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作者: 裕 (総ページ数: 21ページ)
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*5*
3、バイト開始!
火「じゃあな。」
空「うん。気をつけて。」
火「…。」
同じ学校に入って、同じクラスになって、席替えして、同じ班になった人の、少し違う表情が見れた。ちょっとは仲良くなれたかな…。
と思ったのもつかの間。事件発生…。
景「空羽!起きろ!」
空「んー…あと15分。」
景「んなのん気なこと言ってんな!親父が出てった!」
空「え…?」
食卓の上に上がっていたのは、一枚の紙と今朝までは私の鞄の中に入っていたはずの給料袋。紙には
「こんな父親でごめん。許して欲しい。」
とだけ書いてあった。給料袋には、1万円しか入っていなかった。
空「…2万円取られた。」
景「くそっ。あのクソ親父!」
空「…夕刀は?」
夕「おはよう…。」
空「ああ、おはよう。」
夕「…お父さんは?」
景「…。」
空「いないよ。」
夕「いない?」
空「私たちは、お父さんに見捨てられた。これからは、3人で生きていかないといけなくなった。ごめんね。」
夕「姉ちゃんが謝ることないよ。姉ちゃん頑張ってるもん。」
空「…ありがとう。」
景「どうすんだよ。」
空「景兄ぃ、協力してくれない?」
景「協力?」
空「バイト。」
景「…え。」
景「…。」
空『圭乃さんには私が頼むから。お父さんが居ない今、家のことは景兄ぃが背負うんだからね。お願い!』
景「(あそこまで言われたら…)断れねえよなぁ…。」
颯「何が?」
景「…颯門。…お前ここも仕事だっけ?」
颯「遅刻者検査?今日は代理。」
景「会長も大変で…。」
颯「人事だな。で、風紀委員長の花薗景十さんは何かお悩みで?」
景「…。いや、何でもない。」
颯「そうか。」
誠「捻挫?」
空「バイト帰りに…。」
誠「そうか。ムリすんなよ。」
空「はーい。」
胡「ドジっ子。」
空「うん…。」
胡「こんなときに怪我するとかありえない。」
空「…うん。」
胡「…何かあったの?」
空「うん…。いろいろあった。」
胡「何?聞くけど?」
空「…バイト帰りに捻挫するし、ある人に助けてもらったし、…お父さん、出てったし…。」
胡「そっかぁ…。…え、出てった!?」
空「うん。だから、景兄ぃにいろいろ頼んでおかないと…。」
胡「頼むって?」
空「バイトとか、家のこととか。」
胡「え、景十先輩バイトするの!?」
空「今日バイト先に頼んでみるんだけどね。」
胡「頑張って!私遊びに行くよ!」
空「胡ちゃんは危ないからダメ。夜中だし。」
胡「うぅ…。空羽だってそうじゃん!」
空「私は良いの。家族のために仕事してるんだし。さらわれたって、お金が家に届くならそれで良い。」
胡「…自分のこともっと大事にしなよ…。」
空「でも、せめて夕刀が学校入るまではいて欲しかったな…。」
胡「全ての基準は夕刀か。」
空「ここに入ってくれれば学校一緒だし、心配ないの。中学校って色々あるでしょ?学校違うと大変なのよ。それに、夕刀の学校は私立だし、お金掛かるの。」
胡「でも、お父さん居なくても変わらなくない?」
空「まあね。けど、一応さ。」
胡「ふうん。」
空「だから、今日景兄ぃに合わせて帰るね。」
胡「6限目いないってこと?」
空「うん。」
胡「じゃあ、もう帰るってことじゃん!?」
空「そう。多分景兄ぃが来てくれるはず。」
胡「っしゃ!」
空「…。」
景「空羽!」
空「あ、はーい!じゃあね。」
胡「ばいばーい!」
空「お願いします!」
寿「良いよ。」
空「え…。」
寿「空羽ちゃんにはこっちも世話になってるしね。」
空「ありがとうございます!」
た「景十君だっけ?このあとすぐ大丈夫?」
景「え。あ…。」
空「ピアノ?」
景「ああ。」
空「一ヶ月だけ休めない?学校で使えるように頼んでおくから。」
景「…分かった。」
空「兄をよろしくお願いします。」
寿「はいはい。」
た「空羽ちゃんは7時からで良い?」
空「あ、はい。じゃ、私は帰ります。」
景「気ィ付けろよ。」
空「うん。」
2ヵ月後、景兄ぃはピアノの発表会を控えている。ムリ承知でお願いしてみれば、景兄ぃは快く引き受けてくれた。だから、時間は無駄にさせたくない。練習時間は、景兄ぃの将来が掛かっている。発表会が上手くいけば声が掛かる。パリ留学はなくなる可能性もある。家のことで景兄ぃに迷惑は掛けたくないけど、今は協力を要請するしかない。
夕「兄ちゃんがバイト?」
空「うん。7時過ぎに帰ってくると思う。」
夕「姉ちゃんは?」
空「今まで通り7時から行くよ。」
夕「そっか。今日の飯旨い。姉ちゃんの飯朝しか食えないし、何か新鮮…。」
空「…。」
夕「何?」
空「ん?」
夕「嬉しそう…。」
空「こんなに夕刀といるの、久しぶりだなって思ってさ…。ごめんね。一緒に居れなくて。」
夕「姉ちゃんが家のために頑張ってくれてんのは分かってるし、大丈夫。」
空「…勉強は?」
夕「勉強…。」
空「そろそろテストあるんじゃない?」
夕「…。」
空「…ふっ。一緒に勉強する?」
夕「…そうさせて下さい。」
空「何でそんなにウチに入りたいの?」
夕「兄ちゃんはあれだけど、姉ちゃんと学校行ってみたいんだ。小学校はまともに行けなかったし…。兄弟で登校って俺の憧れなんだ。」
空「そっか。じゃ、もっと頑張んないとね。」
夕「うん!」
夕刀はもともと内気な性格の子で、小学校では上手くクラスに打ち解けられずにいた。そのため、学校に行かなくなっていった。私立の中学校に入ったのもそのため。高校では成績で入る高校が限られる。正直今の夕刀の成績ではウチは難しい。だから夕刀は、何とか入れるように成績を上げようと努力している。
空「…。」
夕「姉ちゃん、ここはどうやんだっけ?」
空「これは、点Aがグラフ?と?の交点だから、これとこの式をどうするんだっけ?」
夕「…連立方程式?」
空「そう。方程式解くのは大丈夫だよね?」
夕「うん。」
空「…少しずつだけど、出来るようになってきたね。」
夕「兄ちゃんがよく教えてくれてんだ。すごく分かりやすいから覚えられんだ。」
空「景兄ぃが…。そっか。」
夕「あ、これか!」
空「ん?…正解!じゃあ、次はここの問題ね。」
夕「うん。…て、姉ちゃん時間大丈夫?」
空「え?あ、やば…。ごめん、あとは景兄ぃに見てもらって。行ってきます!」
夕「行ってらっしゃい!」