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数学恋草物語 Chapter3
作者: 恋音飛鳥  (総ページ数: 9ページ)
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*6*

 「九石ぃぃ?何女子の会話を盗み聞きしてるのかなぁ?この変態!」
風呂から上がり、廊下で待つこと3分。私はトートバッグで九石を殴りつけていた。
「痛っ、痛い、ちょっ、待て、御免!」
今朝までの私は馬鹿だった。こんな女子風呂を覗くような奴に何をときめいていたんだろう。
「それで許されると思ってんの?んん!?」
「覗いてないし!お前の声がでかいだけだし!?」
「責任転嫁すんな!」
しまいに脇腹に一発けりを入れて、許してやることにした。
 …残りは今度何かをおごらせることで罪を償わせてあげよう。
「でさ、さっきの話だけど…」
「…まだそれを引きずるのか?えぇ!?」
精一杯睨む。九石はため息をつくといった。
「…ごめん、気付いてやれなくて、いじめ。」
「…え…」
一瞬で脳がフリーズした。
「…聞いてたんだ、ね…」
もちろん、私が学校で受けている仕打ちの事だ。
「…九石は何も悪くないじゃん。あんたは私に何もそういう事してないでしょ」
「それでも、一応友達として。そこまで気配りが出来てなかったし、そもそも気づいてなかった。…ごめん。」
私はうつむく。こいつは全然悪くない。
「謝らないでよっ!」
泣きそうになるのをこらえ、また俯く。
「九石は何も悪くないじゃん…。九石が気づかなかったのは、周りが九石に気付かれたくなかったから隠してたためだよ。何も悪くないって…だから、だから、お願いだから謝らないで…」
気付くと、涙がこぼれ、足元が少し濡れていた。
 くしゃっと頭を撫でられる感覚があった。九石は私から目線を逸らし、私を撫でながら言った。
「…俺はずっとお前の事『友達』だと思ってきた。これからも。だから、お前が悩んでるなら、俺はお前の力になれるようにしたいと思う…」
ちらっと目線をよこし、ダメか?と問いかけてくるようなそいつが面白くって、少し笑ってしまった。
「ありがと。じゃあ、私も今日から九石の事『友達』って思うようにするね」
「ずっと思ってなかったのかよ!?」
「ずっと数学馬鹿だと思ってた」
やっと泣き止み、冗談も言えるようになった。九石は私の髪から手をはなすと、少し笑ってくれた。
「俺は数学馬鹿のお前の友達だよ、バーカ」
 中学初の同じ学校の友達。大切にしてゆこう。
「明日もよろしくね!バーカッ!」
 私は九石に手を振って自室に戻った。
――そう言えば2人を置いて来てしまったが、まあいいか。

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