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Ib ―『さよなら』の先に―
作者: 緑茶  (総ページ数: 53ページ)
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*1

 あの日アタシは久し振りに美術館へ足を運んだ。
 その日はたまたま暇だったし、よく雑誌で見るゲルテナって人の作品に少し興味もあったから。
 始めはそれなりに楽しく作品を見ていた。けど――いつの間にか人の気配が無くなって、気が付いたらアタシは一人ぼっちになっていた。


 人を探しているうちに変な場所に迷い混み、迷っている途中で青い薔薇を見つけた。
 その薔薇を見たとたん、何故か大切に持って行くべきだと思った。
 アタシはその直感にしたがって、持って進むことにした。
 戻ろうとは思わなかった。――いや、正確に言うなら、戻ろうとしたが出来なかった。今まで来た道が無くなっていたり、ドアが開かなくなっていたり……結局進むしかなかった。


 ずっと歩きっぱなしだったアタシはちょうど良い場所を見付け、少し休んだ。
 すると突然ガッシャーン!! と音がして、目の前の絵が落ちた。
 アタシは驚いて立ち上がって、絵を見た。絵からは青い服の女が上半身だけ絵の中から出ていた。
 普通じゃ絶対あり得ない光景にアタシはパニックになり、逃げるのが遅くなってしまったの。
 その隙を見付けた女はすかさずこちらに近づいて、アタシが持っていた薔薇を奪い、その花弁を引きちぎった。
 その瞬間、身体中に激痛が走り、立っていられなくなった。だか、このままでは危ないと思ったアタシは、必死に薔薇を奪い返し全力で走った。
 走っている途中で見付けた鍵と、花弁が辛うじて残っている薔薇を握りしめながら。


 女が追って来ていないことを確認し、安心したとたん身体中に痛みが戻って来て、アタシはそのまま意識を失った。


 耳元で誰かの声がした。気付けばもう苦しくなく、ゆっくりと目を開けた。
 すると目の前には――そう、君が立っていたの。

 君はアタシと同じように迷って、そしてアタシを助けてくれたんだよね。本当にありがとう。

 それからアタシは君と一緒に進むことにした。
 進んで行くうちにもう一人、メアリーが仲間になって、一人で歩いていた時より比べ物にならないくらい賑やかになった。
 『このまま三人でここを出る』
 アタシはそれを目標に進んでいたんだ。


 ――その願いが叶わないと知ったのは、この目標を立てた少し後、二人と別行動をしている時だった。

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