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作者: ヒナ (総ページ数: 8ページ)
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*5*
〜4〜 転校生のお家
「お、お邪魔しまーす」
恐る恐る足を踏み入れる。
だって神社なのだから…罰が当たらないよう気を付けるだろう。
「そんなに気を遣わなくて大丈夫。こっち…」
スタスタと先に歩いて行ってしまう。
歩くたびに床がミシミシと音を立てる。
山奥の隠れた神社。そこに彼女は住んでいた。
有名じゃないわりにそこは広くて。
だれが家賃を払ってるのか気になったけど、あえて聞かないことにした。
機嫌を損ねたら嫌だから。
そこまで考えたところで彼女が立ち止まる。
こちらをじっと見つめて。いや…
俺の後ろを見据えて
後ろからドタドタと走る音が聞こえる。
何事かと振り返るとすごい速度でこちらに走ってくる少女の姿があった。
そして俺の横でジャンプし御影さんめがけて飛びつく。
目が飛び出るほど驚くとはこんな感じなんだなとふと思う。
なんて考えたときにはすでに御影さんと謎の少女は床に倒れていた。
「だ、だいじょうぶ!?御影さん」
すごい音を立てて倒れたため少々慌てるが、大丈夫そうだ。
「……凌誇、重い。それから飛びつくなと何度言ったら分かる」
無表情で起き上がりながら静かに少女を叱る。
凌誇と呼ばれた少女はそんな言葉は聞いてないとばかりにまた飛びつく。
「初ねぇーおなかすいた。おーなーかすいたー!」
御影さんの首につかまりながらぎりぎり届く床でジャンプする。
その彼女はあからさまに嫌そうな顔をしている。
「自分家で食べてこい…」
と、冷たく言うとブーブー言いながら元来た方へ戻っていく。
御影さんは安心したのか「はぁ」とため息をつくと目の前の扉を開けた。
顎で入るように指示されたので、恐る恐る入る。
彼女が入ろうとしたところでさっきの少女がまた御影さんに飛びついた。
「うわっ…凌誇。次はなんだ?」
また不機嫌さを醸し出しながら背中の少女を睨む。
すると少女は彼女に耳打ちをする。
その途端彼女は青ざめはじめる。
「初ねぇ、おなかすいた―!」
また元気に言うと元気に笑った。
そしてやっと俺の存在に気付いたのか、ちょこんと首を傾げる。
「お兄ちゃん誰?」
といったところで
「わかった、冷蔵庫のなんでも食べていいから…」
早く出てけとばかりにポンポン背中を押す。
「えー?お兄ちゃんだぁれー?」
部屋から押し出されながらもこっちを見ている。
「あ、ぇと……」
名乗るべきかと悩むがその時ちょうど少女は押し出され扉が閉められた。
バタンという大きな音と共にカチャンという鍵のかかる音がした。
扉をたたく音がするがそれは少し経つとなくなった。
「い、今のは?」
恐る恐る聞くと彼女はまた不機嫌を醸し出した。
「別に。めんどくさい小学生だ…」
と言ってこちらをじっと見つめる。
「おまえみたいに…」
―――ひえぇぇー
と内心恐れながら目を机に落とす。
なんか今日。恐れてばっかだな…と今さら思った。