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作者: 裕 (総ページ数: 21ページ)
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6、真実
圭乃さんは、事情を話すと快く了解してくれた。また来ますと告げ、私は佳長君と一緒に彼の家に向かった。
隣にあったのに知らなかった彼の家は結構…大きかった。
火杏「入って。」
空羽「…お邪魔します。」
彪斗「あ!杏兄ちゃん帰ってきた!」
火杏「ただいま…。」
彪斗「お帰り!お帰り!お土産は!?」
火杏「毎日あるわけねぇだろ。」
楼生「…。」
空羽「…あ、初めまして。」
火杏「同じクラスのいいんちょー。花薗空羽。」
空羽「よろしく…。」
楼生「…。」
彪斗「あ、楼生ぃ!う〜…。…俺、彪斗!よろしくな!いいんちょー!」
火杏「今日からここで働くから。」
彪斗「ウチで?」
火杏「ああ。…兄さんたちは?」
彪斗「まだ帰ってきてない。」
火杏「そうか。」
梓沙「…!」
火杏「ただいま、梓沙。」
空羽「妹?」
火杏「ああ。梓沙っていうんだ。…ほら、あいさつしろ。」
梓沙「…!」
空羽「…えっと…。」
火杏「ああ、ごめん。梓沙話せねえんだ。」
空羽「…初めまして。」
梓沙「…!」
空羽「通じた…?」
火杏「ははっ。良かったな、梓沙。ずっと姉貴欲しがってたもんな。」
梓沙「…!」
彪斗「杏兄ちゃん、腹減った!」
火杏「ああ、じゃあいいんちょー。早速何か作ってくんない?」
空羽「あ、うん。」
佳長君は、家庭的らしい。兄弟の面倒見も良さそうだった。学校では無愛想でも、家じゃ全く違うんだな…。
火杏「好きに作って良いから。」
空羽「あ、うん。」
彪斗「オムライスが良い!」
火杏「あ?我が儘言うなよ。作んの俺じゃねぇんだから。」
彪斗「おーむーらーいーすー!」
火杏「彪斗…いい加減にしろよ…。」
空羽「良いよ?オムライス作るから。」
火杏「え…。」
彪斗「おお!いいんちょーいい人!杏兄ちゃんとは大違いだな!」
火杏「うっせ!」
彪斗「わああ!逃げろぉぉぉ!ははっ。」
火杏「ったく…。」
空羽「…ふふっ。」
火杏「何笑ってんだよ…。」
空羽「学校とは雰囲気違うなって思って…。」
火杏「…っ。じ、じゃああと頼むな。」
空羽「うん。で、何人前作れば良いの?」
火杏「…え、あー…。今日は12人前。」
空羽「…わ、分かった。」
火杏「悪いな。」
空羽「ううん。」
12人前…。そんなに作ったこと無い…。今日はってことは明日は明日で人数変わるってこと!?なんか、佳長君の家って不思議…。
珠羽琉「…。」
空羽「…チーズ、それとも牛乳?…チーズ!」
珠羽琉「俺はチーズ嫌いだ。」
空羽「へ!?…えっと…。」
來「あ、君が空羽ちゃんだね!火杏から聞いたよ!ウチで働くって?よろしくね!あ、僕二男の來。こっちは長男の珠羽琉。何作ってるの?いつまでいる?」
火杏「來、いいんちょー困ってんだろ。」
來「あら?ちょっと喋りすぎた?」
火杏「悪いな。二人とも俺の兄さん。これが俺の兄弟。大家族、どうだ?」
空羽「…。うん、何かよく分かんないけど、楽しい。」
火杏「そか。」
彪斗「うわあ!いいんちょー、料理上手いのな!」
空羽「ぅわあ!?…えっと、彪斗君?」
彪斗「名前もう覚えたのか?」
空羽「え?」
彪斗「いつも俺の名前って、覚えられないか女見たいな名前って馬鹿にされるかのどっちか。」
