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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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「……そうか」
「安静にしててね、更科君」
「あと、アイツらは……」
「わかっている」
保健室でおぼろげながらも意識をつないでいる憲章の話を聞くと、海馬と花は出て行った。
+++
「そんな…ッ!間に合わなかっただなんて…ッ!」
憲章が襲われたということを聞いてクリスは博と氷栗無の制止を振り切って保健室に向かおうと走っていた。
すると、ちょうど海馬と花の後ろ姿が見えた。
「海馬!花!憲章が襲われたって……」
「……貴様か。そうだ。今は療養中だ」
「どうしたの?」
肩で息をするクリスを花は心配そうにのぞきこんだ。
「それと1つ言っておく。これから筧鬼柳と鬼角まどかの強制拘束に入る」
「!?なんであの2人が!?」
海馬の言葉にクリスは目を見開いた。
「あの2人には…。更科君を襲った可能性があるの。更科君の目撃情報。ほぼ間違いないと思う」
「そんな……ッ!何かの間違いだよ!」
付け足すように言った花を拒絶するようにクリスは叫んだ。
海馬は痺れを切らしたように歩き出した。
「貴様の意見など求めていない。俺はもう行く。花、貴様は言った通り理事長室に行け」
「あ、うん!…じゃあ、行くね、クリスちゃん」
そう言うと、海馬と花はそれぞれ歩いて行った。
「……なんで…あの2人が…!?そんなのウソだよ…ッ!」
クリスは耳をふさぐとそのまま蹲った。
「……クリス」
「……レリク!?」
突然の声に思わずクリスは振り向いた。
レリクは心配そうにクリスの隣にしゃがみ込んだ。
「具合悪いの?」
「あ、ううん。違うの!ちょっとね……」
クリスは手を振って気丈にふるまうが、すぐにうかない顔に戻ってしまった。
すると、レリクはギュッとクリスの手を握った。
「無理はしないでね。……クリスは僕が絶対に守るから」
「あ、ありがとう…でもそんな…」
レリクは、最後の言葉を力強く言ったが、クリスにはまだわからなかった。
クリスは顔を真っ赤にしながら何とか言葉を紡ぐ。
(レリク、エジプトの帰国子女だって言ってたからこんなことできるのかな!?あと、この首飾りの子なのってきかなきゃ…ッ!)
クリスは恥ずかしさのあまり頭が混乱していた。
そして、覚悟を決め、グルンと体をレリクに向けた。
「あのね、レリク!この首飾りなんだけど……ッ!」
「マドモアゼル!そいつから離れてッ!」
「え!?」
聞き覚えのある茨の声の方向を向くと、そこには茨と修羅が鋭い雰囲気を出しながら立っていた。
「え!?茨!?…そこの女の人も、どうしたの!?」
「そいつは危険なんだ!早く、こっちに!」
茨は必死そうにクリスに手を伸ばす。
だが、クリスは突然のことにうろたえて何をすればいいのかわからない。
すると、次の瞬間、クリスの体が浮上した。
「ごめんねクリス。ちょっとだけ我慢してね!」
「え!ちょっと、レリク!?」
レリクはいきなりクリスの体を横抱きにして走り出した。
「待て!逃がさないよ!」
茨たちが追ってくるが、その声も次第に遠のいて行った。