどうだい?」
「ちょっとー!今それどころじゃないんだって!」
「あ、あ、ど、どうすれば……!」
状況がつかめずに混乱するクリスに鬼柳は薄情にも、親指を立て「頑張れ」とエールを送り、美術室の椅子に座ることを決め込んでいた。
「それで?どうしたんだい?」
「この子!人間なんだって!」
「成程」
「反応薄いよ〜っ!」
氷栗無の反応の薄さに博は頭を項垂れた。
一瞬、クリスと氷栗無の目があった。
「あ、あの、氷栗無ってもしかして氷神…?昔、絵本で読んだ氷神にそっくりだったから!」
「ほお。君は私の正体を知っていたのかね?」
「ちーがーうーよ。この子、海馬君と同じように人の正体わかっちゃうんだから!」
まるで、自分のことのように博は胸を張って答えた。
そんな彼女をスルーしながら氷栗無は言葉を紡ぐ。
「まあ、たとえ人間でも気に病むことはない。この学園が君をここに入れたんだ。胸を張って学園生活を楽しんでくれたまえ」
「ありがとう!」
元気よく答えたクリスに満足そうに氷栗無はぐしゃぐしゃとクリスの頭を撫でた。
その手はものすごく冷たかったが、クリスにとってはうれしかった。
「私も別に、人間が入ったのはいいんだけどさ。…むしろ、クリスちゃんの綺麗なオッドアイなら、ぜひ絵の被写体に…じゃなくて!学園全ての人が人間を認めてるわけじゃないしさ」
「そっか……。中には人間嫌いな人もいるもんね…!」
クリスは納得したように手をポン、と打った。
「けど、この学園実習以外だったら正体を現しちゃいけないから別に気にすることないんじゃないッスか〜?」
いつの間にか話を聞いていたのか、鬼柳は机に突っ伏したまま答えた。
「……いや、今は大丈夫でも2年になったら代表になる可能性もある。」
「そっか。“トーナメント”もあるし……」
博と氷栗無は深刻な顔をした。
すると、美術室に威厳のこもった足跡が近づく。
「ん……?」
「もしかしてこの足跡は!?」
眉を寄せる氷栗無と目を輝かせる博。
まるで、対照的だ。
そして、思い切り扉が開かれた。
「入るぞ博!!」
バタン!と思い切り入ってきたのは、生徒会長、八神海馬だった。