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作者: 栗おこわ (総ページ数: 19ページ)
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第8生 夜
夜になった。
こんな姿になると、夜はちっとも怖くない。むしろ、昼よりも好ましい。やはり霊は夜が向いているのだろうか?
私は、次に行くところがなかった。家族にあうのも気恥ずかしいし、彼氏なんていないし。友達も、親友と呼べる子なんていなかった
私がゆっくりと歩いていると
「アン!」
と、トイプードルが吠えてきた
「わ。…びっくりした」
リードが見えたので、その先を見る
「あらあら、どーしたの?また、幽霊?」
と、言うポニーテールの若い女性…ってええ!?幽霊?
「いるんですかー、幽霊さーん?」
と、周りをくるくる見渡して言う女性…
「え、え?」
と、私が慌て戸惑っていると、
「あ、いた」
と言ったかと思うと、私の元にずんずん近づいて来た
「え?え?な、な…」
そして女性が私の前に立って、自分の胸に手を当て、ハキハキとこう言った
「はじめまして、私は山野 えみ、霊が少しだけど、見えます」
と…
「み、み、見えてるんですか…」
「ええ。幽かにだけど」
「こ、怖いですよね!すみません!今スグ退散を…」
「ああ、待って、待って!」
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「…それにしても、ホントに見えるなんて。そんな人、いたんですね」
と、私が言うと
「いますよ、そりゃあ。それにほら、プーも見えてるらしいし」
と、さっきのトイプーに視線をやる
「プーちゃん…って言うんですか。かわいいですね」
「ありがとう。…あ。もう行かなきゃ。ゴメンね!私、仕事が…」
「あ、いいえ。どうぞ。構わずに……」
「また、会いましょう!」
そう言って、山野さんは手を振りながら走り去って行った
「また、会おう…か」
私は振っていた手を、ゆっくり下げて胸に当てた
「そんな言葉、私にはもうないよ…」
ゆっくりと、一歩を踏み出し、私も歩き出した―
つづく