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数学恋草物語 Chapter3
作者: 恋音飛鳥  (総ページ数: 9ページ)
関連タグ: 数学恋草物語 飴野夜恋 九石優也 恋愛 数学 理系ホイホイ 
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*4*

 食堂に行くと、もうちらほら人が集まってきていた。オリエンテーションはこのまま食堂でやるから、私達は手にテキストと筆記用具を持っている。
「また申し込み順の席順らしいから、また後でね」
ちとせちゃんと真希ちゃんは同じ学校だから、席も隣だ。私だけ離れるのはちょっと寂しいけれど、申し込み順の席にもいい点があるのは事実。
「九石、来んの早いね…」
私が席に着くと、その利点の対象がもう隣の席に座っていた。
「俺らの班、食堂に一番に来たから。」
九石の目の前には1枚の紙。数学の難しそうな問題が1問。「九石が作ったの?」と聞いてすぐ、違うな、と思った。こいつが作ったのならこんなに字がきれいなはずがない。
「違う。」
案の定。こいつの字がここまで成長するはずがない。もし成長したら褒めてやろう。
「同じ班の奴に出された。結構難しい」
天才九石をうならせるなんて、すごい。私はその出題者の男の子を少し尊敬した。
 そのあとちょっとして、全員が集まったのでお昼ご飯となった。真希ちゃんたちは席が遠いので、私の周りは男子ばっかりで話せるのは九石くらいしかいない。けれど、いざ何かこいつと話そうと思っても話題が思いつかない。数学の事しか。
 という訳で、周りがワイワイとお昼を取っている間、私と九石は(九石はもともと不愛想だからではあるが)何も話さず、幕の内弁当を黙々と食べた。
 30分後、いよいよオリエンテーションが始まる。
 講師の先生が1人1人あいさつをしていく。長い。つまらない。正直、先生たちの家庭事情とかどうでも良い。そんなことを私が思っているとは知らずに、先生は自己紹介を続けていた。
 ふと隣を見ると九石が机に突っ伏していた。つか、寝てるし…。 
 あー、腕の中に突っ伏していなければ寝顔拝めたのにー。残念。と、なんか阿呆なことを考えてみる。
『では、次に生徒の皆さんの自己紹介に移ります』
 アナウンスが入り、1人目から「○○です、よろしくお願いします。」と言っていく。
 つか九石起きろ、と小突くと、九石は眠そうに起きた。
「今何やってんの」
「自己紹介。回ってくるから起きてなさい」
「眠い」
ひそひそ話で会話をする私達。あと3人くらいで私…か。
 左隣の人が座ったタイミングで立って言う。
「…飴野夜恋です。よろしくお願いします。」
会場のあちらこちらで「あの飴野夜さん!?」「めっちゃ数学出来る奴だよね」と言う声が聞こえる。やめて、正直恥ずかしいんですけど。
「九石優也です。5日間よろしくお願いします。」
九石がよく通る声で言うと、またもやヒソヒソ話。「日本の数学ツートップがいる!」「迫力…」。恥ずかしすぎる。顔面真っ赤の私は思わずうつむいた。一方の九石はもう慣れたというように前を向いていた。
――いや、私も慣れてはいるけど、こいつと一緒だと、やっぱり…
「どうしたんだよ、赤くなって」
「赤くなってません!」
いちいちこいつに反応するのもつかれる。
 そのままオリエンテーションは5日間の予定についての説明が続き、そのまま夕食となった。

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