完結小説図書館
作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
関連タグ:
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~
*17*
「海馬君!どしたの!?」
(この人が……!?)
人懐っこそうな笑みを浮かべて博はカツカツと美術室に入る海馬を駆け寄った。
クリスはゴク…。と唾を飲んで海馬を見つめていた。
なぜだか氷栗無は不機嫌そうな顔をしている。
「貴様等代表の様子と確認だ。……トーナメントの準備はできているのだろうな?少なくとも欠場はしてもらっては困るからな」
「大丈夫大丈夫!あ、あと、絵の被写体に…」
「くどい!」
一喝。素早く油絵具を取り出した博に海馬はこれぞとばかりに一喝した。
だが、彼女は特にめげてはいなさそうにいそいそと油絵具を戻す。
「私は大丈夫さ。それより君は今年でるのかな?」
「フン。貴様等など相手にもならんわ!」
氷栗無の言葉に即答した海馬。
そんな彼を氷栗無は睨み付けた。氷栗無にかまわず海馬はびしっと机に突っ伏している鬼柳を指差した。
「おいそこの惰眠!貴様は本日付で吹奏楽部代表だ!トーナメント強制参加だ!」
「はあ!?てゆーか、惰眠!?」
鬼柳は代表ということよりも惰眠と言われたことにショックを受けているようだった。
そして、海馬の目がクリスに向けられる。
「……貴様は?」
「え、えーと……」
「あ、そうそう海馬君!この子、君みたいに人の正体がわかるんだよ!すごいよねー!」
思わず半歩下がるクリスを守るように博は海馬の目の前に出る。
だが、海馬の目はクリスをとらえていた。
「……その首飾りは……」
「え、えーと。これは9年前ある子からもらったものなの!」
自身の首にあるピラミッドの首飾りをクリスは取り繕うように言った。
「ん〜。なんなのだ……」
「あ、パンにゃ!あなた、おとなしいと思ってたら寝てたの!?」
パンにゃの起床に思わずクリスは声を上げる。
その声にみんなの視線がクリスに向けられた。
「こ、これはその…!信じてもらえないかもしれないけど、実はここに…」
「空気をよめ!この猫もどき!」
「ぎゃっ!何するのだ!このマスコットな僕に!放すのだ!!」
「……え……」
いつのまにか海馬は煩わしそうにパンにゃの首根っこをつかんでいた。
だが、驚くところは海馬がパンにゃが見え、つかんでいるというところ。
「あれ?海馬君、そこになんかいるの?」
「君は幻覚を見ているのかい?」
キョロキョロと辺りを見渡す博に皮肉気に笑う氷栗無。
「フン。まあ、用事は伝えた。俺はこれで去る」
パッと粗末にパンにゃを解放した後、海馬は踵を後ろに向け、美術室を出ようとしたとき、思わずクリスは海馬の腕をつかんでいた。
「待って!!…どうして、パンにゃが見えるの!?それに…あなたの正体って…!」
「……貴様はまだ目覚めてはいないようだな」
「何を………」
パンッとクリスの手を振り払うと、海馬は指をさして宣言した。
「貴様は部活に入ってる入ってない関わらずに強制トーナメント参加だ!……そして、貴様が負けたらその首飾りは永久に失われる」
「……君は頭がおかしくなったのかい?」
「何言ってるの海馬君!冗談きっついよ〜!こんな一年生に…!」
氷栗無と博は驚いたように一歩出た。
だが、海馬は冷たい目で2人を射抜くだけだった。
「異論は認めん。まあ、せいぜい負けないようにするんだな」
「………ッ!」
不敵に笑いながら去る海馬にクリスは目を見開いた。
「…おい、クリス……」
鬼柳はそれ以上の言葉が見つからなかった。
***
「……まさか、オレと同じ選ばれし三神竜がこの学園に来ていたとは……」
廊下を歩きながら海馬はつぶやいた。