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空〜虹の輪〜
作者: 裕  (総ページ数: 21ページ)
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10~ 20~

*6*

4、借金…!?

寿「景十君、上がって良いよ。」
景「あ、はい…。」
た「もう7時になるのに、空羽ちゃん遅いねぇ…。」
空「すいません!遅くなりました!すぐ着替えます!」
景「空羽…お前まさか走ってきたのか?」
空「え?うん…。」
景「怪我悪化したらどうすんだよ!?」
空「そんなこと言ってられないよ!約束守らないとダメなんだから!」
景「約束?」
空「無断欠席、遅刻=クビ。自分のことなんか気にしてられないよ。」
景「でも…っ!」
空「それに、こんなに優しいバイト先そんな無いと思うし…。」
 「すいませーん。」
空「あ、はい!たえ子さん、伝票ください。」
景「…。」
空「もやしラーメン一つ、えび餃子一つです!」
寿「はい、毎度!」

た「ご苦労様。お水しかないけど…。」
空「あ、ありがとうございます。」
た「怪我、してるの?」
空「ただの捻挫です。そのうち治ります。」
た「そうかい。」
空「お客さん、増えましたね。」
た「そうねぇ。ちょっとばかり売上も上がってきたわ。」
空「良かったです…。」
寿「空羽ちゃん、上がって良いよ。」
空「あ、はい。じゃあ着替えてきます…。」
た「はいよ。」
寿「…辛いだろうなぁ。」
た「そうねぇ…。何せお父さんが借金抱えてたんだもの。出て行っても、知らないんじゃどうしようもないわ。」
寿「…オラたちに出来ることは、仕事与えるくらいさ。」
た「そうね…。」

空「お疲れ様でした。また明日よろしくお願いします。」
寿「あいよ。」
空「はぁ…眠いよぉ〜…。…明日のお弁当どうしよう…。おにぎりは昆布…景兄ぃ嫌いだ…。ん〜…。」
丈「おい。」
空「え。…。…私ですか?」
丈「そうだ。…お前、花薗玄次の娘だな。」
空「…何故父の名前を知っているんですか?」
丈「わしは玄次に金を貸していた。」
空「…お金?」
丈「その保証人がお前、花薗空羽だ。」
空「…。父が借金をしていたと言うんですか?」
丈「そうだ。2千万な。」
空「2千っ…。そんなお金あったらもっと良い生活してます!」
丈「そんなこと言われてもな…。ほら、ここにちゃんと書いてあんだよ。で、玄次はどこだ?」
空「…知りません。」
丈「隠すなよ。あんまあいつのこと庇うと、ひどい目に遭うぞ?…もう一回聞く。玄次はどこだ?答えろ。」

相手は上に立っていそうな男と、細身の弱そうな男と、力が強そうな格闘技でもやってそうな男の3人組。一人なら逃げてたけど、さすがに逃げられない…。
俗に言う借金取り。お父さんが借金をしていたなんて信じたくない。借金してまで生活していたなんて信じたくない。

丈「わしは気が長いほうじゃないんだ。答えは早くしてくれ。」
空「…知りません。」
丈「だから隠したって無駄だって言ってんだろ?」
空「父は…今日の朝、兄弟を残して出て行きました。だから、父の居場所は知りません。」
丈「…そうか。なら仕方ないな。お前には保証人としての責任を取ってもらおうか。」
空「え…。責任ですか?」
丈「選択肢は2つ。金を今すぐ全額ちゃんと返すか、返さないかだ。まぁ、返さない場合は覚悟しろ。」
空「…。今すぐって…?」
丈「今すぐだ。」
空「そんなお金ありません!」
丈「じゃあ、「返さない」で良いんだな?」
空「…え。」
丈「連れてけ。」
 「うす。」
空「ちょ、ちょっとま…。あの…ちょっと!下ろしてください!あのっ…」
丈「あ?下ろせだ?はっ。何生意気言ってんだよ。金が無いから返せませんって言ったのはお前だろ?責任取れよ。」
空「返せないとは言ってないじゃないですか!今お金がないって…」
丈「それは返せませんって言ってんのと同じだろ?早く連れてけ。」
空「ちょ…待ってって…」
〔がしゃん…〕
 「っ…。あ?」
火「女が嫌だって言ってんのが聞こえねぇのか?」
 「お前、誰に口きいてる?」
火「さあ、しらねえな。」
丈「お前は誰だ。」
火「自分から名乗りもしないような奴に名前を言う必要はねえな。」
丈「…そうだな。わしは、由角丈信。由角組の頭だ。」
火「…由角組?ああ、あの由角組な。」
丈「何だ。知ってるのか。ま、お前には関係ないことだ。わしたちはその娘に用がある。お前には用はねぇんだよ。行くぞ。」
空「ちょ…離してって!待って…、ねえ!」
丈「何だ、うるせえな。」
空「父が何故お金をあなたがたから借りたかは知りませんが、私たちは関係ありません!」
丈「関係ないこと無いだろ。お前は保証人なんだ。」
空「保証人になった覚えもありませんし、保証人になると言った覚えもありません!」
丈「今更知らん顔か…。玄次は、娘に了解は得ていると言っていたぞ。」
空「え…。」
丈「聞いていないのか?はっ。あいつもバカな奴だ。」
空「父のことを悪く言わないで下さい!」
丈「さっきからギャンギャンうるせーよ。」
 「…。」

