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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*42*
「ニャハニャハ。さて、私はお約束どおり、ここから一歩も動かずにあなたを倒してごらんにいれましょう」
無防備で棒立ちになるシーさん。
いくら彼が大人だからといって、一歩も動かずに僕を倒すなんてそんなことができるわけはありません!
僕は彼に急接近し、攻撃をしかけます。
ですが、軽く足をかけられ転んでしまいます。再び向き直りますが、またも足をとられて転び・・・これを何度も繰り返され、僕は彼に触れることさえできません。
「どうしました?もっと攻撃してごらんなさい」
彼は僕を挑発するように笑みを浮かべます。
「打撃を食らわせ続ければどんなレスラーでも後退するはずです!」
「それはあなたの今までの経験。私はそうはいきませんよ」
僕のパンチのラッシュの全てを上半身をひねって避け続けるシーさん。
「なら、これならどうだ!」
僕はロープに身を任せ、反動を使って飛び上がり、延髄蹴りをお見舞いしようとします。
「ニャハ〜ッ!」
彼は例の笑い声を上げると片手だけで僕の蹴りをキャッチ。そのまま、放り投げます。
「今度はもう少し痛めつけて差し上げましょうかね」
接近した僕の顔を掴み、顔固めをかけ、僕の顔を痛めつけます。
「ニャハ。このまま行くとあなたは血を流して惨めな姿を大衆にさらすだけですよー?」
口元は笑みを浮かべていますが、その目はまったく笑っていません。
それどころかどこまでも暗く冷たく感情のない、まるで底なし沼のような黒い瞳。その瞳を見た僕はこの敵にただならぬ恐怖を感じました。
その恐怖から逃れようと彼の甲板にキックを放ちますが、彼は足を地面につけたままのけ反っただけで、ダウンすらしません。
しかもまったく力を加えずに上半身を起こしてくるのです。
「これでも私はあなたに最大限のハンディを与えているのです。それにも関わらず、ダウンさえ奪えないとは・・・・ガッカリです。あなたの対戦を楽しみにしていましたのに」
彼の言葉が僕の心を槍のように突き刺しました。
「あなたはIQ215という類まれな頭脳を持っていながら、それを生かすこともできず、私にいいようにやられてしまっている。あなたのような中途半端すぎる実力しかない男の娘が、この私に挑むなど200年早いのです」
彼は微笑み、腕を広げ、
「今はそれは置いておいて、そろそろ読者のみなさんも気になっていると思いますので、あなたたちの強さの秘密の謎解きでもしますか」
そう言うと彼は手をアゴに当て、その場をグルグルと徘徊し始めました。
ちょうど探偵たちが謎解きをするときにする感じです。
その様子を見ると、どうやら一歩も歩かずに倒すということをやめたようです。
これは僕にとっては少しありがたいことでした。
「あなた方は一般の少年少女にも関わらず、次々に一流レスラーたちを倒してしまっている。どうして一介の子どもに過ぎないあなた方がそんなことをできるのか、それはひとえに人間離れした師匠たちの助けと、Drモンブランの発明した、『超人キャンディー』のご加護のおかげですね」
僕は言い返す言葉が何も出ず、ただうなずくことしかできません。
超人キャンディー。
それは食べたものの身体能力を大幅に上昇させることのできる魔法のキャンディー。
僕たちST8(ただしラグくんと星野くんを除く)メンバーはこれを食べることによって類まれなる身体能力を手に入れることができました。
僕がうなずくのを満足げに見るシーさん。彼は顔いっぱいに笑みを浮かべ、
「ニャハニャハ。やはり噂は本当だったようですね。では、謎解きをしたところで、あなたをさらなる絶望のふちに叩き込んであげましょう」