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-pendant-
作者: aya ◆jn0pAfc8mM  (総ページ数: 11ページ)
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10~

*5*

「あ、そうだ。散歩にでも行かない? 傘があるなら」

咲耶はそう、君を誘う。

それが誘拐とかでも構わなかったが、君はリュックを開けて、折り畳み傘を出した。

咲耶は大きく頷いて、さっき差していた傘を持った。

何を考えて散歩に誘うのかは謎だが、もう何もかもどうでもいい君には、散歩の行き先を
思うだけで十分だった。

どうも咲耶のほうが背が大きい気がしていたが、どうやらほんの少し、君の方が大きい。

まあ、あまり変わらない。君はどこか負けた気がした。


「あっちのほう、行ってみようかな」

散歩、それはかなり行き当たりばったりだった。

天気も悪く、何も見えないが、少し運動になった……こんなんで運動とは言えないか。

「あ、猫」

視界が悪いが、咲耶は目敏くそれを見つけ、抱き上げる。撫でてみると、濡れていた。

当然だが、これを平気で触れるのに素直に感心。

「こんなところがあったんだ」

君もしきりに驚く。こちらのほうには一度も来た事がなく、興奮もしていた。

「へえ、この辺は初めて?」

「忙しくて、あまり通学路以外は通らなかったよ」

「君はここに住んでるんじゃないの?」

「みたいだね」

君はここに住んでいる。

けれど、ここにいる、自分と言う存在が間違っているようで、そう答えた。


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