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*6*
2日目「君にメールをしてみました」
好きな人と一緒に入れるなんて、どんなに幸せなことなんだろう。
キーンコーンカーンコーンとチャイムの音が鳴って、授業が終わる。私は鞄を持って、席を立った。それと同時に、有馬君も席を立つ。
彼はゆっくりと私のもとにやってきて、口を開いた。
「今日はさ、家出ゲームやる予定だったから、一緒に帰れない。ごめんね」
私は有馬君の言葉に少し戸惑って、すぐに「うん」と頷いた。
そして思う。私はゲームに劣っているのか、と。
付き合い始めて二日目。いまだ、有馬君のことがよく分からない。
昨日一緒に本屋に行ったけれど、何だか嫌な予感しかしない。
「それでさ、沢渡さんって携帯持ってる?」
「……え、あぁ、うん。持ってるけど」
「俺のアドレス、このメモに書いておいたから。何かあったら連絡ください」
彼はそういうなり私に一枚の小さなメモを渡してきた。そこには小さな字でメールアドレスと携帯番号が書かれていた。
何かなきゃメールしちゃ駄目なのか?と思ったが、私はぐっと口をつぐみ「ありがとう」とお礼を言った。
「じゃぁ、また明日」
「うん、また明日っ」
好きな人がこんなにそばにいて、私と話をしてくれる。
それだけでも幸せなことなのに、私の彼氏(仮)になってくれるなんて。やっぱり私はおこがましいのだろうか。小さな溜息をつきながら、私はメモを見ながら携帯に彼の番号を入れた。
「あ」行だから、彼の名前は一番最初。そんなことに私はドキドキしていた。
***
「どうしようか、メールしてみようかな」
家に帰るなり私は自分の部屋に直行。そして、ベッドにダイブ。
枕をぎゅっと抱きしめながら、携帯をちらりとのぞく。
何かあったら連絡して、という彼の言葉に私はまた息をついた。何もないけど、有馬君と話がしたいよ。でも、有馬君にとってはそんなの邪魔なんだろうなぁ。
余計な事ばかり考えて、私はまたぎゅっと枕を抱きしめた。
『有馬君、こんばんは。
沢渡柚菜です。何かあったわけではないんだけど、少し有馬君と少し話がしてみたいと思ってメールしました。
ゲームは楽しいですか?私はあまりゲームとかはしないんだけど、どういうジャンルのゲームが有馬君は好きなのかな?』
文面を何十回も確認して、私は有馬君に送信した。
届いただろうか。私は心配になりながら、じーっと携帯を見つめる。そんなに早く帰ってくるわけもないのに、気になって気になって仕方がない。
そのままあっという間に時間は過ぎた。
それから、三時間後。
夜ご飯も食べて、お風呂も入って、丁度私が本を開いた時だった。
携帯から可愛らしい音がして、私ははっとした。もしかしたら彼から返事が返ってきたのかも。すぐさまペンを置き、ベッドに放置された携帯に飛びつく。
『沢渡さん、こんばんは。
有馬です。
なんだか沢渡さんの文面は丁寧だね。ちょっと知らない人からのメールかと思った(笑)
ゲームはとても楽しい。結構好きなんだ、しかも今日やってたのは出たばっかの新作で、今日届いたばかりのやつ。
今度うちに来て一緒にやろう』
読み終えた途端、私は口元に手を当てた。
何だか涙が出そうだった。返事が返ってきたうえに、今度一緒にやろうなんて恐れ多いことを言ってくれている。有馬君はやっぱり優しい。
ぎゅっと胸が引きちぎられそうになるのを嬉しく感じた金曜日。
「有馬君。大好きだよ」
だって、君は私の初恋なんだもん。
初めてあなたに会ったとき、胸がドキドキして仕方がなかったんだ。
いわゆる一目惚れっていうやつなのかもしれない。
例えそうでも、そこらにいる女子には負けるつもりはないんだ。だって、有馬君のことを一番好きなのは私だって思ってるから。
彼にどう思われているのか私はまだ分からないけど、それでも私は君のことを好きでい続ける。
さて、そろそろ君の秘密を知るときなのかもしれない。