完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

数学恋草物語 Chapter4
作者: 恋音飛鳥  (総ページ数: 8ページ)
関連タグ: 数学恋草物語 飴野夜恋 九石優也 数学 理系ホイホイ 恋愛 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

*5*

 私は3つ出してギブアップしてしまった。今九石が4つ目を説明している。
「…で、ここにy=xのグラフを書く。で、次に…」
座標平面上にグラフを書いて説明し始めた。
「…って事なんだけど、分かった?」
「…思いつかないよ!こんなの」
「∞を座標平面上に書くのは結構楽しい。同じようにして、他の類似問題も解けたりする。」
九石は少し楽しそうだった。
 なんでこいつはこんなに数学が出来るのだろう。私もそれなりに数学を頑張っているはずだが、九石には追いつけない。
「ねぇ、九石」
「ん?」
「どうやったら数学って出来るようになるの?」
昨日、ちとせちゃんに聞かれた質問をそのまま九石にぶつけた。
「え、出来てるじゃん」
…初めにかえってくる反応も自分と同じかい…。
「そうじゃなくて、もっと出来るようになるには、だよ。九石レベルに追い付くにはどうすればいいのかな、って……」
九石は首を傾げた。
「俺は、お前が居たから今ここに居るんだと思ってるんだけど……。だから、良きライバルを持つことなんじゃないかな」
「そんな…私そんなに大した人間じゃないよ?」
九石にライバルと認めてもらえるほど、レベルは高くない。算額対決も、1=0.999…対決も、数学の大会でも勝てない雑魚だ。
「たいした人間だよ」
話、長くなるかもしれないけど良い?と聞かれ、頷く。
「俺がお前を初めて知ったのは小3の時。大会で一位を取ったお前にものすごい点差を付けられて俺は負けた」
「えっ嘘、私、九石には一度も勝ったことないはずだよ!?」
「お前は知らないと思う。成績優秀者名簿にも載れてなかったから。」
「そう、なんだ…」
「それで悔しくて、頑張って、次の大会で一位取ったんだよ――その時の事は覚えてるだろ?」
「うん――私はその時が初めて九石が大会に出た時だと思ってた」
「それで悔しそうだったお前を見て、このまま努力を止めたら抜かれると思って。それで、ずっと数学やってたら数学に惹かれて行っちゃったんだよ。」
だから、お前が居なければ自分の才能にさえも気づくことがなかった、と九石はつぶやいた。
「私もっ、私も九石が居なければ…ここまで一生懸命にはならなかったかもしれないって…そう思ってるよっ!」
叫ぶようにして、私も思いを伝える。
「だから、俺にとってお前は特別な存在なんだ。出来ることなら、ずっとお前の隣で数学してたい、なんてな……。」
感謝を伝えるのが恥ずかしいのか、九石は真っ赤になっていた。
 気が付いたら、共有スペースに居るのは私と九石だけになっていた。空は、夕方までは夕日がきれいなほど晴れていたのに、雨が降っていた。
「あ、就寝時刻過ぎちゃってるね、そろそろ部屋戻らないと。他の2人も待ってるだろうし…」
じゃあね、と手を振って、自室に戻ることとする。
 共有スペースの電灯はついていたが、廊下の電気はもう消灯してあって、暗かった。私の足音がやけに大きな音で響く。
――何か聞こえる。
恐くて、立ち止まる。私以外の足音がカツンカツンと背後から聞こえる。それも複数。
 九石ではないはずだ。そして、さっき共有スペースには他に誰も居なかった。
「こんなところで何してるのォ?」
馴れ馴れしい手が肩に触れた。ひっ、という声を漏らし、私は恐る恐る振り向く。そこにはチンピラ風の男性が4人。
「…すみません、急いでるので」
「またまたァ、そんなこと言っちゃってー。俺らの部屋すぐそこなんだけど、来ないー?」
「興味ありません、失礼します」
私は足早に立ち去ろうとする。その時、4人の中の誰かの手が私の腕をつかむ。…やだ、やめて。怖い。
「…はなしてくださいっ…」
「そう言う顔も可愛いねぇ!どこの小学校?」
ニタニタとした笑いが気持ち悪い。逃げ出したいけれど、4人の成人男性に囲まれて逃げようにも逃げられない。小学生ではなく、中学生だと訂正する気も起きない。
 リーダーと思われる人物が私の耳元に口を近づける。
「君の聞きわけが良かったら部屋で、って思ったんだけどねぇ。防犯カメラとかに移っちゃうかもしれないけど、ここでヤっちゃおうか」
つまりはこれって、
…レイプってこと!?
耳元でささやいてきた男性は力ずくで私を壁に押し付けた。力が強く、身動きが取れない。怖い。だめだっ…犯されるっ…。
「助けてっ!九石ッ!」

4 < 5 > 6