完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

-pendant-
作者: aya ◆jn0pAfc8mM  (総ページ数: 11ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~

*4*

「雨、止まないね」

沈黙に痺れを切らしたのか、咲耶はそう話しかけて来る。

君は頷いた。

「雨は嫌いじゃないけど、外に出られないからねえ……」

一度喋りだすと、咲耶は止まらなくなった。

確かに君も、雨は嫌いではなかった。理由は忘れたが。

「だってね、前に雨降った時……」

咲耶の話を聞き流していると、両親の事が目に浮かんだ。

君は聞いている姿勢だけとりながら、自分の親を思う。

実際は、親ではない。

もうこの世に、本当の両親は存在しなかった。

幼稚園生の時、飲酒運転の車に突っ込まれて。

しかし、悲しんだ事はない。

物心ついた時から親はいなかったし、代わりの人を両親だと思い込んでいた。

いつそれが両親の代わりであると気付いたのか。

それは、忘れたのだが。

それなりの理由があって両親が別にいた事を知ったはずだが、記憶はなかった。

「そう言えばね……」

ついに咲耶の話は、雨と関係ない方向へ。

適当に相づちを入れながら、ない記憶を辿る。

親のどちらかが口を滑らせたのか?

「確か……あ、大丈夫だけど……うん、それで……」

君はただ、考える。退屈を紛らわせる為に。



3 < 4 > 5