空羽「…格好良いじゃない?彪斗って名前。私は好きだけど…。」
彪斗「いいんちょー良い奴!俺も気に入ってる!」
空羽「…。」
梓沙「…。」
空羽「…梓沙ちゃん。どうしたの?」
梓沙「…。」
空羽「手伝いしたいのかな?」
梓沙「・・・!」
空羽「じゃあ、卵あと6個出してくれる?」
梓沙「…!」
佳長君の家は賑やかで楽しい。彪斗君も梓沙ちゃんも楼生君も、お兄さん方も皆いい人でこれからがまた楽しみ。
彪斗「うま!…うま!」
火杏「どうせ俺のはマズイです。」
空羽「佳長君がいつも作ってるの?」
火杏「ああ。兄さんたちは仕事忙しいし。」
空羽「仕事?」
火杏「珠羽琉はアーティスト。來はヘアメイク。」
空羽「どっちも芸能界だ…。」
來「そんなことないよ。珠羽琉は歌詞書いてて、たまに作曲してる程度だよ。僕は最近の有名な人とかには会ってないし、モデルの撮影で行くくらい。」
空羽「それでも凄いです!」
火杏「だからウチ継ぐのが俺になったんだよな…。」
空羽「家を継ぐ?」
火杏「…。」
珠羽琉「佳長組の跡取りだ。」
空羽「…組って何ですか?」
來「…火杏から何も聞いてないの?」
空羽「はい…。」
來「話さないとダメじゃん、火杏。」
火杏「こいつには必要ないかと思って…。」
空羽「あの…。」
珠羽琉「ヤクザ。俺ら佳長家は代々ヤクザなんだ。」
空羽「…え、佳長君がその跡取り?」
來「まあね。僕も珠羽琉も仕事あるし、どっちかといえば、ヤクザ反対派だから。」
空羽「…。佳長君がヤクザ…。」
火杏「何だよ…。」
空羽「ううん。いや、何か…イメージ通りっていうか…その、えっと…私一回帰ります!ごめんなさい!」
來「…あーらら。やっぱり嫌だよねぇ。」
珠羽琉「だから最初に言っておけって言っただろ。」
來「まあまあ…。」
火杏「…。」
彪斗「杏兄ちゃん泣きそう…?」
火杏「っなわけあるか!何で俺がっ……。」
珠羽琉「…。早く帰って来いよ。」
火杏「…っ。悪い。」
ヤクザのことはよく知らない。でも、急に聞かされたことは正直びっくりして、何て言ったら良いのか分からなくなって、つい、飛び出してきてしまった…。
空羽「(っ…。どうしよう、出てきちゃった…。明日佳長君に殺されるかも…!?いや、そんなことないよね。あー…何これ…。)よく分かんないよ…。」
火杏「いっ…」
小太郎「いいんちょー?」
空羽「…網浜…。」
小太郎「小太郎です!」
空羽「あ、突君にコタって呼ばれてたっけ?」
小太郎「突の名前覚えてて俺の名前覚えてないのか?割と覚えやすいと思うんだけど…。」
空羽「ごめん…。何してたの?」
小太郎「塾帰り。いいんちょーは?」
空羽「バイト帰り…?」
小太郎「ふうん。家こっちなの?」
空羽「ううん。反対方向。」
小太郎「じゃあ何で…。あぁ、買い物か?」
空羽「あ〜…うん。そう、だね。」
小太郎「そっか。俺もこれから行くんだ。一緒に行かない?」
空羽「あ、うん。…あ。」
小太郎「何?」
空羽「(佳長君の家に鞄とか忘れてきた…。)」
小太郎「いいんちょー?」
空羽「ごめん、お財布忘れてきた…。家に帰る…。」
小太郎「え、あ…そっか。じゃあ明日な。」
空羽「うん。ごめんね。」
小太郎「はーい。」
今からまた戻るのも気が引ける。でも、…佳長家には佳長家なりの事情がある。私にはどうってことない。
空羽「…戻ろう!」
火杏「その必要ねえよ。」
空羽「っ…佳長君…。」