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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*70*
ぼくは今、途方もない強敵ふたりを、スター=レスリングジムの屋上でメープルさんと共に相手しています。
「HAHAHAHA!星野サン、ユーの実力はこんなものなんデスか?」
ひとりは狼男であるカスター=ホットドッグ。
彼は白のシルクハットのつばを上にあげ、優雅に一礼します。
血のように真っ赤なマントが風になびき、強敵らしさを演出しています。
丸いもの(野球ボール)を見て変身した彼の体は、いまや白くて大きな狼に姿を変えています。
さすがは西洋妖怪の中でもメジャークラスの敵だけあって、かなり強いです。
「ウォン、ウォン!あなたはどう思いマスか、リンさん」
彼は相棒である魔女、リン・クロリアスに訊ねます。
金髪に緑色の瞳を持つという点はメープルさんと同じですが、性格は冷徹で残忍。
しかも人や妖怪の心を悪に変えるという能力を利用し、ぼくたちの仲間のひとりである霊能力也くんを味方に加えてしまったのです。
「残念だけど、あなたたちはここで死ぬの。スター=レスリングジム屈指の実力者であるあなたたちふたりを殺せば、あなたたちの勢力は半減してしまうでしょうね」
彼女はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべます。
「そうはいきませんわ。星野くんを傷つけられて黙っているわけにはいきません。あたしの音楽魔法攻撃であなた方を倒して見せますわ」
彼女はバイオリンを取り出して、演奏を始めました。彼女の奏でる美しい音色は妖怪の悪意を和らげ、敵意を喪失させてしまう効果があるのです。ですが、今回ばかりは違いました。
「あらあら、あなたの魔法がうまくいくと思ったのかしら、見習い魔女さん。私はこう見えても本物の魔女なの。あなたのような人間のにわかとは格が違うわ」
その刹那、緑色のエネルギー弾が飛んできました。
「ほっほっほ。それでは老魔法使いが相手をしてあげますぞ」
この絶体絶命のピンチに現れたのは、ヘンリーさんたち。
それにしても彼らはカラオケに行っていたはずでは……?
「お前さんたちのピンチと知って、早めに切り上げたのじゃ」
そして彼は向き直り、
「悪いことは言わん。故郷へ帰りなさい。そのほうがお前さんたちのためじゃ」
彼はホウキに乗り、説得を開始します。
「ふーんだ。そうはいくもんですか!」
「やれやれ、最近の魔女は教育がなっていないのう」
彼はため息をひとつ吐き、ホウキから飛び降りるとみるみる巨大化していき、50メートルはあるかと思われる巨人になりました。
彼は指先でリンさんとホッドドッグさんを摘まみ、持ち上げます。
《これでもまだ戦うというのかのう》
エコーがかかるところまで、まるで戦隊ものの巨大化した怪人そっくりです。
「んぎぎーっ!覚えてなさいっ!」
彼女はハンカチを噛みしめ、ちょっと可愛らしい悔しそうな表情でそう言うと、ホッドドッグさんをホウキに乗せて、どこかへ飛んでいきました。