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Ib ―『さよなら』の先に―
作者: 緑茶  (総ページ数: 53ページ)
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『大切な薔薇かも知れないから取り返す!』と決意して戻ってきたはいいものの……
「うぅ……まだ、いる……」
 部屋から出て自由になった女の絵は、檻から出た猛獣の様に獲物を探して這いずり回っていた。
(どうしよう……そのまま行っても駄目だろうし、でも、隠れる場所も無いし……)
 考えに考えた結果、出た答えは――強行突破!
(隠れる場所が無い以上、それ以外無さそうだし……全力で走れば何とかなるよ! きっと……)
 私は大きく息を吸って走り出す。それに気付いた女の絵が襲って来たが避ける。動くスピードは思ったより速くないようだ。
 その勢いのままドアに向かい、部屋に入る。どうやら無事に戻ってきたようだ。
「はぁ……怖かった……早く薔薇見つけて帰ろう」
 辺りを見回すと、花びらが少ない薔薇が落ちていた。
「あった! ちょっと萎れているけど大丈夫みたい。よかった……」
 薔薇をポケットに入れて立ち上がり、ドアノブに手を置き覚悟を決める。
(まだあの女の絵の人はいるだろうけど大丈夫。さっき出来たから大丈夫)
 自分に言い聞かせてドアを開ける、と同時に全力疾走。女の絵が何か叫んでいたが気にしない。
「はぁ、はぁ、ここまで、来たら、大丈夫、でしょ……」
 安全そうな場所で足を止めて呼吸を整える。この世界に来てから随分と走った。これだけ走ると、少し足が速くなった気がする。
 少し歩くと花瓶があったので、花びらが少ない薔薇を生けた。すると、たちまち生き生きとした薔薇に戻った。
 回復した薔薇をポケットに入れ直し、先に進んで、もう一度あの人――鍵を借りた人――に声を掛けた。
「あの……大丈夫ですか?」
「うっ……ん……あら、苦しくないわ」
 そう言って倒れていた人は起き上がって、私の事を見た瞬間――
「うわっ! な、何よ! もうアンタにあげる物は何も無いわ!」
 大きな声で叫んだ。
「あっ、あの……私、何もしていませんけど……」
 いきなりの大声に驚きながら言った。
「あら、ごめんなさい! アタシを襲って来た奴らと勘違いして……本当にごめんね」
「いえ、大丈夫です。あ、これ、あなたのですか?」
 私は今までポケットにしまっていた薔薇を差し出した。
「あっ!! それは、アタシの薔薇!! アンタが助けてくれたの?」
「はい」
「そう。本当にありがとう! アタシ、ギャリーって言うの。アンタは?」
「イヴです。よろしくお願いします、ギャリーさん」
「ギャリーでいいわ。こちらこそよろしくね、イヴ」
 それから二人で話し合い、私はギャリーと一緒に行くことにした。
「一人より二人の方が絶対にいいものね! さ、行きましょ、イヴ」
「うん!」
 私に大切な友達ができた。


参照100越え ありがとうございます!
これからも よろしくお願いしますm(__)m

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