完結小説図書館
作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
関連タグ:
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~ 120~ 130~ 140~ 150~ 160~ 170~ 180~ 190~
*141*
私は芸術を愛する。
芸術には様々な種類がある、絵画や音楽などはその代表だろう。
確かにこの2つの芸術も素晴らしい。
優しい音色で心を癒し、美しい絵でメッセージを伝える。
私はこの2つの芸術を心から愛する。
宝石店に売られている、ダイヤモンドやエメラルドなどの美しい宝石も、また、私の心を奪う。
私は恐らく誰よりも美しいものを好むのだろう。
そのためだろうか、私の弟子はみんな揃いも揃って美形だ。
そしてそれぞれが独自の信念に基づいて行動し、それを曲げることは決してない。
そういうところは、私に似たのかもしれない。
私の持つ持論、信念、それは、『最高の芸術とは、鍛え上げられた肉体から繰り出す技のプロレスである』ということだ。
私は全ての弟子にそれを説き、また自らも実践してきた。
そのかいあって、皆私の教えた美しい技のプロレスをしている。
もっとも、ジャドウくんとカーネルくんは折衷型だが。
それはともかく、私は彼女に教えてやりたい。
私が地球に住んで、これまで見てきた美しい芸術の数々。
そしてそれを生み出した、人間の素晴らしさを!
「星野くん、アレを用意したまえ」
私は弟子の中でもとりわけ気に入っている星野くんに指示を出す。
彼は私の指示通りCDプレイヤーを用意し、どのCDををかけるかを訊ねる。
「まずは『バットデイ』からがいいだろう」
この曲はアメリカで大ヒットし、日本でもよく知られている曲だ。
サビの部分を聞けば、きっと読者のみんなもわかると思う。
「さて、カインちゃん。私のダンスに付き合ってもらうよ」
☆
イントロが流れ始め、私はリズムを取り始める。
「な、何をはじめようっていうのよ!」
「ハハハハハ!ただのダンスだよ。だが、これに泣かされたレスラーは数えきれない」
と、その刹那、曲が始まった。
「何かあるわね、怪しい!」
彼女は私に蹴りを放つが、私はそれを受け止め、受け流す。
「た、たまたまよ。偶然が二度あるわけないわ!」
「カインちゃん。音楽の素晴らしさ、この曲に込められたメッセージを感じてごらん。素晴らしいから」
「フン。誰が音楽なんか、聞くもんですか。私はゲーセンさえあればそれでいいの!」
その時、サビが始まった。
私は彼女が繰り出す拳や蹴りを全て受け流し、あしらい、封じ込め、懐に入り込み、ただ1度だけ、蹴りを彼女の後頭部目がけて繰り出した。
彼女は、今の攻撃で自分の口から流れ落ちた血を見て仰天する。
「こ、この威力…」
「驚いたかね」
私は彼女の顔面に正拳を放ち、転倒させ、足を掴み、メリーゴーランドのように回転しはしめた。
彼女と私はコーヒーカップのようにグルグルと回転している。
「楽しいかね、カインちゃん?」
「楽しくないっ!離して!」
「では、言われるがままに」
私はふっと力を抜き彼女を離すと、彼女はまるで『ガメラ』のように回転しながら、コーナーポストへ頭をぶつけ、ズルズルと倒れ込む。
だが、さすがは銀河太陽系8神だけのことはある、普通の人間なら脳震盪を起こして死んでいたかもしれないのに、彼女はすぐに立ち上がってきた。
「なるほどね…これが噂のダンス拳法って奥義ね…」
「その通り!では、2曲目にいこう!」