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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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*30*

 そして次の日、彼は学校に現れなかった。

 授業が終わり休み時間に入ると、遥香と悠人は廊下で鉢合わせし、相手の顔を見るなり挨拶もなしに言った。
「なあ、今日キリ見たか?」
「ううん、見てない」
「今日もか……」
 悠人が顔を少し歪ませる。
 そう、霧が学校に来なくなってから今日で二週間が経つ。
 二人は放課後になったら生徒会室に行こうと約束をし、それぞれの教室に戻った。

 しかし、生徒会室に赴いても状況は全く変わらなかった。
 時刻は遅くなっていたが、まだ多くの生徒が生徒会室に残っていた。
 どうやら霧が居ないことで作業が滞っている状態が続いているらしい。
「理実さん、立花さん!」
 珍しく北都が慌てた声を発した。
「会長が何処にいらっしゃるか、ご存知ではありませんか!?」
 悠人は無念そうに首を振る。
「俺らも今探してるところなんだ。端末も繋がらない。此処には顔くらい出してるんじゃないかと思ったんだが……」
 北都も首を振った。
「残念ながら分かりません。会長が居ないことで、生徒会もてんてこ舞いです。それに、三波が……」
 そう言って双子の妹に眼をやる。
 肩までの髪をゴム紐でまとめ後輩に指示を出し、自らの仕事も的確にこなしていく。
 それでもその顔は心なしか暗く曇っている。
 その指示に従っている生徒達も不安そうだった。
 北城霧とはこの学校で知らぬ者の無い、絶対的な支持を誇る生徒だった。
 成績は必ず上位、優しく穏やかな性格と顔立ち、そして生徒会長として築いてきた何百人もの生徒の充実した学園生活。それだけで、彼が絶対的な信頼と人気を確立させるには難しくなかった。
 その彼が数週間も学校に現れていないとなると、生徒達は不安に心をかき乱さずには居られないのだ。
 自らの安定した生活が崩れることを恐れて。

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