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作者: 裕 (総ページ数: 21ページ)
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*19*
草の上で寝転がる私の上を、静かに流れる雲は気持ちよさそうだった。空は青く澄み、私は…風に髪を靡かせながら、涙を浮かべ、昔のことを思い出していた。
空羽「…。」
「友達なんて、すぐ無くなるもの。何年も付き合いが続くなら、それが本当の友達だよ。空羽も早く見つけること出来たら良いね。」
それは昔父に言われた言葉だった。
空羽「何年も付き合いが続くなら、…それが本当の…友達、か。」
火杏「友達、いないのか?」
空羽「…佳長君。」
火杏「野樹だけが友達だった?」
空羽「…。人見知りが激しくてね、私。胡ちゃんのおかげで佳長君たちと話せるようになったも同然なの。感謝…出来て無かったのかな。」
火杏「あんなの友達ってはいわねーだろ。実際、こうなった。野樹は、いいんちょーの友達じゃない。」
空羽「…そうかも。」
火杏「…。」
空羽「佳長君…。…ありがとう。」
火杏「え…。」
空羽「助けてくれて。…違ったら、私の勘違いで良いんだけど。でもね、嬉しかった。佳長君があそこまで怒ってて、何か分かんないけど嬉しかった。だから、ありがとう。」
火杏「…おう。」
空羽「…佳長君。」
火杏「ん?」
空羽「私と、正式にお付き合いしてください。」
火杏「…え。」
空羽「何なら、今度はちゃんと友達からっ…」
火杏「ちょ、落ち着け!いいんちょー。どうしたんだよ。」
空羽「私、人に頼ってばっかりで、自分からしようとしたことがないの。だから、今までも友達出来なかったんだと思う。でも、佳長君は違った。最初から…声掛けてくれて、無愛想だけど家じゃ兄弟の面倒見も良くて…いざとなれば本当にすごくて…。」
まだ、話し始めて少ししか経ってないけど…付き合って佳長君のことを好きになれるかはまだ分からないけど…
空羽「私、佳長君に会えて良かったって今凄く思ってる。だからっ、一緒にいてくれないですか…っ。佳長君と居ると、毎日が楽しくて楽しくて…もっと続けば良いのにって…。私も、佳長君にこんな思いさせたいって思って…。」
火杏「…正気?」
空羽「…。正気!」
火杏「ウチは…面倒だよ?」
空羽「何でもする!彪斗くんたちの相手もする!バイトだって今まで通り続けさせてもらうし、家のことも…」
火杏「もう良いよ。」
空羽「え…?」
火杏「いいんちょーの気持ちは分かった。俺でよければ、よろしく。
―――――空羽。」
空羽「……はい。こっちこそ、よろしく…。」
自分は嫌いなままかもしれない。人見知りだってそう簡単に直らないかもしれない。でも、人とかかわることの良さを知った。
誠ちゃんに会って、兄弟が居て、胡ちゃんに会って、佳長君に会って…。
人生において、「苦」は必ずある。でも、それを乗り越えていくから人は成長できるんだね。
お父さん、もう一度やり直そうよ。今の私ならそう言える。努力して積み重ねたものを今は精いっぱい
火杏君と一緒に費やして行きたい。
今日も雨上がりの空に一筋の虹が掛かって――――
消えることのない世の中を思い描く私がいた。
<完>