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-pendant-
作者: aya ◆jn0pAfc8mM  (総ページ数: 11ページ)
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10~

*3*

君が戸惑って、何を言おうか迷っていると、女性は言う。

「あ、ごめん。無理に言わなくていいや。あたしは望月咲耶。君は?」

少し警戒しながらも、君は名乗った。

「鎌谷、政人か。うわ、びしょびしょ! 大丈夫? これ貸してあげるから、拭いてよ!
風邪ひくよ?」

咲耶と名乗る彼女は、そう言ってタオルを差し出す。

なぜこんな物を持っているかは、聞かない事にした。

咲耶は、君の隣……と言っても、濡れているので、少し離れたところ……に座る。

君は改めて、咲耶を見た。

少し茶色がかった髪、そして瞳。大きな瞳は、その印象を幼くみせるようだ。

しかし凛としていて、何か悟っている、くらいの表現で表せるような雰囲気が見え隠れしていた。

君が服などを拭いていると、咲耶は言った。

「それ、君にあげる。洗濯して返したりとか、しなくてもいいからね」

そのまま返すのも気が引けたので、君は礼を言って、拭き終わったタオルをリュックへ。

途端、閃光。

10秒程経ち、思い出したように雷鳴が轟く。

雷雲は過ぎたが、雨は降り続くようだ。

一向に君は、木の下から外に出る事が出来ずにいた。

咲耶もずっと、そこにいた。

永遠に感じられるその沈黙の時間、雨の音だけが響いていた。

睡眠は多くとったが、朝になれば、雨でもなんでも否応なしにここを出なければ。

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