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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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*7*
!「……ん…。眠い……。」
「起きるのだ!!こんなところで寝ちゃダメなのだ〜ッ!」
「ちょっと……だけだから……。」
「起きるのだ〜〜ッ!」
場所は氷山かと思わせる会話を繰り広げるクリスとパンにゃ。
だが、場所は氷山ではない。クリスが通おうとしている鳳凰学園の体育館であり、今は入学式である。
そして、ただ単に強烈な眠気がクリスを襲っただけだ。
まあ、いくらパンにゃが言ってもクリスにとっては独り言にしかならないのだが。
『……これで本年度より生徒会長になった八神海馬の式辞を終了する』
「ほ、ほら!もうあの呪文は終わったのだ!起きるのだ!」
「…………」
「寝ちゃだめなのだ〜ッ!」
結果は惨敗。クリスは入学式の呪文に敗北した。
パンにゃの声も届かない。
(……そういえばこうやって長い話聞くのも3年ぶりだなあ……)
チャリッと、首飾りのビラミッドを煌かせながらクリスは静かに眠りについた。
そんな彼女を見て微笑む少年がいた。
***
「ほら、クリス起きろって。みんな行っちまったぞ」
「……ん…」
「いつまで寝るのだッ!」
目を開けた先には頬を膨らませるパンにゃと、端麗な顔立ちをした黒髪の少年が苦笑して立っていた。
「……鬼柳…?」
「いつまでも寝ぼけてんなよっ!」
「イテッ!」
ピンッと、筧鬼柳にデコピンをされた。
「あれ…みんなは?」
「おま…聞いてなかったのか?」
「ずっと寝てたのだ!」
まだ寝ぼけているのかと言わんばかりに鬼柳はため息をついた。
「さっき言ってただろ?入学式終わったら各自で部活見学だって」
「私、部活入らないよ?」
「バーカ。この学校は全員強制的に部活に入るんだよ。入らなかったら退学だって言ってただろ?」
「た、退学!?」
鬼柳の言葉にクリスは顔を真っ青にした。
それもそのはずだった。
「……私、今までが今までなのに、部活だなんて……」
「……そっか。でも、入らなきゃいけないんだぜ。」
「でも、この学園の部活は文化部だけなのだ」
いつの間にかパンにゃは鳳凰学園のパンフレットを持ってきていた。
「…もしかしてここにパンにゃいんのか?俺には見えねーけど…」
「文化部…。美術と漫研と演劇と華道と書道と科学があるね…!」
「あと、吹奏楽な」
付け加えるように鬼柳は言った。
「鬼柳は部活決めたの?」
「ああ。吹奏楽に。俺ずっとサックスやってたから。ちょうどいいと思って」
「そっか…。じゃあ、何も見いだせない私のようなダニとは違うってことだよね……」
「ちょ、何だダニって。俺そこまで言ってない!」
渦巻くような紫色のオーラを出すクリスの肩をあわてて鬼柳はつかんだ。
「私、何部入ればいいのかな…?」
「何のための部活見学なのだ!」
「俺も一緒についてってやるからさ。行こうぜ!」
「ありがとう!2人とも!」
思い切り立ち上がったクリスの肩を誰かがつんつん突いた。
「そこのお二人さーん!今暇なら美術部見学に来なーい?楽しいよ〜。」
いつの間にか、薄紫色の長髪にピンクの目をした少女が「美術部」という看板を携えながらそこにいた。
「あなたは…?」
「私は天都博。2年の美術部代表だよ!」
そう言って博は二カッと笑った。