完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~

*11*

 放課後になった。
 友人達の恋の行方も気になるところではあるが、出歯亀をするような趣味もないし、かといって帰る気にもならず、生徒会の仕事が入っていたので大人しく仕事をこなして二人を待っていた。
「会長、この記述についてですが……」
 副会長の日和(ひより)・北都・ルーラ。
 眼鏡を掛けた白皙の少年で、霧より一つ年下である。
 その重い黒縁眼鏡を持ち上げると、(かなり)麗しい美男子であると専らの噂だ。
「北都君……きみ、眼鏡取ったらイケメンって本当?」
 突拍子もない質問に、北都は少し動揺したようだ。
「さあ……自分は人間の顔の造作に興味はありませんから」
「じゃあ北都君は何になら興味あるの?」
 ほんの気紛れで聞いた質問だが、以外にも熱っぽい答えが返ってきた。
「文学と、軍隊の兵器や規律には興味があります」
「軍隊、好きなの?」
 霧が驚いて返すと、北都は何でもないように答える。
「ええ。しかし、軍隊に入りたいとは思いません。自分に戦闘は合わないと自負していますので。会長、この書類の訂正をお願いします」
 北都が差し出したのは、九月に発行予定の委員会報だ。
 話題をすぐに切り替える辺り、流石である。
「え? 何処か間違ってた?」
 図書委員会のページを開き、委員長の下の欄を指差す。
「副委員長の名が抜けています」
「あ……」
 自分でも驚くほどの凡ミスである。
「会長、最近何やらミスが多くありませんか? 何かあったのですか?」
 流石の副会長、殆ど核心を突いてくる。
「あー、最近ちょっと忙しくてね。疲れてるんだ」
 会長の訂正印を押し、矢印を引っ張って副委員長の名前を書き込む。
「これで大丈夫?」
「ええ。今のところは」
 北都が頷き、職員室へと行こうと扉を開けると、丁度そこに遥香と悠人が立っていた。
「おう、キリ居るか?」
「ええ、会長ならそこに……」
 自分が呼ばれたと分かっているので、二人の姿を見留めたその瞬間に霧は立ち上がっていた。
「どうしたの?」
 霧が扉に近寄ると、北都は軽く会釈をして生徒会室を出て行った。
「……俺達、付き合うことになった」
 要するに、遥香の告白は上手くいったということだ。
「よかったじゃん。おめでとう」
 笑顔で祝福すると、霧は遥香に目配せをする。
 上手くいってよかったね、というような感じだ。
 それに遥香も笑顔で頷く。
「ごめん、僕まだ仕事あるから、先に帰っててくれる?」
「お、おう……」
「じゃあね、二人でごゆっくり」
 気を利かせ、扉を閉める。
「会長、帰らなくていいのですか?」
 生徒会書記、日和・三波・イレイスが問うた。
 今は北都も職員室に行っており、他の委員も帰宅しているため、生徒会室に居るのは霧と三波の二人だけ。
 彼女は副会長である北都の双子の妹である。
 彼らにはもう一人兄がいて、その兄は霧や悠人と同じ学年だ。
「だって邪魔しちゃ悪いし、北都君が居ないところで帰ったら怒られるし」
「北都には私が言っておきますが」
「分かってないなぁ、三波ちゃん」
 それだけ言って、机の上に俯せになる。
「あー……、僕ちょっと寝る……。北都君帰ってきたら起こして……」
「了解しました」
 そこで律儀に返事をしてくれるのが、彼女の良いところである。
(最近、やたら眠いなぁ……)
 少し考えただけなのに、すぐに眠りに落ちてしまった。

10 < 11 > 12