完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*7*
*3
「……はぁ、はぁ……ここまで来れば、大丈夫かな……」
こちら側の美術館に来て、どれくらいたっただろうか。時計を持っていないので、今の時間もどのくらいたったのかも解らない。
あの薔薇を取ってからここに来るまで様々なモノに襲われた。そして、さっきも――
いつになったら、ここから出られるのだろう……。はぁ、と、ため息をつきながら次のドアを開けると、そこには人が倒れていた。
始めは襲ってくると思い、警戒したが全然動かないので声を掛けてみることにした。
「あの……大丈夫ですか?」
「…………うぅっ……」
その人は、紫色の髪にボロボロのコートを着ていた。よく見ると手には鍵が握られていた。
「これって……さっき開かなかったドアの鍵、かな?」
『さっき開かなかったドア』と言うのは、分かれ道の先にあったドアの事で鍵がかかっていたのでこちらの道へ来たのだ。
「えっと……鍵、借りますね」
何度声を掛けても起きない人から鍵を借り、開かなかったドアの方へ歩き出した。
しばらくしてドアの前に到着。鍵を鍵穴へ差して回すと
――カチッ。
と、すんなり開いた。
ドアを少し開けて覗くと何かが動いているのが見えた。それは、絵の額縁から上半身が出た女で、何かをちぎっていた。もう少しドアを開くとちぎっている物が見えた。それは、
「青い……薔薇?」
そう口にした瞬間、女の絵がこちらを向いて目が合う。その刹那――。
「ギャァァァァァァアアア!」
「……っ!」
女の絵は叫びながら物凄いスピードで走って来たので、急いで外へ出てドアを閉める。すると
――ドンドン……ガッシャーン!
その部屋にあった窓から女の絵が飛び出してきた。私はダッシュで走り、逃げる逃げる逃げる……
「はぁ……はぁ……もう、平気、かな?」
鍵を借りた人の近くまで走って一息つく。落ち着いてくると一つ思い出す事があった。
「そう言えば……あのちぎられていた薔薇、私の薔薇と似ていた様な……」
色は違っていたが同じ様な薔薇だった。だとしたら、誰かの大切な薔薇かも知れない。実際、私は薔薇を手に入れてから一時も手放していない。
「だったら、取り返さなきゃ……!」
私は勇気を奮り絞り、逃げてきた道を引き返した。