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空〜虹の輪〜
作者: 裕  (総ページ数: 21ページ)
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10~ 20~

*7*

5、教科書と隙間

空「家族が大勢いたらどんな感じなんだろう…。でも、ウチにたくさんいたら皆早死にしちゃうか…。」
火「…。ウチで働くか?」
空「…え?」
火「下女…。」
空「私が?」
火「そう。」
空「何で?」
火「だって、ウチ人多いし大家族味わえるかなって…。家隣だし移動少なくて済むだろ?」
空「…気ィ使ってる?」
火「あ、いや…。」
空「…ありがとう。考えてみる。」
火「ああ…。」

景「隣?…てぇ、田戸さん?」
空「違う。反対。佳長さん家。」
景「あぁ…。やけにうるせぇ家な…。良いんじゃない?」
空「え…良いの?」
景「ちゃんと給料貰えんならな。」
空「ああ…聞いてみる。」
景「ああ。」
空「私寝るね。お休み。」
景「んー…。」

「借りたものは返す」
昔お父さんにそう教わった。なのに、教えたお父さん本人が返していなかったなんて…。

空「下女、かぁ…。」
胡「…それ、確か昔した働きしてた人のことだよね?」
空「え?…あ、うん。」
胡「それがどうかしたの?」
空「新しいバイト…。」
胡「下女が…?」
空「そ。どっかの心優しい男の人が、「ウチで働くか?」って言ってくれたの。」
火「…っ。」
胡「どっかの心優しい男の人?それ誰?」
空「秘密…。」
胡「え〜、教えてよ〜。」
空「やだー。…それよりも良いの?」
胡「何が?」
空「次数学だけど?」
胡「あー…ちょっと待って。」
空「はいはい。」
火「…。心優しい男の人って…?」
空「佳長君。」
火「…っ。バカじゃねぇの。」
空「…馬鹿?」
胡「空羽、これ。」
空「…ふぅん〜…。おめでとう。」
胡「え、全部あってた!?」
空「見事に…全部不正解。」
胡「うそぉ…。」
空「ここは計算ミス。こっちは公式使ってないし、これは使う公式間違ってる。…公式覚えてないと大変だよ?」
胡「だから数学は嫌なんだぁぁぁ!」

胡ちゃんは数学が大の苦手科目。この間のテストは19点。その前の小テストは3点。赤点パラダイス。そんな胡ちゃんに数学を教えるのが私の日課。最近の小テストは点数も赤点回避を目標に頑張っているおかげか点数も上がってきた。

誠「授業始めんぞ。忘れもんねぇな。」
火「…。」
誠「どうした、佳長。手なんか上げて。」
火「教科書…。」
誠「忘れてきたのか?じゃあ、花薗。見せてやれ。」
空「え!?あ、はい。」

寄せた机と机の間が少し開いているのがちょっと寂しかったり…。でもその隙間を埋めることの出来ない自分がいる。

火「おい…。」
空「…何?」
火「働くか決めたか?」
空「…うん。けど、一応聞きたいことがあって…。」
火「何?」
空「お給料ってどのくらい…?」
火「…10万くらいなら…。」
空「あ、そう…。何か月分?」
火「え。一ヶ月分。」
空「…。一ヶ月!?」
誠「何だ花薗。答え言うなよ。まだ問題途中までしか書いてねえのに…。」
空「一ヶ月って、三ヶ月じゃなくて!?」
火「…。」
空「さすがにそんな…。圭乃さんのところでも3万だった…。」
小「何の話?」
突「金の話?」
空「バイトの…」
誠「授業中にバイトの話するな。廊下に30分立ってろ。お前ら4人。」
小「え、俺らも!?」
突「俺ら、関係ない。」
誠「良いから行け!」
2人「は、はい!」

「廊下に立っていなさい。」
とか、アニメではよくあるらしいけど、まさか現実にもあるとは…

小「ちっ。俺ら悪くねぇのに…。」
突「コタ、今日ヒマ?」
小「え?あ、おう。」
突「どっか行こう。」
小「良いな!行こう行こう!」
突「じゃあ…」
火「悪かったな。」
空「え?」
火「教科書忘れたの、嘘。…ごめん。」
空「知ってた。いつも授業中は本読むか寝てるもん。」
火「…。」
空「10万か。…そんなにあったら楽だろうな。」
火「俺のせいでいいんちょーまでごめん…。」
空「まあ確かに廊下に立たされたのは初めてかも。いい経験じゃない?」
誠「おい。」
小「は、はい。」
誠「何してる?」
小「と、トイレに…。」
誠「そうか。けど、そろそろ終わるし、チャイム鳴るまで待て。」
小「は、はーい…。」
誠「で、どこ行くつもりだったんだ?」
突「ゲーセン!…あ。」
誠「ゲーセンかぁ…。楽しいよな!」
突「え。」
空「あの馬鹿…。教師のくせに…。」
火「今日から来るか?」
空「あ、うん。でも圭乃さんの所にお礼しにいかないと。」
火「そうか。」
胡「空羽!おなか減った!学食行こう!」
空「あ、うん。」

その後景兄ぃと再度話をし、了解を得た。
6限目が終わると皆一斉に帰りだす。クラスに残っているのは、私を含めて2人。佳長君は今日もHR中寝ていたらしい。

空「…佳長君。」
火「…。終わった?」
空「うん、さっき…。」
誠「花ぁ〜…。」
空「花薗ですが。」
誠「お前さぁ…」
空「無視しないで下さい!」
誠「んだよ…。」
空「…学校ではそうするって言ったのは麻鹿戸先生でしょ?」
誠「その呼ばれ方慣れねえな…。」
空「自分で言っといて何それ…。」
誠「誠ちゃんで定着してるし…。」
空「二人のときはそう呼んでる。」
誠「はいはい。」
空「あ、そういえば明日のHRの時間、体育祭のテーマ決めたいから使っても良い?」
誠「ん?ああ。分かった。」
空「じゃあ、帰る。」
誠「ああ。気ィつけてな。」
空「はーい。」
火「…。」
誠「ん?何だ、佳長。」
火「…いや。」
空「佳長君行くよ?」
火「…ああ。」
誠「…。あいつら…付き合ってんのか?」

空「え?」
火「だから、何でいいんちょーやってんの?」
空「…。胡ちゃん分かる?」
火「ああ、いつも一緒にいる奴?」
空「うん。胡ちゃんに推薦されて、麻鹿戸先生に強制的に決定された。」
火「…。麻鹿戸とどういう関係?」
空「何で?」
火「いや、仲よさげだったから…。」
空「んー…。まあ、隠すことも無いか…。私と誠ちゃんは、昔馴染。」
火「昔馴染?」
空「そう。ウチ、お母さんいなくてさ。お父さんも職探ししてた人だから、中学まで面倒見てもらってたの。」
火「へえ。」
空「変な関係じゃないからね。」
火「変って?」
空「え!?いや、その、付き合ってるとかそういうんじゃないってこと…。」
火「分かってる。そんなことくらい。」

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