完結小説図書館
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あの日アタシは久し振りに美術館へ足を運んだ。
その日はたまたま暇だったし、よく雑誌で見るゲルテナって人の作品に少し興味もあったから。
始めはそれなりに楽しく作品を見ていた。けど――いつの間にか人の気配が無くなって、気が付いたらアタシは一人ぼっちになっていた。
人を探しているうちに変な場所に迷い混み、迷っている途中で青い薔薇を見つけた。
その薔薇を見たとたん、何故か大切に持って行くべきだと思った。
アタシはその直感にしたがって、持って進むことにした。
戻ろうとは思わなかった。――いや、正確に言うなら、戻ろうとしたが出来なかった。今まで来た道が無くなっていたり、ドアが開かなくなっていたり……結局進むしかなかった。
ずっと歩きっぱなしだったアタシはちょうど良い場所を見付け、少し休んだ。
すると突然ガッシャーン!! と音がして、目の前の絵が落ちた。
アタシは驚いて立ち上がって、絵を見た。絵からは青い服の女が上半身だけ絵の中から出ていた。
普通じゃ絶対あり得ない光景にアタシはパニックになり、逃げるのが遅くなってしまったの。
その隙を見付けた女はすかさずこちらに近づいて、アタシが持っていた薔薇を奪い、その花弁を引きちぎった。
その瞬間、身体中に激痛が走り、立っていられなくなった。だか、このままでは危ないと思ったアタシは、必死に薔薇を奪い返し全力で走った。
走っている途中で見付けた鍵と、花弁が辛うじて残っている薔薇を握りしめながら。
女が追って来ていないことを確認し、安心したとたん身体中に痛みが戻って来て、アタシはそのまま意識を失った。
耳元で誰かの声がした。気付けばもう苦しくなく、ゆっくりと目を開けた。
すると目の前には――そう、君が立っていたの。
君はアタシと同じように迷って、そしてアタシを助けてくれたんだよね。本当にありがとう。
それからアタシは君と一緒に進むことにした。
進んで行くうちにもう一人、メアリーが仲間になって、一人で歩いていた時より比べ物にならないくらい賑やかになった。
『このまま三人でここを出る』
アタシはそれを目標に進んでいたんだ。
――その願いが叶わないと知ったのは、この目標を立てた少し後、二人と別行動をしている時だった。