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鳳凰学園協奏曲-カルテット-【完結!】
作者: 鳩麦白夜  (総ページ数: 101ページ)
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*29*

「おいクリス!お前今までどこに行ってたんだよ!!」
「え?あ、ごめんね!私、あれから疲れて帰っちゃったんだ!やっぱり何も言わなかったから迷惑かけたんだよね…!」


 あれから次の日。
 入学式が終わったため、その次の日はクラスとの顔合わせみたいな日になっている。
 席に着いたクリスを囲むように鬼柳は思わず声を荒げた。


「まあまあ落ち着いてよ、筧君!クリスにだってきっと悪気があったわけじゃないよ!」
「オレが言いたいのはそういうんじゃなくて…!」
「この子は?」


 突如現れた色白の少女は人懐っこそうな笑みを浮かべた。


「紹介が遅れてごめんね!あたしは五十嵐安蘭!筧君と同じく1年で天文部代表だよ!」
「すごいね〜!私は…」
「神宮クリス。生徒会長に強制的にトーナメント出場を義務付けられた不幸な1年生!」


 ビシッと安蘭は自慢げにクリスを指差した。
 安蘭の言葉にクリスは首をかしげた。


「ふ、こう?」
「そう!でも、あたしだったら幸せかな〜!だって、あのイケメン完璧生徒会長と話せたってことじゃない!うらやましくてロマンチックだよ〜!」
「え、えーと……」
「この子、どこかおかしいのだ!」


 そっと深刻な顔で耳打ちするパンにゃをクリスは安蘭に気付かれないようにデコピンした。


「ダメだ。自分の世界に入り込んでやがる」
「ずいぶんと余裕そうね。筧鬼柳」


 安蘭にあきれる鬼柳の背後から冷たい声がした。
 3人が振り向くと、その声の主は小柄な美人だった。


「あー。たしかお前鬼角まどかだったよな?よろしく!」
「アンタと仲良くする気なんてないし」


 まどかは鬼柳をにらみつけながらがたっと立ち上がった。


「アンタは生まれつき鬼のなかでも高位な地位にいたからそんな余裕かませられるんでしょ?同じ鬼族として軽蔑する」
「あのさー。鬼とかそういうの、学園では関係ねーぞ?」
「……ッ!そうやってバカにしていられるのも今のうちよ!トーナメントであったら完膚なきまでに叩き潰す!!」


 カッとなったようにまどかは言葉を吐き出すと、カツカツと席に戻って行った。


「鬼柳、知り合いの子?もしかしてあの子も……」
「ああ。鬼角まどかって言ってオレと同じ鬼さ。なんでかは知らねーけど、いっつも敵対しててさ…」


 ハア、と困ったように鬼柳は仲良くしたいんだけどな、とつぶやく。
 

「…それにあの子もたしか華道部代表だったはずだよ?なんだかトーナメント大変なことになったなぁ……」


 安蘭の言葉にクリスは思わずうつむいた。
 クリスは人間で、格闘技をやっていたわけでもない。
 戦って勝てるはずがないのだ。
 そのことを考え、クリスはギュッと拳を握った。


「おいお前たち席に着け!」


 ガラガラ、と教室の扉が開かれた。
 教師らしき人間だろう。
 黒髪のボサボサヘアーに右目に鋭い傷、そしてなぜだか着物を着た男が教卓についた。


「今日から君達の担任になる霧崎空悟だ!。君達の様な優秀な生徒が私の目の前に居る事私は感激に満ち溢れている!」
(…この人が先生……。)


 クリスはボーっと空悟を見上げていた。
 そう嬉しそうに言い放った空悟とクリスの目が合った気がした。

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