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作者: 秋桜 (総ページ数: 23ページ)
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*9*
それから、湊谷と日比奈は毎日会っていた。初めて出会ってから一ヶ月がたっていた。この島のこと、湊谷の面白話などを話していた。でも、日比奈は自分のことや本州のことは何も話さなかった。湊谷が聞いても、何気なく流されていた。湊谷も疑問に感じてはいるが、特に深く知ろうともしなかった。それよりも、残り二ヶ月しか会えないことが気になっていた。
「ふ〜ん♪ふ〜ん♪」
「なんか最近上機嫌だな、湊谷」
「まぁな(ドヤッ)」
「…あっそういえばさ、父さんの病院に俺らと同い年の子が入院してんだけど知ってるか?」
源は湊谷のドヤ顔を軽く流して言った。
「知らんけど。何かあったのか?」
「ああ。その子の寿命があと二ヶ月らしい」
「ふーん。そうなんだ。同い年って事は、同じ高校だよな…そんな子いたか?」
「ああ。入学式以来来てないけどな。あっそうだ!入学式、湊谷の隣の席じゃなかったか?」
「え?そうだったけ?どんな子だっけ…」
「かなりの美人だったじゃん。一回湊谷に向かって笑顔を見せた時に、湊谷が俺のとこに来て『やばい!笑顔、かわいすぎる!』って言ってたじゃん」
「んー……ああ!あの子…え?」
湊谷は入学式の事を思い出したようだ。しかし、湊谷が思い出した子の笑顔はなぜか、あの子だった。
「どーした?」
湊谷の頭の中には一ヶ月前にした会話がよみがえっていた。
『―――三ヶ月』
『え?』
『本当は、余命なんて知りたくなかったんだ。だって、1日1日が怖くなっちゃうもん』
『確かにそうかもしれないけど、その分嬉しいこともあるよ!よく「あの時あんなこと言わなきゃよかった…」とか言う人がいるじゃん。でもそれは突然死んじゃうからであって、余命とかが分かっていれば、そんなこと絶対にないじゃん。むしろ、得したとおもいなよ!』
『そう…だよね。その分、楽しめばいいんだよね!』
「おーい!湊谷?」
「――あの…さ、その子…の、名前…とかって、分かる…か…?」
湊谷は聞くのが怖かった。でも、聞かない訳にはいけなかった。そして、あの子の名前が出ない事を願っていた。
「名前?確か……おとなし…ひび…おい!湊谷!?」
湊谷は源の言葉を聞き終わる前に走り出していた。そして、あの場所に向かっていた。
――嘘…だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁ!!!!
「はぁ…はぁ…」
湊谷はあの場所の前まで来ていた。入るのが怖かった。真実を聞くのが怖かった。
「はぁ…日比奈…」
「あっ!湊谷!今日は早かったね」
「日比奈…あのさ…」
「――もしかして、私の事何か聞いた?」
日比奈はこうなることが分かっていたかのように冷静に答えた。
「え…」
「何を聞いたの?私がこの島の人だってこと?病気を持っていること?病院にいること?」
日比奈は笑顔で言っている。
「それとも―――余命が二ヶ月だってこと?」
「あ…俺…は…」
湊谷は現実を置け入れることが出来なくて、何もすることが出来ない。
「そっか…」