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空〜虹の輪〜
作者: 裕  (総ページ数: 21ページ)
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10~ 20~

*10*

7、風邪には要注意

空羽「…戻ろう!」
火杏「その必要ねえよ。」
空羽「っ…佳長君…。」
火杏「忘れもん。」
空羽「え、あ…。鞄…。」
火杏「悪かったな。隠してて…。バイト、嫌だったら止めて良いから。」
空羽「ううん!嫌じゃない!そうじゃなくて…。何か、びっくりして、返事できなくて…。」
火杏「そうだよな。びっくりするよな…。ごめん…。」
空羽「謝るのは私のほうだよ!仕事放り出してごめんなさい!」
火杏「え。や、止めろ!…頭上げろ!」
空羽「ちゃんと仕事しますから…。責任持ちますから。」
火杏「責任?」
空羽「…家の掃除。今度の休みにさせてください。」
火杏「いっ…良いって!そこまで!」
空羽「する。それくらいしか出来ないから…。私ら貧乏人は…。」
火杏「…いいんちょー…。」
空羽「…。一つ聞いても良い?」
火杏「…何?」
空羽「暴力沙汰起こすのは何で?」
火杏「は?」
空羽「…この間も誰かを殴ったって…。どうしてそんなことするの?」
火杏「…。関係ない。」
空羽「…。そうだね。ごめん…。明日からはちゃんと働きます。今日はごめんなさい。また明日ね。」
火杏「…。ネコ!」
空羽「…え?」
火杏「…ネコ、苛めてたんだよ。俺、動物とか男が女困らせてんのとか、あんま好きじゃないから…。」
空羽「…。」
火杏「いや、だから…っ…。訳無しに手ェ上げたりしねえってことだよ!」
空羽「…。良かった。」
火杏「…。」
空羽「ばいばい!」
火杏「…おう。」

結構良い人だと思う。兄弟の面倒見もいいし、見たこと無い表情も家では見せる。周りが思ってるほど…そう、悪くないと思う。

〔ぴりりりりり〕
空羽「…ん。…朝だぁ…。起きないと…。よいしょ…痛っ。」

私の足は、赤く腫れ上がっていた。とても動けそうに無い。

空羽「うっそ…。何これ。」
景十「空羽、いつまで寝てんだよ。腹減った。」
空羽「…景兄ぃ、どうしよう。足痛くて動けない。」
景十「は?ふざけてんのか?」
空羽「ふざけてないよ…。」
景十「見せてみろ。…うっわ、何これ。」
空羽「っ…。」
夕刀「姉ちゃん?…何してんの?」
空羽「おはよう、夕刀。」
夕刀「うわ、足どうしたの?」
空羽「捻挫こじらせちゃった…。」
景十「学校行くのはムリだな。バケツに水張るからそれに突っ込んでろ。一日浸けてれば腫れは引くだろ。」
空羽「ごめん…。」
夕刀「ちゃんと治ると良いね。」
空羽「ご飯…。」
景十「俺が作るから心配すんな。」
空羽「…うん。」

暫くして景兄ぃたちは学校に向かった。私はバケツに足を浸けて、空を見上げる。すずめたちが飛び交い、烏もまた群れを作っている。

火杏「サボり?」
空羽「…佳長君。」
火杏「何してんの?」
空羽「捻挫こじらせちゃって、ヒマだから外見てる。」
火杏「大丈夫か?」
空羽「うん。佳長君こそサボり?」
火杏「風邪だ。」
空羽「大丈夫?布団に入ってないと…。」
火杏「問題ない。」
空羽「そっか。…。」
火杏「何かあんの?」
空羽「ん?あぁ…。今日雨降るなぁって。空が不機嫌。」
火杏「そんなのわかんだ…。じゃあ、俺降らない方に賭ける。もし降らなかったら俺いいんちょーの家に上がる。降ったら俺はいいんちょーの言うこと何でも聞く。な?」
空羽「な?って…。賭け事しないで佳長君は寝てないとダメだよ…。」
火杏「大丈夫だって…っ。」
空羽「よ、佳長君!?」

急に倒れた佳長君の息遣いは荒く、熱は上がっているようだ。苦しそうにしている佳長君を目の前に、私は慌てる。

空羽「えっと…。…どうしよう。お邪魔します…いてて…。」
火杏「いいんちょー、足…。」
空羽「大丈夫。…多分。家の人は?」
火杏「今日は、皆…出掛けてて…。」
空羽「そっか…。じゃあ適当に使わせてもらうよ。」
火杏「…。何してんだ、俺。」

私がタオルを出したり、洗面器に水を汲んだりしている間に佳長君は寝てしまった。顔は赤く染まり、汗もかいている。

空羽「だから寝てないとダメって言ったのに…。…何か作ろうか。…よし。」


火杏「…っ。…寒っ。」
空羽「あ、起きた?」
火杏「いいんちょー…。まだいたんだ…。」
空羽「ご飯、作ったよ。パン粥だけど。食べれる?」
火杏「食う。」
空羽「口に合えばいいんだけど…。はい。」
火杏「ありがとう…。いただきます。…。」
空羽「…どうかな?甘すぎたりしない?」
火杏「…旨い。」
空羽「良かったぁ…。」
火杏「…いいんちょー、足は?」
空羽「あぁ、痛みに慣れてきちゃって。感覚ないよ。」
火杏「それ悪化する。早く戻って冷やさないと…。」
空羽「大丈夫。風邪はこじらせると大変だからね。私の足はどうにでもなるよ。今は佳長君が優先。」
火杏「俺のことは構うなよ…。良いから早く―――。」
空羽「…え?」
火杏「…っ。知らないからな。…。」

その瞬間、私と佳長君の唇が――重なった。

空羽「…。…部屋に戻るね…。」

佳長君の顔がまともに見れなかった。彼は、どんな顔をしていたの?

火杏「だから、早く逃げろって言ったのに…。」

空羽「…何が起きた?」

現状を掴めない人、1名。若干後悔した人、1名。


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