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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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*26*
「…ちくしょ………」
「え?どうしたの?更科君」
「なんであんなに強く当たっちまったんだ!オレのアホ―ーーーーッ!!!」
「ちょ!?更科先輩!?」
ダダダダ…!と、勢いよく走って行く憲章を博と鬼柳は黙って見るしかなかった。
+++
「走ってきたのはいいけど……ここどこーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
クリスが息を切らしてついた場所は緑と木が囲むおそらく、校庭と言われる場所であろう。
彼女は絶賛迷子中だった。
「どうしよどうしよどうしよーーーーーーーーッ!!」
途方に暮れ、クリスは力なくしゃがみ込んだ。
恨めしそうに土を指でなぞった。
「今日は大変すぎるよ…。生徒会長さんに凄まれるわみんな人外だっていうし…。私やっていけるのかなあ……」
「そのための鳳凰学園だよ。落ち込まないで。麗しきマドモアゼル」
「あ、あなたは……?」
サアッと風がなびく。
しゃがみこんでいたクリスの後ろには耳が隠れるほどの金髪に手袋を着用した少年が佇むように立っていた。
「僕は3年で、演劇部代表の初野茨。よろしくね。マドモアゼル」
「えっ!あなたもだいひょ・・・」
そう、クリスが言いかけた瞬間、茨は流れるような動作で彼女の手をつかみ、その手の甲に口づけた。
「あ、あ、あのっ!え、え、えーと……!」
「君のことは知っているよ。神宮クリスさん。海馬君に一杯喰わされてしまったようだね」
「食わされたというか……」
さっきの行動があってか、クリスの頬は若干赤らんでいた。
そんなクリスにかまわず茨はにっこりほほ笑む。
「フフ。君のことは入学式以来一目ぼれしていてね。やっと2人きりになれた…」
「ここはどこかわからないかな!?私、迷子になっちゃったみたいで……」
スルーされたことはあえて言わずに茨は微笑んで言った。
「……ここは普通の高校より広いからね。無理はないさ。ここをまっすぐに進めばもう玄関につくはずだよ。マドモアゼル、君はこれからどうするんだい?よかったら演劇部に…」
「ありがとう!私、今日は疲れたからもう帰るんだ!」
そう言って、タッとクリスは駆け出して行ってしまった。
「……ここは全寮制なのになぁ…。帰るってどこに?」
ポカン、としながら茨はクリスを見送った。
+++
「海馬君!見つけた…ってキャア!!」
ガチャ、と生徒会室に海馬は入ると待っていたかのように、茶色いね猫目の小柄な美少女が思いきりすっ転んだ。
「……花、貴様。何もないところで転ぶな」
「ご、ごめんなさーい…。」
鼻を押さえながらゆっくりと花と呼ばれた少女、一二三花は立ち上がった。
彼女は、海馬と同じ生徒会役員でもあり、書道部代表でもあった。
「行くぞ。会場の準備に」
「あ、待って!海馬君!」
クルリと背を向け、歩き出す海馬をあわてて花は追いかける。
「…?どうしたの?海馬君、今日いいことあった?」
「貴様に言う必要はない」
「いいじゃない!」
ぴょん、と花は海馬の前に躍り出る。
「……まあ、ちょっとした収穫はあったな」
薄く微笑むと、海馬は歩幅を速めた。