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君とあの時あの場所で〜3ヶ月の恋物語〜 
作者: 秋桜  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*9*

それから、湊谷と日比奈は毎日会っていた。初めて出会ってから一ヶ月がたっていた。この島のこと、湊谷の面白話などを話していた。でも、日比奈は自分のことや本州のことは何も話さなかった。湊谷が聞いても、何気なく流されていた。湊谷も疑問に感じてはいるが、特に深く知ろうともしなかった。それよりも、残り二ヶ月しか会えないことが気になっていた。

「ふ〜ん♪ふ〜ん♪」

「なんか最近上機嫌だな、湊谷」

「まぁな(ドヤッ)」

「…あっそういえばさ、父さんの病院に俺らと同い年の子が入院してんだけど知ってるか?」

 源は湊谷のドヤ顔を軽く流して言った。

「知らんけど。何かあったのか?」

「ああ。その子の寿命があと二ヶ月らしい」

「ふーん。そうなんだ。同い年って事は、同じ高校だよな…そんな子いたか?」

「ああ。入学式以来来てないけどな。あっそうだ!入学式、湊谷の隣の席じゃなかったか?」

「え?そうだったけ?どんな子だっけ…」

「かなりの美人だったじゃん。一回湊谷に向かって笑顔を見せた時に、湊谷が俺のとこに来て『やばい!笑顔、かわいすぎる!』って言ってたじゃん」

「んー……ああ!あの子…え?」

 湊谷は入学式の事を思い出したようだ。しかし、湊谷が思い出した子の笑顔はなぜか、あの子だった。

「どーした?」

 湊谷の頭の中には一ヶ月前にした会話がよみがえっていた。

『―――三ヶ月』
『え?』

『本当は、余命なんて知りたくなかったんだ。だって、1日1日が怖くなっちゃうもん』
『確かにそうかもしれないけど、その分嬉しいこともあるよ!よく「あの時あんなこと言わなきゃよかった…」とか言う人がいるじゃん。でもそれは突然死んじゃうからであって、余命とかが分かっていれば、そんなこと絶対にないじゃん。むしろ、得したとおもいなよ!』
『そう…だよね。その分、楽しめばいいんだよね!』

「おーい!湊谷?」

「――あの…さ、その子…の、名前…とかって、分かる…か…?」

 湊谷は聞くのが怖かった。でも、聞かない訳にはいけなかった。そして、あの子の名前が出ない事を願っていた。

「名前?確か……おとなし…ひび…おい!湊谷!?」

湊谷は源の言葉を聞き終わる前に走り出していた。そして、あの場所に向かっていた。

――嘘…だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁ!!!!

「はぁ…はぁ…」

 湊谷はあの場所の前まで来ていた。入るのが怖かった。真実を聞くのが怖かった。

「はぁ…日比奈…」

「あっ!湊谷!今日は早かったね」

「日比奈…あのさ…」

「――もしかして、私の事何か聞いた?」

日比奈はこうなることが分かっていたかのように冷静に答えた。

「え…」

「何を聞いたの?私がこの島の人だってこと?病気を持っていること?病院にいること?」

日比奈は笑顔で言っている。

「それとも―――余命が二ヶ月だってこと?」

「あ…俺…は…」

湊谷は現実を置け入れることが出来なくて、何もすることが出来ない。

「そっか…」

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