私を担いでいる強そうな男は、喚き暴れる私の身体を押さえつけ、足首に手を回した。そして…私の足首は悲鳴を上げた…。

空「痛ッ…!?」
 「お前うるさい。黙っていろ。」
空「ッ…。」
火「だから、言っただろ…ッ。」
〔ダァン…〕
空「っ…。」
火「キャッチぃ…。」
丈「…何のつもりだ。」
火「俺はなぁ、女子供関係なく、人を無理強いする奴が大っ嫌いなんだよ。」
丈「…だから何だ。」
火「答えてくれねぇか?俺の質問に。」
丈「…聞くだけ聞いてやろう。何だ?」
火「答えは2つのうちのどちらか。そいつを今すぐ放すか、俺を怒らせるか。さぁ、どっちだ?」
丈「…。お前、何の分際で…」
火「ああ、まだ名乗ってなかったな。ていうか、この顔見てわかんねぇとはな。仕方ない。教えてやるよ、俺の名前。俺は…佳長火杏。」
丈「佳長…火杏…。まさか、佳長組の…若…。」
火「親父が世話になってるな。由角。」
丈「い、いや〜。こちらこそお世話になっておりやす!この度は、こいつらが失礼致しやした!じゃ、わしらはこれで…。」
火「…こいつのこと追っかけまわすのは良いけど、そんときには俺がいること忘れんなよ。」
丈「っ…。行くぞ。」
 「か、頭ぁ!待ってくだせぇ!」
空「…。」
火「…大丈夫か?」
空「…え。ぅわああ!?」
火「わっ…ちょ、あぶねっ…。」
空「下ろして!下ろして…!!」
火「え、足は?」
空「足?」
火「あの男に…。」
空「あぁ…。うんと…ははっ。」
火「大丈夫じゃねえな。送る。」

佳長君は知らないことが多くて、何か一つある度にその知らない部分が明らかになってる気がする。だからか、知らない彼をもっと知りたくなる。

空「…あの、由角組とか佳長組とか…何なの?」
火「…。知らなくていい。」
空「はあ…。」
火「お前の親父出てったんだっけ?」
空「聞いてたの?寝てるんだと思ってた。」
火「聞こえたんだ。」
空「…確かに家計は厳しかったけど、借金あるとは思わなかった…。しかも、2千万も…。」
火「そんなにか。」
空「何か、佳長君に凄く迷惑掛けてるな…。」
火「別に。」
空「…佳長君は兄弟とかいるの?」
火「え?ああ、まあ。一応妹一人と弟3人、兄さんが2人。」
空「結構いるんだね…。」
火「いいんちょーは兄さんと弟?」
空「うん。3人兄弟。」
火「花薗景十さんだっけ?風紀委員長やってるんだよな?真面目そうだよな。」
空「そんなことないよ。家じゃひねくれもの。」
火「そうなんだ…。」
空「家族が大勢いたらどんな感じなんだろう…。でも、ウチにたくさんいたら皆早死にしちゃうか…。」
火「…。ウチで働くか?」
空「…え?」

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