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恋乃手紙
作者: 伊吹吹雪 ◆u2YjtUz8MU (総ページ数: 61ページ)
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作者: 伊吹吹雪 ◆u2YjtUz8MU (総ページ数: 61ページ)
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*30*
「俺、ここ塗る!」
「どーぞ、塗ってくださいっ!てか、塗らないと間に合わないだろ!」
騒ぐ俊に、私は言った。
今は放課後。
私たちポスター係は、文化祭のコンテストに出品するポスターの色塗りをしていた。
「塗るぞー」
俊が、ハケを持ち、ポスターを塗ろうとする。
だけど、手が滑って、ハケが手から飛んでいった。
舞うハケ。
ビチャ!ガコン!ボシャン!どてっ!
いろいろなことが同時に起こった。
ハケは床に落ち、花の模様を床に作った。
さらに、床を伝って滑っていたハケが、水が入っていたバケツに当たった。
もちろん、バケツは倒れ、水をぶちまけた。
ハケを滑らせた勢いで、俊は後ろに尻餅をついた。
そして、彼のメガネが外れ、宙に舞い、机に緊急着陸した。
…という具合だ。
「あー、良かった。メガネは割れなかったー」
さすが、スポーツ兼用のメガネ、と俊はメガネを、服で拭いている。
アホや、こいつ。
呆れて物も言えん。
我が彼氏ながら、まことに恥ずかしい。
美術部の3人は何も無かったかのように、色塗りを続けている。
しかし、空気は気まずく、明らかに目が怒っていた。
片付けはしない。本人がしろ、という意思表示のようだ。
幸い、ポスター用紙には何も被害が無かった。
ポスター用紙まで汚していたら、伊藤さんの雷が俊に落ちていただろう。
俊はさすがに、美術部トリオらの怒りは分かっているようで、雑巾を持ってきて、床をゆっくりと拭き始めた。
見ていられない。
私は俊の雑巾をひったくった。
「雑巾もっと持ってきて!」
俊は、走って雑巾掛けまで行き、手に抱えるほどの雑巾を持ってきた。
「持ってきたよ…」
すっかり、意気消沈している。
「ほら、拭く!!」
私とダメダメ彼氏の2人は、活動終了時間まで、絵の具と水を拭き取るのに徹した。
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