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恋乃手紙
作者: 伊吹吹雪 ◆u2YjtUz8MU (総ページ数: 61ページ)
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作者: 伊吹吹雪 ◆u2YjtUz8MU (総ページ数: 61ページ)
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*28*
はぁ、やっと帰れる…。
応援、ちょっと疲れた。
私は、全校応援の帰り、いつもの帰り道を歩いていた。
そして、あの小さな公園を通り過ぎようとした。
でも、私は止まってしまった。
公園の、ブランコに有季が座っていた。
有季は、
泣いていた。
泣くところを人に、有季は絶対見せない。
彼は、ひっそりと、小さく泣いていた。
真っ赤な夕日が、小さな公園と有季を照らしていた。
私は、公園に入り、ブランコへと向かった。
「となり、いい?」
「…」
有季は応えなかったけれど、私は、となりのブランコに座った。
5分くらいたっただろうか。
下を向いたまま、有季が突然話し始めた。
「俺は、小学校までサッカーが一番楽しかった。でも、中学に入って、トレセンに選ばれて、もっと、俺よりうまいヤツがたくさんいるって分かったとき、もっと上手くなんないとって思って、ただひたすらサッカーをやった。サッカーは楽しみじゃなくて、競争の世界に変わった。何も楽しくなくなった。だから、大勢の友達と騒いだり、テキトーな女子と遊んでみたりしたりした。だけど、全然楽しくなかった。」
有季は、ブランコの鎖をギュッと握った。
ギシギシと軋む音がした。
「俺は、何の楽しみもないまま、過ごすのかな?なあ、どうしたらいいかな?」
有季らしくないよ。
「有季が今、一番守りたいものは、何?サッカーの楽しさでしょ?有季は有季のサッカーをすればいい。誰に勝とうだなんて、考えなくていい!今日だって、有季だけのせいで負けたんじゃない!楽しさ=勝ち負けじゃないよ!」
下を向いていた有季が顔を上げた。
言い過ぎだったかな?
「ごめん…」
と私は言った。
「澄怜、ありがと。」
彼は、私の前で、久しぶりに笑った。
「さあ、帰ろうか。」
有季が言った。
私と有季は、肩を並べて、歩いて帰った。
☆
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